8.2:例外? 女性向けコンテンツの傾向と対策

 などと、『キャラクターはチームでプロデュースした方がいいよ』。

 あるいは、『関係のあるキャラは、見た目の共通点を幾つか持たせた方がいいよ』と、さんざん申してきましたが。

 実は、これらの気遣いがあまり必要のない例外となりうるジャンルが、1つだけ存在します。


 ずばり、【女性向け】の作品です。

 仮説ですが結論から述べると、男性に比べて、女性は、


 ・洞察力が極めて鋭い傾向がある

 ・男視点では気づかない僅かなヒントから、AとBの共通点を見つけられる


 という長所があります。

 故に、兄弟、親子、チームメイトといえども、男性向けのコンテンツほどデザインの統一性がなくても良い。『これって、関係者だよね?』と見抜いてしまう。


 チーム全体のトータルコーディネイトは、そこそこに。

 むしろ各キャラクター個別の魅力の最大化に注力した方が、女性のお客さんの支持に繋がるのだと考えられるのです。


 それが本当なら、確かに見逃せない事実ですが――

 でも、それって気のせいじゃないの?

 などと、疑われる方もいるかもしれません。


 そこで科学的にこの洞察力の差の根拠を求めると、以下のものが挙げられます。


 (※注)

 これからご紹介するのは、あくまで一説です。

 論文が出されてはいますが。反証があったり、まだ定説に至っていなかったりと、あくまで仮説、俗説として、お考え下さい。


 (※注)

 ここから、しばらくは小難しい話になります。

 興味が無い方は、適宜、飛ばして、お読みください。


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●1:女性はマルチタスクが得意


 女性は男性に比べて、複数のことを同時にこなすことが得意。

 だから、AとBのポイントを同時進行で観察して、違いを瞬時に判別できる――と、言われています。

 人間の脳は、右脳と左脳にわかれていますが、その間をつなぐ脳梁とよばれる部分が、女性は太い傾向にあります。脳梁はいわば情報のバイパスであって、太ければ交通量が多くなっても流れが滞らない。

 だから一度に、多くのことを考えられるという道理です。



●2:女性は色の識別能力がすごい


 男と比べて女性の方が、【色について違いを見極める能力】が高い傾向にあることがわかってきました。


 この能力の違いの原因ですが、染色体の差異にあるという報告があります。

 染色体とは、遺伝子に含まれる情報の一部であり、動物の男女の性を決めます。

 人間の場合、女性が【XX】、男性が【XY】。


 そして、従来、染色体は、赤、緑、黄の3色に反応するレセプター(受容体)を持っています。でも、【X】染色体の中には稀に、さらにオレンジも加えて4色目に反応するものがあるというのです。


 遺伝子の情報は、体の構造、人間の目の網膜にも反映されます。

 そして、前述のとおり、女性の方が【X】染色体を多く持っている――よって、女性の方が、色の違いを多く識別できる人が生まれる確率が高いということになります。


 なんのこっちゃと思われたかと思いますが、私も半分しか理解できておらず、なんのこっちゃです。

 ただ、染色体の話は抜きにしても、どうも男の目と、女の目とでは比喩表現ではなく、本当に見えている世界――色彩が違う。ということは複数の実験で報告されています。


 ちなみに女性は色の識別に優れていますが、男性は遠くにあるものが動いたかどうかを見極めるための動体視力に優れている模様。

 かつて、原始の時代、女性は色鮮やかな果物の採集を、男性は遠くにいる獲物を狩る生活をしていました。その生活の差が今もまだ残っているのではないか? という予測がなされています。



●3:女性は非言語情報を読むのに優れる


 女性は男性に比べて、脳にある神経細胞の【ミラーニューロン】が活発に動いているという報告があります。

 このミラーニューロンは、『相手の行動を、さも鏡に映った自分が行っているかのように感じる』――共感力に、大いに関係していると目されている部位です。

 たとえば、【行動を真似する】【相手の考えていることを察する】など。これらの言葉で表しづらい情報を、非言語情報といいます。(※1)(※2)

 ミラーニューロンが活発に動くということは、女性の方が非言語情報を処理するのに有利であろうことが、容易に考えられます。


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 (※注) 飛ばしても良い説明ここまで。


 などと、専門用語も用いつらつらと理由を述べてきましたが。

 そこまでしなくても、『女性は、男の嘘なんですぐに見破ってしまう』なんて日々の生活の中で、皆さんも感じることがあるのではないでしょうか?


 女性の方が、複数のものを並行に観察でき、色の識別能力が高く、非言語情報(ex:人の表情、イラストの情報)を読み取る力に優れている。洞察力がすぐれている。

 だから、男では気づかないちょっとしたヒントでも、女性のお客さんはキャラクターの関連性を察することができるのでしょう。


 もっとシンプルにいえば、『女性はカップリングの名人』というべきでしょうか。ちょっとした、ポイントで物事を結びつけることができる。

 私のゲームクリエイター上の同僚(女性)の話によると、建物の【天井】と【床】とで、どちらが攻めで、どちらが受けかを語ることができるそうです。


 男性陣からしたら?!?!ですよね。

 でもそれができるのが、洞察力に優れた女性の強みなのです。


 『7.8:共通点のまとめ』において、私は、


https://kakuyomu.jp/works/1177354054888713584/episodes/1177354054888878491


A:一人の作家が、チームメンバー全員のデザインを担当する場合、共通点は2つ以上。

B:複数の作家が、メンバーのデザインを担当する場合、共通点は3つ以上。


 が必要と結論付けましたが、あくまで男性向けコンテンツのお話。

 女性向けコンテンツではもっと少なくても、いいのかもしれません。


 言い換えれば、これは一つの落とし穴でもあります。

 男性向けのコンテンツ(R18だけとは限らないよ)の開発現場にも、女性のシナリオライター、絵師、グラフィッカーが多くおられます。


 しかし、男性と女性とでは、キャラクターの弁別能力は違うのです。

 女性の感覚だけでデザインを決めてしまうと、『これが姉妹? 全然、似てないじゃん。わっからねぇよ!』と、ユーザーに受け入れられない過ちを起こす危険もあるということです。



(※1) 非言語情報

 その他、音や仕草から得られる情報。場の空気、相手の言葉の行間なども含みます。


(※2)

 『人を真似る』ことが上手いということはさらに、スポーツをはじめとする体の動きを見取って習得することについても、女性の方が要領がいいと考えられるとか。

 実際、生まれた子供が、立ったり歩いたり、言葉を覚えたりするのも、男児より女児の方が、早い傾向にあるそうです。

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