003

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つまりは、そういうこと。




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私は晴れてフリーターになったのだ。


そう、無職で、特定のパートナーもなし。ついでに家もなし。


完全なるフリー。


昨日まではええ、お嫁さん見習いでしたとも。リングだってしてましたとも、右手薬指にだけど。


結果だけ見れば満足だった。確かに私はフリーターになりたかった。一度全てをリセットしてでも真っさらになりたかった。気付かずに色んなものを背負いこんで、その全てを無責任に放棄したかった。


かくして、私は今日からフリーターである。本来の語句の持つ意味とは違ってもいい。私はとにかくフリーターになったのだ。


しかし、その過程は一切自分の思い通りになどいかなかった。




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「まずね、襲えよ」


「は?」


「いや、傷心(した風)の女の子が泊まりにきてさ、夜に同じベッドに入って来てんだよ? アンタそれでも男ですかって。こっちの覚悟どうしてくれるんですかって」


「押し付けがましいな」


彼は本当に面倒くさそうに言うのだ。その仕草がまた様になっていてムカつく。そう、様になってしまうくらいに彼は経験があるのだろう。


「え? 何なの? これでもDカップくらいあるんですけど? 下着もちょっと気合い入れてたんですけど?」


「まずね、本当に気持ち悪いぞ。彼氏持ちで、酒に酔った風を装って、で、何がしたいんだよって」


「ちぃ、性欲モンスターではなかったかこいつ」


「お前じゃ勃たん」


「あー、それ言う? それ言っちゃう? え? いいでしょう、戦争だ!」


「落ち着けよ、キャラ崩れてんぞ」


「うるさいなぁ。ほんっとバカみたいじゃん私」


「バカだろ」


「っていうか、もうベッドに入った時点で彼氏持ちじゃなくなってたし。で、直ぐに乗り換えるようなビッチに思われても仕方ないけど…多少は異性として見てたでしょ私のこと?」


「何に怒ってるのかサッパリだけど、あのね、そんなぶっちゃけた話を男子の前でしないでくれます?」


「何とも思わない訳⁉︎ 一緒のベッドに女の子が潜り込んできてんのよ?」


「タバコくさいなって」


「居酒屋行った後だからね!」


「吐いた後なのに元気だなコイツって」


「あれ、そういう風にしてただけね!吐いてないから。私、吐かないから!」


「ジャージに大草原」


「ごめんねぇ? 下着には気を使ったけど、出てくる時に持ってきた部屋着に色気がなくて!」


「でも、シチュは最高だった。可愛い後輩がダサいジャージからちょっと勝負めの下着覗かせながら迫ってくる図」


「じゃあ、何で⁉︎」


「俺、ED」


「は?」


「機能不全。残念でした」


「え…?」




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かくして、フリーター女と勃たない男の奇妙な生活が始まりを告げたのだった。




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もう、これで。 あおい みなと。 @aoi_minato

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