第13話

「僕が先生に呼ばれて一人も残された日を覚えているかい?」


「あ~そんなことあったな。」力がそういうと僕たちもうなづいた。


「あの時、新聞配達の仕事を紹介してもらったんだ。少しでも稼いでなんとか高校位はいきたかったからな。そして、先生とこの先のこといろいろ話して公立の工業高校にいくことに決めたんだ。

万が一経済的理由で、大学進学ができなかった時、技術を身につけて自立ができるからな。   

確かに先生のアドバイスは現実的だった。俺は学年でもトップクラスだったから、当然学校の先生は、俺が目指している学校はあの名門進学高校と思ってたみたいで、かなり驚かれたよ。


でもね。本当に人生ってわからないもんだよね。

その工業高校の2年の夏休みにロボットコンテストがあって、俺たちのチームが優勝したんだ。


その時にアメリカから来日していた技術者が是非アメリカに来て欲しいという。


僕は、ある会社に入ることが条件で、返済無しの奨学金制度で大学を卒業したんだよ。


その会社とはAIを駆使し、今までの車とはまったく違った概念の移動する乗り物をつくってる。 

                      もうすぐ発表になるから楽しみにしててよ。多分世界が驚愕するレベルのものだから。昔僕たちが夢見た事が実現するんだよ。


それとね。その会社とは別に今あるプロジェクトチームで動いてることがあるんだよ。


アメリカ、ベトナム、インド、そして日本の技術者チームが宇宙規模の乗り物開発してるんだよね。


もう昔みたいなに技術開発を国ごとの秘密事項にする時代は終わってるからな。


かなりの予算もかけられて、急ピッチで進められているんだよ。

  

先生が最後の日にいってたよね。


『平成も終わろうとして新しい時代を迎えようとするが、これからの10年、20年はものすごい勢いで変わっていく。今までの10年と比べ物にならないほどね。


だから、どんな環境がよくてなにが悪いなんて誰も今の時点で予測なんてできないんだよ。


だから、君たちは今やるべきことをやって、好きなことをひとつきわめれば、まずはそれが成功です。そして、君たちの自信につながるし、そこから人生が広がるものなんだよ。』と力強い言葉をもらったよな。


本当にその通りになっていったな。」  


僕たちは本当に短い期間にたくさんのことを先生から学んだ。 それは計り知れないなにか深い愛情と、力強さをひとつひとつの言葉に込められていて、自分たちはそのひとつ、ひとつをしっかり受け止めたんだ。 


あの頃は、先生のことはなにひとつ知らなかったけれど。

 

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