6.2:【モンタージュ理論的な実践編】1 ドラゴンクエスト4
限られた尺(映像の長さ)のなかで、多くを表現しなければならない、映画、アニメ作品において、この1+1の情報提示だけで、3も4も表現できる、モンタージュ理論は、広く用いられています。
そして、限られた機会で魅力を伝えなければならないという点は、映像作品でも、キャラクターコンテンツの制作現場でも同じ。
ならば、キャラ設計の過程でも、モンタージュ理論のエッセンスを取り入れることができれば心強いでしょう。
そこで、まず有効活用できるものとして思いつくのが、複数のキャラを、関係づける『キャラクターのグループ化』を行う時でしょうか。
(本旨で、口が酸っぱくなるほど述べてきましたが)
わかりやすく、有名IP『ドラゴンクエスト4(以下、ドラクエ4)』のケースを見ていきましょう。ドラクエ4でプレイヤーの味方になる、『ミネア』と『マーニャ』といえば、今なお根強い人気のある姉妹キャラクターです。
【ミネア】
妹。落ち着いた性格の占い師。
【マーニャ】
姉。自由奔放な踊り子。酒とギャンブルが好き。
2人のキャラクター性を、ザッとまとめると、こんな感じです。
単体で、キャラを立たせようとしても、上記の延長上の描写にとどることでしょう。
しかし、彼女たちは姉妹。姉妹だからこそ、以下のシチュエーションが追加で発生します。
○イケイケの姉と、苦労性の妹
妹なのにしっかりものの、ミネア。
年上なのにトラブルメーカーの、マーニャ。
と、比較対象があるからこそ、それぞれの個性が際立ちます。
『ギャンブルで路銀を使いこんだ姉に対して、妹が呆れてため息をつく』というような、コミカルな絵がすぐに浮かびます。
○時に見せる姉らしさ
欠点だらけのマーニャ。プレイヤーにも嫌われてしまいそうですが、彼女は時折、妹のミネアを気づかう様子を見せます。
ただのワガママだったキャラクターだったのが、妹と交わせることで、憎めない、別の好感をよぶ一面を表現することが出来るのです。
ドラクエ以外でも、リリース後根強い人気を誇る、Fate/Grand Order(以下、FGO)でも、キャラクターの関係性が、細かく設定されています。
【例1】
スカサハとクー・フーリンは同じ槍使いで、師匠と子弟とされている。
【例2】
酒呑童子には、子分の茨木童子、お気に入りの坂田金時、ライバルの源頼光など、色んな関連キャラがいる
やはり、深みのある魅力的なキャラクターの生成には、関連性+モンタージュ理論的な発想法による、設定のふくらませが不可欠ということでしょうか。
以上、厳密には映像界で定義されているモンタージュ理論とは違いますが、1+1の情報で、人の思考力を刺激する――新たなシチュエーションを表せるという意味で、本書では『モンタージュ理論的』『疑似モンタージュ理論』と規定します。
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