第9話【きせきのときを】
ほら、君の骨が羽根になったよ
滴 ひと偲月
あゝ 私の頬で撫で 逝く子は灰に天へ還り
この頬を濡らして 私と共に往くことを胸に、
切に。
拝はさらら 曇り描いて空の器
虚ろげな鴉 嘶いております 故
善いの勘定を致しましょう 幾ツ石を重ねたのかしら
腹のソコには視得るのは 小さな恋の窓べでしたか
忙しなく私を撫でてゆく 風は貴方を攫って逝きました
私に「きせき」を惜し獲てくれました
彼方の「とき」に熟れたのでしょうか
ちょっとだけの時でしたが
それで楽しかったのですよ
こんな簡単なこと当たり前のことで
何故恐ろしく締まってしまうのか
終わりあるもの必ず崩れてしまうのに
だからこそ、
今を懸命に生きたというのに。
暗闇では恐ろしいだろうね
先がみえないこと
以下に素晴らしくとも厭に満ち
標がいないはるか遠い霞のようで
あゝ 人の生などその程度かと。
落日
仕舞を看取る匕に 想う
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