私、近々死にますの。
私はただ、突き飛ばされただけ。
でも、場所が悪かったのですわ。
そこは階段だったのですから。
一体誰に突き飛ばされたのか、私は知ってはいましたが、自業自得として受け止めましたの。
それからですわ。
私が目を覚ますまでに3日。
目を覚ましてからは自室に1ヶ月は篭もりましたわ。
身体の傷も完治していませんでしたし。
最初は発狂しましたわ。
身体の傷も何度か開いた様ですけれど、あまり覚えてはいないですわね。
そして次第に、しくしくと啜り泣いていたのですわ。
実は7日も数えない内に私、正気には戻っていたのですわ。
それでも私は自室にこもりましたの。
そんな事をしていたから、お父様にもお母様にも、もう私は狂ってしまったと思われたのですわね。
でもそこからは自由にしましたわ。
好きな事に集中したんですの。
バルコニーの床一面に絵を描いたり、作曲をしてみたり、部屋にある物で(針を探すのが一番苦戦しましたわ)お裁縫をしてみたり。
……時には部屋を抜け出して料理(?)をしてみましたっけ。
何をするにも、未練を一つも残さない様にしていたのですわ。
誰にも邪魔はさせませんでしたし、されませんでしたもの。
解放された気分でしたわ。
1ヶ月後に戯れに屋敷の庭に出て見せた姿は驚かせてしまったかしらね。
でも、そうですわね。
お父様もお母様も私には必要最低限しか興味を示されない方ですもの。
私が2人の事を気にしても、仕方が無い事だったのですわ。
私の知る小さい世界は、神にとっても気まぐれで生まれた箱庭だったのですわ。
硝子細工の様に美しく描かれたこの世界での私の役割は醜い悪役。
美しい物をもっと美しくする為の添え物、ですわ。
ふふっ、よくある話ですわね。
寝ている間に、夢枕よろしく神様から未来を告げられた私が狂わないわけが無いのですわ。
それでも未だに疑問なのは、何故私に神様のお告げが来たのか、と言う所ですわ。
私の役割が悪役として確定している以上、改心をして欲しい訳でも無さそうなのに。
私はこの悪役としての役割を果たした後、呆気なく死ぬのですわ。
変える事は出来ない因果の様な物だと、告げられましたもの。
それでも神様に疑問を問う事は叶いませんでしたわ。
これは、私に「みっともなく足掻け」と言ってるのかしら。
疑問が尽きませんわね。
けれどきっとこの理不尽な因果、というものも受け止めざる終えない時がくるのですわね。
そうして私が自身の因果を受け入れ、呑み込んでから数年。
私の定められた破滅への火蓋が切って落とされましたの。
正しく、何一つ変わらない形で。
いえ、少しばかり違和感はありましたわね。
しかし、まぁ。
無垢で美しい存在だと思っていた私を破滅に導く方の様子がおかしかった気が致しますが、それも因果からしてみれば誤差の範疇なのでしょう。
それにしても、覚悟が出来ているのと出来ていないのとでは心持ちも違いますわね。
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