第15話

しばらくあの商店街を歩くこともなかった。

ましてやあの曲がりくねった細い道も通る事さえ忘れていた。十数年たっていた。


考えてみたら自分たちは、自分のことばかり話していたが、先生のことはなにひとつ知らなかった。


先生は甘党なんだろうか?それともお酒が好きなんだろうか?


そんなことも知らずにいたので、デパ地下でおはぎの詰め合わせとワインにカニサラダと春巻きを買った。


なんともバラバラの取り合わせだったが、先生とゆっくり話すつもりでとりあえず、腹の足しになるようなものを選んだ。        


「 先生お久しぶりです。ご無沙汰しております。」

 「 おー昴!元気にやっとるか?」

先生は髪に白いものがあった。


あの頃は30歳位だったから今は40代後半位だ。


優しい眼差しで僕を見つめた。

先生は超能力者のようだといつもあの頃思っていた。

そして、今も心が読まれているような感じは拭えないが、昔から知ってる先生にはなにも取り繕うこともなく、ありのまま話すつもりで来ていた。


「まあ、あがりなさい。」


「先生、お土産!」


「ありがとうな。おっうまそうだ。」

二人で笑いながら通された部屋にはいった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る