第3話
「馬鹿なんだろうなあ」
ぼくは歯ぎしりがなるほど強く歯を噛み締めた後で、ポケットから10円を引き抜いて誰も使わなそうな公衆電話に飛び込んだ。
慣れたような手つきで押す番号に嫌悪感を抱きながら手に持った受話器を耳に当てた。
「もうミッションは終わりました。」
淡々とした声に自分でも驚いたけれど、電話越しの人物はもっと驚いていたようで息を飲む音が通話越しでも聞こえた。
「自分の気持ちに整理はついたのか。」
「は?」
その言葉は幻聴かと思った。そう、思いたかった。
「あなたがあの時ああやって言ったから…!」
ぼくは当たるように強く受話器を置くとドアを強く蹴って開けた。
寒さが頬を通り過ぎていく中で早くも限界を感じている精神状態に鼻で笑った。
今日くらいはいいか。
この言葉はあと何回使うのだろう。
何度目かの涙を、ぼくは顔を上げて堪えた。
「いくらなんでも酷いじゃないですか、おとうさん」
この言葉が風に乗ってあの人に届くのか分からないが、そんな笑えるような話も信じてみてもいいのではないかと思った。
もうおとうさんとは呼べなくなった体から逃げ出すようにぼくは思い切り逃げ出す。
僕をなくしたのは誰 芋子 @i2muO
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