『ルシファーからの贈り物』予告(90秒ver.)
「ユミはもう寝たのか?」
残業から帰った俺は、妻からコーヒーを受け取りながらそう尋ねた。二人でベランダに出て、空を見上げる。
「ええ、いつも通りの時間にね。あの子ったら、サタンさん早く来ないかなーですって。」
「おいおい、それは来ちゃダメなやつだろ。」
「ふふふ。あ、いま流れたわね。」
風になびく髪を押さえて妻が言った。
「ああ、今年も結構な数が見えるみたいだな。」
見上げれば、また夜空に輝く流星ひとつ。天からの贈り物だ―――
☆
おやおや、もうこんな時期か。
太陽系の辺縁に浮かぶ第十惑星ルシファーは、氷を一粒、その
そして氷塊は地球とすれ違う。その身に纏った自身の欠片は星の大気と反応し、無数の光点を夜空に走らせた。憧憬の残滓が燃え尽きる最後の輝きに、地上から歓声があがる。
此度のダーツも、また外れたようだ。
天に在りし頃は大天使ルシファー、堕ちて後は悪魔王サタン。彼を堕としめたる神の子らは、今宵も夜空を見上げ、サタン・クロノスからのプレゼントを待ち望む。X-dayを待ち望む―――
☆
1933年1月、カリフォルニア。セミナーの壇上に立つカトリック教の司祭にして物理学者たるジョルジュ・ルメートルは、宇宙が小さな点から始まったとする、
だが彼は諦めない。その一時、彼は教会とは関りのない、一人の
そして最後の数式を説明し終えたとき、万雷の拍手が彼を包んだ。彼が最も敬愛する物理学者にして、宇宙卵理論に対する批判者達の筆頭たる男が立ち上がる。
「これは私が今までに聞いた中で、最も合理的で、最も美しい理論だ」
その男、アインシュタインはそう告げ、「我が人生最大の過ち」と、自身の相対性理論に加えた宇宙項の撤回を宣言した。それはコペルニクスの時代から反目し合ってきた、科学と宗教が融和する瞬間であった。
手を取り合い、互いに互いを認める二人。だが彼らは知らない。その瞬間に、地球を取り囲むように展開されていた不可視の力場が、夜露のごとく消え失せていったことを。
それはアインシュタイン本人すら関知していない、まったくの偶然の産物だった。神々の次元にすら干渉する、宇宙の摂理に反した
☆
宇宙空間を漂う、直径5 kmに及ぶ氷塊。主人の命にて遠くふるさとを離れ、猟犬のごとく地球を狙い続けた、ふたご座流星群の母天体たるフェアトン。太陽神の子息の名を冠する小惑星が、破壊を齎すべく地球に迫っていた……。
宇宙項の再構築を試みる者、小惑星を破壊せんとする者、災厄の源たるルシファーの拘束を企てる者……。眼前に迫る試練を乗り越えんとするとき、いま新たな英傑達の物語が生まれる―――
『ルシファーからの贈り物』、2093年冬、Coming soon……!
その時きみは、まだ生きているか……?
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