3.4:【人気IPを観察する】 ファイアーエムブレム ヒーローズ

 この辺りで、最新のIPにも目を向けてみましょう。

 任天堂が手掛けたソーシャルゲームの中でも、好業績を収めているファイアー・エムブレム・ヒーローズ(以下、FEヒーローズ)。


 1990年に発売された第1作目から、30年近くの歴史があるFEシリーズの歴代のキャラクターが復活して、次々と参戦している、意欲作です。


 旧作のキャラクターが再集結する――野球のオールスターゲームのような魅力的なテーマですが、ひとつ問題があります。

 15作以上もあるバラバラの出典から、キャラクターを選抜しているため、作風の統一、デザインのトータルコーディネイトが非常に難しくなっているのです。


 デザインの統一感、グループ化が大切なのは本書で述べてきた通り――。

 しかし、そこは人気IP。

 以下に紹介する3つの対策で、混乱を防いでいると考えられます。



●1:主要キャラだけのデザイン統一


 結論から言えば、FEヒーローズでは、ストーリー上、出番の多い主要キャラのみ熱量をもってデザインを統一。作風にも統一性を持たせる、一助としています。


 本作の初期キャラ――アルフォンス、シャロン、アンナ。

 この3人は、ヴァイス・ブレイヴという自警団に所属していますが、同一といっても差し支えない共通のコスチュームを、身にまとっています。


 また、後にここに、第2部の冒頭より、フィヨルム、スリーズの姉妹が追加されました。

 そこで3人+フィヨルム、スリーズの計5人の共通の特徴として、『同じテーマカラー(白・金)』『マントかそれに類するパーツを着用』させることで、統一感を保っています。


 中核を担う主要キャラだけでも基調を統一し、全体をコーディネイトしようという、明確な意図が見て取れます。



●2:デザイナーの統一


 同じ条件でキャラデザを行っても、担当イラストレーターが違うと、どうしてもイメージの相違点が生まれるもの。そこで、FEヒーローズでは、


 第1章と3章の主要キャラのデザインは全て、コザキユースケ氏が、

 第2章の主要キャラのデザインは全て、前嶋重機氏が


 一手に担当されています。

 本作では、主要キャラにおいては、特定の作家に一任することで、作風をコントロールしているのです。(※1)



●3:同じ職業で、共通のギミックを持たせる


 本作で、魔法攻撃を行うキャラは、戦闘立ち絵で、必ず『魔導書』をもってポーズを取っています。回復魔法を行うキャラは、戦闘立ち絵で、必ず『魔法の杖』をもってポーズをキメています。(※2)


 服装も、出典作品も、担当イラストレーターもバラバラな本作。

 ですが、その代わり、目に見えるデザインの法則を作ることで、作風のコントロールを行っていると考えられます。



 『キャラクターの個性は被るのは悪』という考え方が広まっている現在。

 あえて、統一性を持たせるのは、勇気のいることだと思います。


 ただし、トータルコーディネイトという観点において、それをあえて実施する利がある。

 その成功例として、艦これと並んで、FEヒーローズの戦略は学ぶべき点が多いのではないでしょうか? (※3)



(※1) 主要キャラ以外は、作家はバラバラ。同じキャラでも、違うコスチュームを着ているバージョンであれば、担当が変わることも多い。


(※2) 例外として、ハロウィンや、クリスマスなどの季節限定キャラのみ、『魔導書』『魔法の杖』以外を持つ場合がある。


(※3) なお、任天堂発のソーシャルゲームの世界売り上げの2/3を、FEヒーローズが占めている模様。(2018年中統計)

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