6.3:【モンタージュ理論的な実践編】2 二言バット

 前項では、複数のキャラを使った疑似モンタージュ理論を実践しましたが、キャラクター単独の設定でも、モンタージュは活かせます。


 たとえば、キャラクターのコンセプトを、二言で言い表せるようにして、


  【A】だけど、【B】

  【A】なのに、【B】


 と、その間を、接続詞But(~だけど)で繋げたとします。すると、

 【A】と【B】のギャップを活かした、意外性のあるコミカルなキャラクター像が誕生するのです。


【例】

・武蔵坊弁慶だけど、小さな妹型ロボット

・エルフだけど、婚活中

・シンデレラなのに、舞踏会ではなく武闘会に出場


 本書では、この手法を仮に『二言バット』と名付けます。


 この『二言バット』を採用して成功している代表例ですが、異世界転生ものがお好きな皆様にはおなじみであろう『この素晴らしい世界に祝福を』や『転生したらスライムだった件』が挙げられるでしょうか。


 『この素晴らしい世界に祝福を(以下:このすば)』(※1)、に登場するヒロインは、


・女神様なのに、頭が悪くて世俗的でチョロイ

・大魔法が使えるのに、すぐにガスケツになる

・聖騎士なのに、マゾ変態


 というように、一癖も二癖もあり、個性的で魅力的。


 また、『転生したらスライムだった件(以下:転スラ)』(※2)でも、


・転生したけど、よりにもよってスライムだった

・スライムだけど、最強クラスに強い


 という2重構造の二言バットに、主人公がなっていました。

 ストーリー展開自体は、異世界転生ものではありがちパターンの立身出世ものですが、意外性のある主人公像で、他と差別化を図っているのです。


 このように、二言バットは、特に、コミカルでポップな作風に登場するキャラクターを設計する際に、とても有効だと考えられます。



(※1) この素晴らしい世界に祝福を!

 暁なつめ氏著のライトノベル。2016年、2017年にアニメ化。シリーズ累計発行部数は850万部(2019年3月時点)。もともとは小説家になろうで公開されていた、オンライン小説だった。

 元引きこもりの主人公カズマと、クセがありすぎるヒロインたちによる、コメディファンタジー。


(※2) 転生したらスライムだった件

 伏瀬氏著のライトノベル。2018年~2019年にかけてアニメ化。シリーズ累計発行部数は1000万部(2018年10月時点)。こちらも、小説家になろうで公開されていた、オンライン小説が原点。

 よりにもよって最弱モンスターとされがちなスライムに転生してしまった主人公が、特殊能力で急成長。モンスターたちの国の代表から、さらに大きな存在へとなっていくファンタジー小説。


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