第17話
風呂から上がると先生が作ってくれたクラムチャウダーと、僕が持ってきたカニサラダと春巻きがきれいに盛り付けてあった。
「いいワインもってきてくれたんだな。では再開を祝して乾杯でもしようか?」
「はい。」
ワインを一口含むと落ち着いてきた。さっきおはぎを2個も食べたのに、急に腹がへってきた。
先生の作ってくれたクラムチャウダーがはらわたにしみた。
僕は両親が亡くなられても、どうやってこんな優しく、心豊かな人になっていったのか知りたい気持ちでいっぱいだった。
風呂の中でなんといって尋ねたらいいか考えてもわからなかったが妹さんのことを聞いてみることにした。
「妹さんは大丈夫だったんですか?」
「あ~妹は幸いにも軽傷だったよ。僕はその当時サッカーをやっていたんだ。クラブのエースで、みんなを引っ張って、県大会で優勝した流れで全国大会にいく予定だったんだけど、あの事故で足を骨折して、私は出場出来なかったよ。
妹は小さかったから施設に預けられたんだ。
『お兄ちゃん、お兄ちゃん!』と引き離される時に叫んだ妹の声がわすれられなかったよ。」
先生は少しふっと肩を落とした。
僕は聞いた。「先生はどこにいらしたんですか?」
「都内の成城の親戚に預けられたよ。」
「高級住宅街ですよね。」
「確かにね。その家にいったその日は大豪邸なんでびっくりしたよ。そんな親戚がいることは知らなかったからね。
第一私の両親は駆け落ちしたとだけは、親から聞いたが、親戚やお爺様たちの話しはあまり聞いたこともなかった。 ただ、私の父は母の家庭教師だったらしい。優秀な大学生を紹介して欲しいとお爺様が会社関係の人に頼んで選ばれたのが、父だったそうだ。 お陰で母も希望する女子大に無事に合格したんだが、二人はこっそり会ってたんだな。 楽しい時はそう続かなかったようで、父の親の会社が倒産したのをきっかけで父は大学の卒業を待たずにトラックドライバーとして、働き出したそうで。
本当に人生はなにが起こるかわからないものだな。
それでも母は父を忘れることができず、お爺様の反対を押し切って家を出たんだ!
勘当されたが、二人は幸せだったそうだ。
二人が結婚したから、今の私がいるというわけさ。
「お爺様は先生のことを受け入れてくれたんですか?」
「母が家を出てから十数年たっていたからな。
娘は無残な死を遂げてしまい。僕に未来を託そうとしたのさ。
でも、母の兄の拓郎と母の弟次郎には僕は邪魔な存在だったんだ。ろくに働きもせず、遊びほうけていたどうしようもない伯父たちだった。
お爺様が大事に育ててきた会社もあの二人には任せることはできないといっていたよ。
ある夜、二階の奥の部屋で寝ていたら、お爺様とおじさん達が言い争っている声がして、目が覚めた。しばらくすると階段からなにかが落ちていく大きな音がした。その時はそれがお爺様とは思いもせず、静かになったので、また眠くなってねてしまったんだ。
次の日の朝、お手伝いさんからお爺様が夕べ階段から落ちて亡くなったことを知らされたよ。
夕べなにがあったのか、その時初めて理解したよ。」
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