第5話 子供部屋おじさんは苦悩する
【5話】子供部屋おじさんは苦悩する
目覚めて数時間後、俺は、尿意を覚えてトイレに行くことになった。
困惑したが、試行錯誤の末なんとかやり遂げた、もちろんいやらしい気持ちなど霧散している。
助けてくれた女子高生の身体に対して必要以上の気持ちを持つことはよくない。
そう念じると、長年の枯れに枯れた生活により、意識をそう持っていくことができた。
それより気になるのは、俺がこの体を使っている以上、あの女子高生はどうなっているのかだ。
よくある話のように単純に入れ替わっているとするには、おかしい。
あの日、ハローワークに行き、ほうほうの体で帰宅した翌日の出来事なのだから。
タイムラグがある。
一緒に階段を転がり落ちるとか、そういったSF的なこともなかったのに。
そして俺の身体の中に女子高生の彼女の魂が収まってしまったともまだ言い切れない。
もし入れ替わっているとして、俺の身体をみて、俺の事を思い出してくれるだろうか?
いや、ああいう親切な女子高生はああいった善行を常にやっていて、いちいち俺の顔面など……。
「ひっ」
彼女のものらしいカバンの中からスマホが鳴る音がした。
画面を確認すると、【バイト先】と表示されている。
女子高生はバイトをしていた? とはいえ社会経験ゼロの俺が行って、代わりに働く? 無理すぎる。
しかし、無断欠勤となるのはよくないのではないのだろうか?
「もしも、し……」
俺は深呼吸すると、スマホに出た。
『どうしたの? 今日のシフト忘れてる?』
やっぱりだ!しかし遅刻に対する連絡にしては優しい声のバイト先の男性だ。きっと女子高生が普段真面目に働いているからだろう。
「すみません、連絡せずに……実はインフルエンザをこじらせて入院してしまって」
俺にしてはとっさにいい嘘がつけた。
『え? 大丈夫? 調節しておくからゆっくり休んで』
「ごめんなさい」
『いいんだよ 退院したら連絡ちょうだい』
ふう、乗り切った……。嘘をついたのなんて、不登校になり始めの時に母親についた仮病の嘘くらいだ。
さて、ここはどこなのだろう。
申し訳なかったがスマホをかりて、地図マップのGPSを確認した。
ここは俺が住んでいる街の3つ隣の住宅街のようだ。
申し訳ないが、女子高生の財布の所持金を借り、向かってみようか。
身体は快活に動く、思えば俺は太りすぎだし、運動不足だった。
子供部屋おじさんと女子高生の異世界(?)戦記 @K2U
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