第2話

窓を開けると外は夏の終わりなのに意外なほどに冷えていた。

なんだか異様なのは僕だけではないような気がして少し安心した自分がいた。

目に映った何人もの人間は、ぼくになんか見向きもしなかった。

おねえちゃんは誰かに見つけてもらうのだろうと、死人と自分を比べている事がどうも子供らしくてぼくは自分の頬を一発殴った。

そんな行動すら子供らしくて自分で自分を嘲笑った。

ぼくは女の部屋に転がっている衣類の山の一つに手を伸ばして自分にも使えそうな服を引っ張り出した。

そのまま今まで着ていた服と交換し、女で染まったこの服をあやすように床に放置した。

「さよなら、また天国で。ああ、ぼくは地獄かもしれないけど」

抑揚なく口から洩れた言葉にまた口角を上げた。

そのあとに続いて出た、行ってきますという言葉と同時にぼくは普通の子供ではなくなった。

時間はあれからそんなに経っていないらしく季節外れの寒さが頬をかすめた。

寒いのに温めてくれる人はもういないらしい。

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