第22話

本当に人生はわからないものだ。商社の中の理不尽な出来事の愚痴でも聞いてもらつもりが、結局先生は僕の話しをなにひとつ聞かず、次の日、北海道に飛び立った。


先生はこの部屋のもの自由に使っていいからなと、家の鍵とガレージの鍵の束を渡してくれた。


そうそういつもシャッターがしまっていた小屋だよ。


なにが入っていたと思う?


力と孝弘が身を乗り出して聞いてきた。

「なにが入ってだんだ。」


「白のランボルギーニ一台とハーレーダビッドソンバイクだよ。


先生はハーレーは北海道に持っていったよ。


新聞社をやめてから喪失感の中買ってみたそうだ。ドライブに2〜3回いってみたらしいが、心を満たされることはなかったそうだ。


塾に通っていた時に白いワンピースを着たすごい美人みかけたことないか?」


「あるある、道ですれちがった超美人!」力がはっきり覚えていたようで、僕の答えを待った。 

 

「あの人は先生の引き裂かれた妹さんだったんだ。」


香織も孝弘も力も驚いた顔をした。


「妹さんは大学を卒業し、就職もし結婚が決まった時にお兄さんに結婚式に出席して欲しくて施設にいき、伯父さんたちを尋ねたそうだ。


するとある事実がわかったそうだ。


先生がおじいさんを殺されたかと思っていたみたいだが、事実は弟とおじいさんが相続の件で口論になって争っているうちに誤って突き落としてしまったそうだ。


それを見ていた兄がおじいさんが足を踏み外して階段から落ちたと証言したんだ。


なぜなら財産を受け取る権利が失くなることを恐れたんだな。


でも弟は段々心が壊れていって今では病院暮らしらしい。


毎日叫んだり、泣いたりと誰にもてがつけられなくなってしまったそうだ。


兄は会社を継ごうとしたが、取締役会で相手にされなかったらしい。


おじいさんは先生に全財産を譲りたかったらしいが、先生の行方がわからないことを理由に話しがスムーズにいかないとのことらしい。



あっそうそう。孝弘の電車の中での観察ターゲット覚えてる?


あの人が先生の伯父さん、兄のほうだったんだ。


仕事もせずにぶらぶらしていたから、金も底をついて持ってた車も売ったらしい。


先生は僕たちが想像も絶するほどの時を何度も過ごしてきている。


妹さんに会えた時は嬉しかったといっていたよ。


そう、でも先生はまたそこで乗り越えなければならない事実をつきつけられたんだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る