巨像壁群
『なぜ逃げぬのだ、ヒトよ……!!』
この地を守護してきた老いたゴーレムが、眼前の龍の侵攻を己が体に受け止めながら吐き捨てる。その名は
天に横たわる白き龍は、その身を大地に滴らせ、地上に鈍色の分身を顕現させていた。そこには敵意も感情もない。蓄積された過剰なエネルギーを地球全体に循環させるため、ただシステムの一部として存在し行動している。
だというのに、俺たちの背後の道路では呑気に自動車が走っている。
1時間前には
「すまん
ゴーレム達がもう限界なのは分かっている。だが俺はこう言うしかないんだ。後ろにまだ護るべき人間達がいるのに、「ありがとう、もういいぞ。」なんて言葉はかけれない。
『なにを謝るのだ。汝らはよくやってくれた……。だが今回は少々相手が悪いらしい。』
かつての時代と比べれば、俺たち人間の技術は飛躍的に向上した。巨像群壁の防御力を以ってしても、1箇所に龍の集中放火を受ければひとたまりもない。俺たち人間は龍の進行経路上に配した
だが今回はそれも限界だ。龍を完璧に抑え込むなど、人間の領分を越えたことなのかもしれない。眼前の龍はひときわ大きく膨らみ、
「その左肩、やっぱ厳しかったか……。太陽光パネルなんぞのために削っちまってよ、予算さえつけば土地を買い戻せたんだが!」
『なぁに、瑣末なことだ。汝らが土嚢で水勢を削いでくれている、ここから越水決壊は起こさせんよ。だが気を付けよ、むしろ我らの躰そのものが……!!』
龍は毒を射ち込むかのごとく巨像群壁に己の一部を染み込ませ、内側からの破壊を狙っているようだった。もはや一刻の猶予も許されない。じきに
「……そうか。」
『ふっ、そんな顔をするな、我らは汝らを護るために造られしもの。護りきれぬことは遺憾なれど、こうして時間を稼ぐ
「……っ。クソっ、どいつもこいつも、何をモタモタしてやがる!」
だがいくら蔑んでも、どんな言葉で罵っても状況は変わらない。
――そしてその時は訪れた。俺は
『キノシタよ、汝らと戦えたこと、誇りに思うぞ――』
それが
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