第124話 妹なんだもん
泣いている麗華と一緒に家に上がった俺は、麗華の登校時間もあるのであまり時間がないと思い食事で使うテーブルのところに座る。
麗華も俺と一緒に座ったのだが何故か座った位置がおかしい。
普通なら俺と向かい合わせに座るはずなのだが今は、横に座っている。しかも椅子を俺のほうに近づけて俺の腕をぎゅっと抱きしめているのだ。
「………まぁ、いいか。………麗華、話を聞いてくれるか?」
「………うん。」
麗華は、優しく俺に返事をする。
そんな麗華に俺は、嘘偽りなく今まであったことを全て話した。
優奈が俺に対して好きと言ってくれたこと。俺自身も優奈が好きだったこと。
そして、許嫁のことも。
さすがに許嫁のところになると驚いていたものの麗華は、俺の話が終わるまで俺の腕を抱きしめたままずっと黙って聞いてくれていた。
「これが全部だ。俺は前までこの先、どうしていいのか分からずずっと困って悩んでいたんだ。俺の気持ちはずっと表に出さないまま生きていくか、それとも好きな人とともに過ごすべきなのか。ははっ、今となってはもうくだらない選択肢だったんだよな。」
「………ホントだよ………本当に……そんなことで……」
麗華は、怒っているのか俺の腕を抱いている力が強くなった。
「………ねぇ、一つだけ聞いていい?」
麗華は、俺の方を向かずに言った。
「ああ、なんでも聞いてくれ。もう隠し事なんてしないから。」
「………お兄ちゃんにとって私ってどんな存在?」
「どんな……存在………」
俺にとって麗華という人は、どんな存在なのか?という質問だろうか。
そんな質問、考えなくても言葉が出てしまう。
「大切な存在だよ。妹として、家族として。俺にとってかけがえのないたった1人の妹だ。」
「うん、私もほとんど同じ。」
「ん?ほとんど?少し違うのか?」
「………一つだけ……ね。……私にとってお兄ちゃんは、大切な存在。兄として、家族として、そして、大好きな男の人として。私は、ずっとずっと前からお兄ちゃんのことが好き、大好きだよ。」
「……………そっか。」
なんか、突然の告白に驚かなくなってきたな。
まぁ、麗華の方は前々から兄として以上に俺に好意を向けてくれているなって気づいていたからそれもあるかもしれないな。
「麗華、俺は麗華にとってのお兄ちゃんだ。その関係は今後、一生変わることは無いよ。」
俺は遠回しにだが麗華の告白を断った。
それに麗華は、気付いたのか俺の手に涙が落ちてきた。
「うん……知ってる………私は、お兄ちゃんの妹なんだって………」
俺は麗華を傷付けたのかもしれない。
でも、きっとうやむやにしてしまう方がさらに麗華を傷付けてしまう。
優奈がそうだったように。
もうそれは二度とゴメンだからな。
でも、俺はもう1つだけ知っていることがある。
「………麗華、俺の事が嫌いになったか?」
「………お兄ちゃん、分かってて聞いてるでしょ。」
「まぁな。」
「意地悪………どんなことがあっても私は、お兄ちゃんのことを嫌いになったりしないよ。」
「………知ってるよ。」
そこで俺は、時計が目に入った。
もう話を止めないと麗華は、確実に遅刻してしまう。
「麗華、そろそろ出ないと遅れるぞ。」
「………………」
「ん?麗華?」
麗華は、椅子から立ち上がらず、何故かスマホを取りだし誰かにメッセージを打っているようだった。
「これで大丈夫。」
「いやいや、大丈夫って………ちゃんと行かないと先生から怒られるぞ?」
「友達に遅れることを先生に連絡してって頼んだから大丈夫だよ。」
「なん………」
「私、まだお兄ちゃんに何も伝えられてないから。」
麗華は、今度は横を向き真剣な表情で俺の目を見つめる。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんは私を大切な存在だって言ってくれたよね?」
「あ、ああ、言ったな。」
「私もお兄ちゃんは大切な存在だって思ってるって言った。」
「ああ、言ってたな。」
「なら、また質問。お兄ちゃんは、私が自分を犠牲にしてお兄ちゃんの幸せを願ったらどうする?」
「え?そんなの俺の事なんかどうでもいいから麗華自身の幸せを選んでくれって言うに決まってるだろ。」
俺は、なんでこんな当然の質問を聞かれたのか分からず首を傾げた。
「うん、知ってた。そして、私も同じ答えだよ。」
「ん?どういうことだ?」
「お兄ちゃんがなんの利もなく自分の幸せを犠牲にしようかどうか悩んでいたら私は絶対に自分の幸せを優先してって言うよ。」
「………なるほどな。」
これが麗華なりの優しさで自分の決意なんだろう。
「それにね、今更だけど、私と優奈さん、決めてることがあったの。」
「ん?何を?」
「私か優奈さん、どっちがお兄ちゃんを取っても恨むようなことなんてしないって。その時はちゃんと祝福してあげるって。」
「へぇ、そんなことを。」
「だから、お兄ちゃん。優奈さんと付き合って。急に出てきた歳下の女の子にお兄ちゃんを取られるとか嫌だもん。」
「………そっか。ありがとな、麗華。こんな俺をいつも支えてくれて。助けてくれて。」
「………当然だよ。だって私はお兄ちゃんの妹なんだもんっ!」
麗華は、瞳に涙を溜めながらニコッと笑ってそう言った。
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