第7話 シレイカンニ ニンメイサレマシタ

◎GAMER'S FILE No.6

 『G・ファイター』

  アンチャー討伐のために制作されたパワードアーマー第一号。

  普段は四次元ブレスレットに格納されているが、

  腕に装備して『プレイ・VR』と叫ぶと自動で装着される。

  アーマーは白を基調としたボディに赤のストライプが入ったデザイン。


  初期研究を兼ねてプロトタイプとして開発された初号機アーマー。

  それ故に取り立てて特徴が無く、特別な機能も装備も持たないが、

  代わりにパワーが他のパワードアーマーの二倍近くまで強化されている。

  シンプルな構造ゆえ、操縦はアーマーの中でも容易な部類に入るが、

  それだけに実戦でのパフォーマンスは装着者の格闘センスに大きく左右される。







例によって溜まり場にされた八重花の部屋で、連れてこられた昌子は地球防衛軍・長官と対面していた。


『キミが新しいメンバーの昌子君か!』

「は、はい……至らない点は多いと思いますが、これからよろしくおねがいします」


立体映像の長官に対し、新メンバーの田宮昌子は深々と頭を下げる。


『うむうむ、礼儀正しい上に真面目そうな子だな!  気に入った!

 昌子君、キミをゲーマーズの司令官……つまりリーダーに任命する!』

「ええええええええええええっ!!?」

「そ、そんな……私なんかがリーダーだなんて……!」

『いやいや、キミなら必ず立派なリーダーになれるはずだ! 素晴らしい戦果を挙げてくれるのを期待しているぞ!』

「あ、ありがとうございます! 精一杯頑張ります!」


長官のえこひいきで、あっさりと昌子が司令官に任命されてしまった。

古参のゲーマーズ達は不満たらたらだ。


「……新参に……リーダーなんて任せていいの……?」

「せやな、ここはホンマのリーダーであるウチがガツンと……」

「いつ千里がリーダーになったんだよ」

「あたしは適任だと思うけどな」


ともあれ新リーダーの下、ミーティングが始まる。

フけようとした佳奈美と千里だったが、長官の一睨みでしぶしぶ席に着く。


「す、すみません……え、えーっとですね……。

 これは皆さんの能力を総合評価した結果、最良と思われる布陣でして、その……」


ボードを指し示しながら立案した作戦の説明をする昌子だったが、

どうにも手先が震えている上に、ボソボソ喋りなので要領を得ない。


「……あーっ、もう、まだるっこしいわぁ! これでも被っとき!」

「あっ、それは―――愚民ども、何でこの程度のことが分からないんですのよ!」


業を煮やしたチサトに金髪ツインテールのカツラを被せられた昌子は、あっという間にテンションが変わる。


「いいですか!? ここはこれこれこうで、こうなって、

 ああいうことだから、そういうことになるわけでございます! つまり―――」

「確かにこっちのがずっと話が早いな」

「……早いけど……ウザイ……」


怒涛の勢いで姫昌子が解説を終えたところで、ちょうどアンチャー出現の報が入ってくる。


『エマージェンシー!! ゲーマーズ、出動せよ!!』


「了解いたしました! さぁ皆様、行きますわよ!」

「ラジャー、司令官!」

「……作戦、理解できた……?」

「ごめん、もう忘れた」

「まぁ適当にやっとりゃ何とかなるやろ」


作戦もバッチリで気合抜群の昌子とは対照的に、他ゲーマーズはどうにもしっくり来ていなかったが、

ともあれアンチャー討伐のために出撃するのであった。









現場に到着したゲーマーズ達は、名乗りを行う間もなく昌子の指示通り動かされるハメになる。


『いてっ!! くそっ、この野郎!!』

「佳奈美、反撃はダメよ! 敵をその地点に釘付けにして動かさないで!」

『りょ、了解……!』


『ぜぇぜぇ……2時方向の敵のかく乱終わったわよ!』

「八重花、次は8時方向の敵をかく乱! 急いで!」

『えぇ~、反対方向じゃない! ……わ、分かったわよ!』


「……あっちに二匹……そっちに一匹……」

「亜理紗、6時方向の敵は!?」

「…………いない……と思う…………」


「……あのー、ウチの仕事は……」

「千里さんは緊急離脱用に待機だって説明したでしょう!」

「す、すんまそん……」


佳奈美は一切反撃を許されずに敵の足止めに専念。

八重花は四方八方を飛び回って敵の陽動・かく乱。

亜理紗は銃すら持たせてもらえずに双眼鏡で敵の位置の確認・報告。

千里に至っては、いつでもマシンを発進できる状態で何もせずに待機である。


「亜理紗、索敵報告遅い!!」

「…………っ…………」

「八重花、次11時!!」

『えぇ~!? ちょっと休ませてよ~……』

『昌子、こっちももう限界に近いんだけども!』

「泣きごと言わないっ!! これは全て勝利のためなんですのよっ!!」


ゲーマーズ達の表情は徐々に曇っていくが、それに気付かない昌子は自分の思い通りに戦局が動いていることに気を良くする。

そうして想定通りの布陣に敵を誘導できたため、昌子は作戦の最終段階に入る。


「ふっふっふ、いい感じに敵を一箇所に固められたわね! みなさん、千里さんのマシンに乗って離脱ですわっ!」

「ふぃー、やっと出番かいな」


千里はマシンを四輪駆動に変形させると、ゲーマーズ全員を回収しつつ離脱を始める。

昌子は後部座席から後方のアンチャーの群れを見下ろすと、腰からレイピアを抜き放って高く掲げると同時に叫ぶ。


「さぁ、今よ! サンダーグングニル!!」


G・パズラーからの指令を受けて地球防衛軍の軍事衛星から放たれたビームが、

昌子の前方に固まっていた敵集団を、MAP兵器のごとく一撃で壊滅させる!

あれだけ群れていたアンチャー達は、一瞬で全て蒸発してしまった。


「おーっほっほっほ、上手く行きましたわね!」

「うっわぁー……えげつない技やなぁ」

「あー、だからアンチャーを固めてたのか」

「しんどかったけど、一件落着かな」

『素晴らしかったぞ昌子くん! 次もこの調子で頼むぞ!』

「ありがとうございます!」


初陣にしてこの手並み、長官も大満足である。


「さてみなさん、これからもよろしくお願いしますね!」

「……冗談じゃない……やって……られるか……」

「亜理紗?」


不満が頂点に達した様子の亜理紗は、双眼鏡を投げ捨てると、マシンから飛び降りる。


「ちょ、ちょっと亜理紗さん!?」

「……もう……あんたの指示なんて聞いてたまるか……。

 ……私がしたいのは……シューティング……。

 マスコットの……数当てゲームがしたいわけじゃない……っ!」


横目でそう吐き捨てると、昌子に背を向けて歩き始める亜理紗。


「……で、でも……しょ、しょうがないじゃない!

 G・シューターの射撃は構造上、遠距離攻撃には向かないのよ!」


昌子は亜理紗の背中に向かって弁明するが、亜理紗は振り返りもせずにそのまま歩き去っていってしまった。


「……すまん、ウチも二抜けや」


千里はマシンを変形させて残ったメンバーを強制排出すると、バイクに変形させたマシンに跨り、首だけを昌子に向ける。


「走り屋のウチが何もせずにじっとしてるのは耐えられへん。司令官には悪いが、いくら作戦でもぶっちゃけやっとれんわ」

「そ、そんな……千里さんまで……」

「……ほな、ウチはもう行くで」


心なし申し訳無さそうにしつつも、千里はエンジン音を響かせて走り去っていった。

しばらく放心していた昌子だったが、不意にキッと目を吊り上げ、後ろに居た佳奈美と八重花に向き直る。


「佳奈美、八重花、あの二人を連れ戻してきて頂戴!

 もう一度ミーティングをやり直さねばなりませんわ!」

「あたし、嫌だよ」


そう即答したのは八重花だ。


「あたし、どんな仕事でもG・アクションとしての仕事はちゃんとやるよ。

 でも、内輪揉めの仲裁役なんてその仕事の内には入ってないと思う」

「そ、それはそうですけど……!」

「それに司令官の昌子さんの指示で離反したなら、それは昌子さんの責任でしょう?

 あたし、ゲームの外の人間関係でまで他人の尻拭いなんてしたくない」

「うっ……」

「それじゃ、あたし急ぐからもう行くよ。もうすぐ古市でワゴンセールがあるんだ」


呼び止めようとしたものの、昌子は言葉が出せず、

八重花の背中が見えなくなったと同時に、昌子はその場にへたり込んでしまった。

ロールプレイを続ける気力も無くなったのか、外した金髪のカツラは両手にぎゅっと握られている。


「こ、こんなことって……」


最後に残った佳奈美はちょっと困ったような顔をしていたが、昌子の前に回りこむと、屈んで昌子の顔を覗き込んだ。


「なぁ昌子、ちょっと落ち着いてくれよ。今回はちょっとアレだったけど、きっとみんな話せば分かってくれるって」

「佳奈美さん、あなたも私が間違っていると言うんですか!?」

「間違っているというか、改めるべき部分は改めた方が――あっ、どこ行くんだよ!?」

「家に帰るんですよっ!!」


引き留めようとする佳奈美を振り切り、昌子はカツラを投げ捨てて走り去っていってしまった。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




郊外に建てられた老人ばかりが住む古アパート。

そこの一室で、田宮文吉(66)は新聞をヒマそうに眺めていた。

妻に先立たれ、息子もとうの昔に自立済み。

今の楽しみは孫娘の成長を見守ることぐらいである。


(ピンポーン)


玄関のベルが鳴る。

どうせ勧誘の類だろうと思って出た文吉だったが、思わぬ来客に驚くと共に、歓喜することになる。


「おお昌子、遊びに来てくれたのか! ささ、入りなさい!」

「……ありがとうお爺ちゃん。お邪魔します」


そうして家に上がった昌子だが、その表情は暗い。

最初は浮かれていた文吉も、流石に様子がおかしいことに気付く。


「どうしたんだい昌子、何かあったのかい?」

「……………………」


無言で目を逸らす昌子。

ふと、部屋の片隅の将棋盤が目に入る。


「……将棋! そう、お爺ちゃんと将棋をやりに来たんです!」


誤魔化すようにそう言って、作り笑いをする昌子。


「そうかい、昌子と将棋をするのは久しぶりだね。どれほど強くなったのか楽しみだなぁ」


異変に気付きつつも、文吉は昌子の意を汲んで、何も言わずに将棋の相手をすることにした。



パチン。



パチン。



「……………………」



対局が進む。

互いに無言だ。

昌子は時折、何かを言いたそうに文吉をちらちら見るが、実際に口に出すまでは至らない。

文吉の方も気になりつつも、あえて追求することはしない。



パチン。



パチン。



「……王手、です」


金将と飛車が王将の逃げ道を塞いだ所を、置かれた桂馬が狙い打つ。

文吉の手持ちには盾に出来る駒も無い。


「うーん、参った、降参だ! 強くなったなぁ、昌子。駒の動かし方が絶品だ」

「……ありがとう、お爺ちゃん」


昌子は控えめに笑うが、明らかに無理をしている。

勝ったのに、全然嬉しくなさそうだ。

そんな昌子に、文吉はそっと尋ねてみる。


「なぁ、そろそろ話してくれてもいいんじゃないか?」

「えっ……」

「何かあったんだろう? 僕で良ければいくらでも相談に乗るよ」

「……………………」


そう言われて、少しほっとしたような顔を見せる昌子。

元々祖父に相談したくてここへ来たのだが、なかなか切り出せなかったのだ。

しばらくして、昌子はポツリポツリと話し始めた。


「……ゲームを……やっていたんです。……友達と一緒に」

「へぇ、どんなゲームだい?」

「え、えっとそれは……擬似軍略ゲームというか……」

「ふむふむ、それで?」


「私……チームのリーダーに任命されてしまったんです……。

 私なんかをとても高く評価して頂けて……嬉しくて……」

「ほう、良かったじゃないか」

「だから、その期待に応えようと……敵に勝つために、全力を尽くしました……。

 この子の役割はこうだ……彼女の能力はこう生かすべき……等という風に、

 みんなが最高の力を発揮できるように、真剣に考えて指示を出したんです……」

「よく頑張っているじゃないか」

「でも……なのに、みんな分かってくれないんです……」


うつむく昌子。


「やってられない……私の指示なんか聞きたくないって……そう、言うんです……」

「……そうか、なるほどなぁ」


文吉は大体の事情を飲み込んだようで、うんうんと頷いた。


「ちょっと厳しいことを言ってしまうことになるかもしれないが……いいかな?」

「……………………」


昌子は少し迷ったようだったが、無言でコクンと頷いた。


「いいかい、昌子。おまえは頭がいいから、人には分からないことが分かる。

 どう動けば効率が良いか、どうすれば勝つことが出来るのか……」

「それがいけないことだって言うんですか……?」

「それはもちろん長所だ。だけどね、それだけではいけないんだよ」


文吉は親指を立てると、軽く自分の胸を突付いてみせる。


「昌子が動かそうとしているものは、心のある人間だ。

 主義もあれば感情もあるし、癖だってある。

 指先一つで思い通りに動いてくれる将棋の駒とは違うんだよ」

「……………………」


痛いところを突かれ、昌子は再び俯いてしまう。

昌子とて、そのことには気付いていたのだが……。

それでも自分が人間を動かすのが下手だという事実はどうしようもなかった。

そんな昌子を見て、文吉もフォローの言葉を入れる。


「大丈夫、昌子はちょっと大事なことを忘れているだけだ。

 それを思い出せば、人間の動かし方もすぐに分かってくるはずさ」

「えっ……?」

「簡単なことさ。ゲームは楽しむものだろう?

 結果がどうあれ、友達と一緒に楽しめる……。

 僕は、それが一番正しいゲームの有り方だと思っている」

「結果がどうあれ……一緒に楽しむ……」


はっとする昌子。


「そ、それですよお爺ちゃん!! 私、勝ちに拘りすぎてたのかもしれません!!」


昌子の表情は、ぱぁっと明るくなる。

孫娘が元気を取り戻したのを見て、文吉も胸を撫で下ろす。


『エマージェンシー、エマージェンシー!』


折良く、ブレスレットから緊急コールが入る。

またしてもアンチャーが出現したのだ。


「ありがとうお爺ちゃん! 私、行って来ます!」

「おう、なんだか分からないが頑張れよ!」


昌子は文吉に手を振ってアパートを後にすると、そのまま現場に急行した。










「昌子、ちょっと待ってくれ!」


現場に急行する途中の昌子を呼び止めたのは、佳奈美だった。


「佳奈美さん! 先程はすみませんでした、でも今は早く現場に向かいましょう!」

「いや頼む、ちょっと話を聞いてくれ!」


無理やり昌子の腕を捕まえ、正面を向かせる佳奈美。

その表情が真剣そのものだったため、昌子も応じることにする。


「……これからまたアンチャーとの戦闘になって、

 昌子が指示を出すと、またみんな反発するかもしれない……。

 でも……亜理紗も、千里も、八重花も……。

 みんなみんな、ただゲームが大好きなだけなんだ。

 だからこそそれが行き過ぎて、ほんのちょっとだけ暴走することもあるけど……。

 でも決して悪気がある訳じゃない……そこんとこ、分かってあげてくれないか?」


そう言いながら、佳奈美は回収していた金髪のカツラを昌子に手渡す。

自分は昌子をリーダーだと認めている。

佳奈美の瞳は、確かにそう言っていた。


「佳奈美さん……ありがとう、でも大丈夫です!

 私、今回はちゃんと勝算がありますから!」


そう言って微笑んだ昌子は、受け取ったカツラをすぽっと被ったのであった。









かくして集合したゲーマーズ達。


『さぁ昌子くんとゲーマーズ諸君! 今回も素晴らしい活躍を期待しているぞ!』

「お任せください長官殿!」


長官の激励を受け、昌子はゲーマーズ達を見渡す。

亜理紗などは昌子の顔を見るなり、露骨に嫌悪する表情を見せる。


「さぁみなさん、今回もわたくしの指示に従ってもらいますわよ!」

「……おまえなんかの……指示を聞けるか……。……私は……好きにやらせてもらう……」


真っ先に任務放棄を宣言した亜理紗だったが……。


「待って亜理紗ちゃん、今回はこれを使ってくださいまし!」

「……えっ、これって……」


昌子が持ってきたのは巨大なロケットランチャーだ。

確かにこれなら距離による威力の減退を気にせず攻撃できる。

どこから持ってきたのかは長くなるので割愛させて頂く。


「今回はアンチャーを発見次第、これで撃滅して構いませんわ!

 そんなに弾数ないけど、亜理紗ちゃんなら効果的に使ってくれるわよね!」

「……………………」


戸惑い顔で、昌子の顔とロケットランチャーに視線を何度か往復させる亜理紗だったが、

意を決したようにそっとロケットランチャーに手を触れると、つぶやくように口を開く。


「……やってみる……」


昌子が心の中でガッツポーズを取ったのは言うまでも無い。

続いて、千里と八重花にも指示を出す。


「千里さんはこの地点までなるべく速く八重花さんを運んで下さい!」

「おおっ!? 今回はかっ飛ばしてええのんか!?」


「八重花さんはマシン上で雑魚の攻撃を防ぎつつ、

 目標地点に到達したら付近に居るはずの敵コマンダーを撃破して下さい!」

「分かった!」


単純明快かつ爽快な指示を受け、目を輝かせて早速出発しようとする二人。


「あっ、待ってください! 出発する前に、アレをやらなきゃいけませんわよ!」

「おっ、そうやな!」


ゲーマーズ達は、隊列を組む。




「欲するは強敵、そして勝利のみ。

 道を追い求め続ける孤高の戦士……『G・ファイター』!!」


「千分の一秒を削るのに命を賭ける。

 音すら置き去りにする光速の戦士……『G・ドライバー』!!」


「狙った獲物は逃がさない。

 視界に映る全てを射抜く戦慄の戦士……『G・シューター』!!」


「あらゆる死地を活路に変える。

 フィールドを駆け巡る躍動の戦士……『G・アクション』!!」


「全ての謎は、ただ解き明かすのみ。

 真理を究明する英知の戦士……『G・パズラー』!!」





『『『『『五人揃って、ゲーマーズVR!!』』』』』





「ほな、行ってくるで!」

「大将討ち取ってくるからね!」


八重花を乗せて発進する千里のマシン。

千里も八重花も、やることが明確になれば強い強い。

あっという間にアンチャー達を蹴散らしていく。

業を煮やしたアンチャーが徒党を組んでも、狙い済ました亜理紗のロケランが突き刺さり、道を切り開いていく。


「よ~し、いいわよ二人とも~!」


双眼鏡で千里と八重花の様子を眺めて応援する昌子。

その脇では亜理紗が黙々とロケットランチャーを撃ち込んでいる。


一方、ぽつんと取り残された者が約一名。


「リーダー、あたしの仕事は?」

「えっ! そ、その……」


昌子は血の気が引く。

他三人の理解を如何に得るかということに傾倒しすぎて、理解を示してくれた佳奈美のことをうっかり忘れていたのだ。


「あの……私と亜理紗さんの護衛を……」


俯いてしまった昌子の肩を、佳奈美はぽんっと叩く。


「大丈夫、あたしはこういう仕事は好きだよ。それに今回は敵を倒してもいいんだろ?」


ニッと笑う佳奈美。

ほっとして、思わず笑い返す昌子。

――その時、千里から通信が入る。


『大変やリーダー!! ボスが意外と強くて、ヤエちゃんてこずっとる!!』

「なんですって!? 佳奈美さん、亜理紗ちゃん、作戦を変更して全員で突撃ですわ!」

「いいけど、途中の雑魚はどうするんだ!?」

「お二人の力で無理やり蹴散らしてくださいっ!」

「……了解……!」

『ど、どうしたんだね昌子くん!? 今回はちょっと無鉄砲すぎやしないかね!?』

「長官殿、勝ち負けなんて二の次、三の次ですわ! やっぱり、ゲームは楽しまなくてはいけませんわよね♪」


昌子は絶句する長官にウィンクすると、自ら腰のレイピアを振り上げ、アンチャーの群れに突撃していった。

もちろん佳奈美と亜理紗もそれに続いていく。


『……一応、地球の命運がかかった仕事なんだがなぁ……』


やっぱりゲーマーズにアンチャー討伐を任せるのは間違いだったのかもしれないと、

今更ながら後悔し始めてしまう長官なのであった。




数時間後、ズタボロになりながらもボスを倒したゲーマーズ達は、実に満足げな笑顔を咲かせておりましたとさ。









   チャチャチャチャラララン♪



  『…………河合亜理紗…………。

   ………………………………。

   ……TVゲームは……一人で遊ぶもの……。

   ……そう思ってる人は……多いと思う……。

   ………………………………。

   ……それなら……どうしてフレコンは……。

   コントローラーが……二つ付いてるの……?』



  次回、闘え!!ゲーマーズVR


Round8「孤独なエイユウ、マルチなゲーマー!」


   ジャジャーン!!



  『……見ている場所が違う……それがシューター……!』

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