第4話 女子高生は意外と幸せ

「なにこれ! おいしい!」


思わず発した声のトーンにはやっぱり慣れない。

しかし、先ほど自分のことを「芳(カオル)」と呼んだ女性が作ってくれた料理がおいしすぎる。

食卓の上にラップして置かれたチャーハンは、ある程度時間が経ったものだというのにも関わらず。

刻んで中に入っている焼き豚ももしかしたら手作りなのかもしれない。

冷めた中華スープも、春雨が入った本格的なものだ。

人が丁寧に作ってくれた食べ物を食べたのなんて、おばあちゃんが亡くなって以来もう何年もなくて、なんだか涙が出そうになった。

この身体の持ち主の中年男性は、さっき部屋に来た女性にとても大事にされているのだろうと料理を食べただけで察することができた。


「いいな……私なんて」


呟いた声も、おっさんの声で、今はそんなことじゃない、と私は我に返った。

私はよくわからないけれど太ったおじさんになってしまった。

脳はそのままだけど、外見や声は女子高生だった自分のものではない。

なぜこうなってしまったのか?

そして自分の身体はどうなったのか?

もしかしたらおじさんが使っているのならば、今の状態に困っていないか?

戻ることはできるのか?

その4つが重要なのだ、行動しないといけない。


「ごちそうさま!」


食べ終えた食器を持って立ち上がると、流しで洗った。

そしてとりあえず部屋に戻ろうと階段を数段登りかけて……足首に激痛が走る。

そして、先ほど捻挫したことに気が付いた。


「こんなときに!」


これでは自宅を見に戻ることもままならない。

大体、この家がどこに建っているのかもまだわからないのに。

ああ……私は頭を抱えて、そのもっちりとした体で階段を四つん這いで登り始めた。

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