第11話
今日の香織は薄いグリーンのTシャツに小花模様の黄色のフレアースカートを着ていた。そのスカートから出ている足はあの桜島大根ではなかった。
はっきりはわからないが、推定15キロはマイナスになっていたと思う。
髪はやわらかいウェーブで肩までふんわり伸ばし、栗色に染めていた。
「あの頃の私は、クラスになじめず、毎日機嫌悪い顔をしていたと思うわ。
なにしろ母親が浮気したおかげで、ブスになったとおこっていたしね。
それで、毎日家には帰りたくなくて、学校帰りに、ジャンクフードを食べてたの。それだけでなく、親は毎日忙しいからって、弁当も作ってくれなくて、これでなんか買って持って行ってねと毎日お金渡されてたの。それで、毎日コンビニで弁当かって持っていいてたら、クラスの子たちに笑われてたのよ。
家に帰っても勉強の合間にポテチとコーラは必須アイテム!そんな生活をしていたら、1年であっという間に太ったし、顔はニキビだらけになってしまってたの。
あの頃の私は、人にまったく興味がなかったわ。
でも、この塾に来て、先生の話を聞いてるうちに、自分の不幸より、人に興味がでてきたの。
ある日母親に頼まれて、しぶしぶスーパーマーケットに買い物に行った時、きれいな主婦の方のスーパーの買い物かごをのぞいたことがあったのよ。
その中には、アボガドや鳥のささみ、サバ缶や納豆、豆腐にちりめんなどうちの食卓では出てこない食材がはいっていたの。
次にまた出会った時には小エビのボイルしたものや春雨、ところてん、それからシュウマイの皮みたいのが入っていたの。私はその主婦の方に毎日の献立どうやって考えているのか聞きたくなって思わず話しかけたの。
すると、その方は快く話してくれたのよ。若い時に暴飲暴食をして太っていたこと、そして、無理なダイエットをして拒食症にまでなってしまったことをね。
そして、今では、ブログでその経験をみんなに伝えて毎日、健康的な献立をアップしてるんだって。
それから、私は、その方のブログを毎日チェックして、できるだけ同じメニューで食事をすることにしたの。
どうしてそこまで思えたかといえば、その方はいつもジーンズに白のTシャツだけど、スタイルいいからかっこいいし、なんといってもお肌がきれいだったの。」
ここまで聞いてみんななるほど「食事は大事なんだな。」と納得したに違いない。
香織は、毎日家の食事を自分で作り始めた。そして、弁当もどこの仕出し屋の弁当
かと思われるようなできの弁当を毎日作っていったそうだ。
すると、体形もみるみる変わっていき、肌のぶつぶつもなくなっていっただけでなく、クラスの子たちが香織の弁当に興味をしめすようになっていった。
そして、私にも教えてくれない?っていう子も現れて、今まで母親に作ってもらっていた女子が自分の弁当や、兄ちゃんの弁当まで作るようになったらしい。
しかし、香織のストーリーはここまでではなかった。
そう、香織の家は理髪店と美容院だ。
その流れからか、
「私はエステティシャンの専門学校を選択したのよ。そこで、猛勉強しただけでなく、メイクやネイルも学んだの。それだけでは物足りなく、タイやイギリスの短期留学でリラクゼーションの勉強もしたの。
そして、22歳で開業したの。ある日、芸能人の方が、うちの店に来店して、とても喜んでくれて常連になってくれたことが、あっという間に広まってこの十数年で、直営店舗75件、フランチャイズ店舗150件まで広がっていったのよ。なんだか、自分が一番信じられないわ。」
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