うさぎさんかくれる

~合宿3日目の夕18:00 合宿所食堂~


食堂では、今日最後の夜になって合宿に顔を出しに来た昔井走が現れた。

和多貫司が、


「昔井先輩が来られたので、夕飯後、19:00体育館集合で21:00までフリーで練習しましょう。」


と、言う。え?練習??鬼軍曹…いや、フリーの練習だと、組手でも形でも

良いな。よし、形にしよう。まぁ昔井君が来たからしょうがないね。

みんな組手やりたいんでしょう。

ぼくも大学の時は、形と組手両方だったケド、組手優先だった。

でもオジサンになった最近は形の方が好きだ。


~合宿3日目の夜19:00 合宿所体育館~


「アーィ!!」

「ナイス上段です!!!」


体育館のそこかしこで組手が始まった。みんな元気だなぁ。


筋肉痛がすごいので、ゆっくり丁寧に形を始めた。まずはバッサイダイだ。

この形は、師匠の老松先生に唯一褒められる形で、緩急含んだスピーディな動きと、蹴りの動作がなく短いのがウリだ。

ぼくは、ゆっくり動作して長い形が苦手だ。大学の時にセイエンチンと言う

スローでロングな形を習ったが、全くできなかったので、見かねた老松先生が、ぼくだけバッサイダイにしたら、上手くいった。

それからずっと練習している。


このスピーディな形、ゆっくり丁寧に練習をすると物凄いキツい。

結果筋肉痛が余計に筋肉痛になった。


バッサイダイ、ジオン、ワンシュウ、マツムラローハイと言うぼくができて、

ちゃんと形になっている形を、一通り練習して休んでいると、昔井君と

話になった。


昔井君も形が好きなようで、何十も形ができるらしい。さすがにそれは凄い。

形のトップ選手並みだ。


その昔井君と1番盛り上がった話は、空手ではなく、大陸拳法の話だ。


「いやぁ。ここまで蟷螂とか八極の話で盛り上がるとは思いませんでした。」

「ぼくも初めて。まさか、七星と六合が別物なのも知っているとは。」

「明らかに技が違いますからね。」

「う~ん。マニアック。」


そんな中、練習は終了し、部屋へ戻ると、うさぎさん達がコソコソしている。


「うさぎさんねー。ふとんのねー。はじっこにねー。かくれるの。」

「なんでもないけどかくれるんだぞ。」

「しんぷるにねー。かくれるの。」

「にいちゃん。まって。まってよー。」


今日はかくれんぼですか。明日は最終日!この長かった合宿も

終わって帰るだけ。


どこかに寄って帰ろう。

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