3.5:【人気IPを観察する】 恋姫†夢想と、戦国†恋姫

 『恋姫†夢想』は、三国志の登場人物を女体化させて2007年に発売された、作品。艦これや、一騎当千と並ぶ、萌え擬人化、美少女化ブームのパイオニア。火付け役のひとつです。


 数十人にもおよぶ、多くの美少女が登場。

 まさに、今の、萌え擬人化ソーシャルゲームの、フォーマットを作ったタイトルといえますがさらに慧眼だったのは、『三国志』という題材を取り上げた点でしょう。


 なぜなら、『キャラクターの強い関連性こそが人気IPのカギである』と、考えた場合、『三国志』はうってつけのジャンルだからです。


 『三国志』はその名の通り、西暦200年ころ。

 中国が、魏・呉・蜀の3国に別れて争っていた時代の戦史です。

 いいかえれば、


 三国志の登場人物は、たいてい、魏・呉・蜀の関係者


 といえます。


 もちろん、その他の諸勢力(袁紹、袁術、馬騰一族、漢皇帝、呂布etc……)も存在しますが、たいては、魏・呉・蜀のどれかの首脳陣と、顔見知りでした。


 つまり、『三国志』を舞台にすると、なにも考えずとも、有名な順番に美少女化するだけで、それぞれが、強いつながりを持つ、IP化しやすいキャラクターになるのです。


 対して、その待望の続編・新シリーズとして、2013年に発売された、『戦国†恋姫』は、日本の戦国時代の武将をモチーフにしていました。


 舞台は日本。ご当地で親しまれている武将や、大河ドラマなどの存在を考えれば、一見、三国志よりも親しみやすく、IP化しやすい題材のように思えます。


 しかし、本当でしょうか?

 残念ながら、『IP化にはキャラクターの関係性』が不可欠であると考えるのであれば、三国志より日本史の方が、不利だといえます。


 なぜなら、日本の戦国時代は終えるまで、多くの大名が独立性を保ち続けました。

 中国の三国時代、魏・呉・蜀のようには勢力が、少数にまとまらなかったからです。


 また、日本の国土が南北に細長かったことも、関係しているかもしれません。


 たとえば、


・Aグループ:九州の有名大名『島津・大友・竜造寺』

・Bグループ:東北の有名大名『伊達・南部・最上』


 として、AグループとBグループとでは、遠方の勢力すぎて、まず関係性を見出せません。無理をして、


 竜造寺・最上「鮭うめー!」(※1)


 と、言わせるぐらいでしょうか?


 ともあれ、女性向けとしては『戦国BASARA』がヒットしましたが、萌え擬人化では、二次的著作物(※2)が爆発的に売れるほどまでの成功を収めた事例は、見当たりません。


 艦これで成功した、DMMとKADOKAWAが満を持して送りだした、戦国ゲーム――『御城プロジェクト』や『城娘クエスト』も艦これほど、成功できていない一因が、ここに潜んでいるように思います。



(※1) 竜造寺・最上「鮭うめー!」

竜造寺隆信の二つ名は、『肥後の熊』。

最上義光は、天下人、徳川家康への贈り物もそれにしたほどの鮭好きで有名。


(※2) 二次的著作物

ある一次コンテンツの派生作品のこと。ライトノベルを原作に、コミック・ゲーム・アニメ・グッズ化をすれば、そのゲームetc が二次的著作物にあたる。二次著作とも。同人などの二次創作の意味も含まれることがあり、ちょっとややこしい。

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