第20話 熱い紅茶を飲みながら
「気になる話だな」
翌日、曜子の了承を経ていたペンダントの話を所長にした。
時間は決めず早朝に地下で自主トレしていて暫くしたら所長が起きてきて訓練してもらう流れが毎朝続いている。今朝も出勤前に訓練をしてシャワーを浴びて清々しく出勤した九時前の事務所内。入社してから引越しも無事完了して事務所の三階に住ませてもらっている。
「ありがとうございます」
出勤したらなんとなく梓さんが紅茶を淹れてくれるのが日常になっている。今朝も美人というか梓さんは可愛い妹のようなお姉さんって感じだ。
「あちちちちち」
「所長のは熱めに沸騰させてますので気を付けてください」
「何故!?」
「昨日、帰り掛けに私のお尻撫でましたよね?」
「これくらいの熱さが美味しいなぁ、ハハ」
所長は懲りずにまたやらかしていたみたいだ。
ペンダントの話は訓練の時にはせず、出勤して紅茶を飲みながら梓さんと三人の時に話をした。あくまで仕事の話なので出勤前はなんとなく控えた方が所長にも良いかなと思ったからだ。
「しかし、女子高生と旅行かよ」
「いえ、その話は来週のテストの結果次第ですけどなんとか誤魔化していますよ」
紅茶の入ったカップを置きながら所長は眉間にしわを寄せている。置いたカップからはまだまだ湯気が出ていたので舌が痛いのかもしれない。
「そのポーチの中にはペンダント以外になにか変わったものは入ってなかったのか?」
「ピンとかシュシュとか特に変わった者は無かったみたいですが」
「最近の女子高生は健全なんだな」
「どういう意味ですか?」
そう言ってから梓さんを見る所長を見て俺も梓さんを見た。
「私の時代も健全でしたよ」
ニコっとする所長。それセクハラですよ完全に。
「ウタル、梓ちゃんはこう見えても高校卒業してから不健全になったんだぞ」
「今でも健全です」
紅茶を飲みながら冷静に反論する梓さん。相変わらずゆっくり飲んでいるが。
「健全に露出しながらコスプレに参加しているのはどう説明するのだ?」
「趣味ですから。露出多いのはキャラの個性であって健全か不健全かは見る側の問題です。所長はそういう目で見てますよね?」
「俺はキャラのクオリティを重視してだな……」
慌て気味に紅茶を飲んだが『熱っ』と言って必死で冷ましている。
「ウタル、梓ちゃんはブラジリアンワックスでだなぁ……」
「所長、ペンダントの話どうするのですか?」
梓さんに話を遮られて曜子の話に戻った。
「今度その一緒に旅行に行く女子高生の曜子ちゃんを連れてきなよ」
「旅行は保留なんですけどね。テストが終わってからなら大丈夫だと思いますよ」
「そのペンダントが理由で“W”が肉眼で見えるのなら、家に置いてある鏡にもなにか理由があるのかもしれないな」
「そうですね。綺麗でしたけどなんだか歴史のある雰囲気は出てましたよ」
「女子高生の部屋か……」
「“W”に鏡は関係ないと思うので、因果関係付けて女子高生の部屋に行こうとしないで下さいよ」
腕組して所長は閉じた目を開けない。梓さんの言った事が明確だったのだろう。
「テスト明けたら事務所に来てもらおうな。日を決めたらアイツを読んでおこう、梓ちゃん来週は明けとくように連絡しといてくれ」
返事をした梓さんはスマホを取り出し所長の言う“アイツ”という人に連絡を取っているようだ。
「テストが終われば女子高生は気分は夏休みだな」
「えぇ。男子高生も夏休みですが、受験生は夏休み講習とかあって休んでられないですけどね」
「しかし夏休みに女子高生と旅行か……」
所長は余程そのことが気になっている様子だ。大丈夫かな。
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