第114話 意識しないはずがない
電車に揺られ続けて約1時間。
そして、電車から降りて15分ほど歩いたところに今日の目的地、動物園に着いた。
「みんな、ちょっと待っててくれ。受付に行って券もらってくるから。」
「ああ、サンキューな。」
大輔を待っている間、動物園に入る人の邪魔にならないように道の隅に避けておく。
「それにしても結構人が多いんだな。」
「そうだね。でも、今日は日曜だし、これくらいいても普通なのかな。」
「かもな。」
そんな話をしていると大輔が入場券を貰ったと言って俺らの所へやってきた。
「それじゃ、早速入ろうぜ!」
「あっ!ちょっと待って!」
大輔を先頭に俺たちが動物園に入ろうとした瞬間、麻美が止めてきた。
「どうしたんだ?」
「提案なんだけど動物園の中には結構人がいるようだし5人で動いてもあんまり身動きが取れないと思うの。だから、電車の時と同じように3人組と2人組で動かない?」
「ん〜……確かにそっちの方がいいかもな。みんなもそれでいいか?」
大輔が麻美の提案に賛成し、俺たちにも意見を聞いてくる。俺を含めた3人も麻美の意見に賛成し、早速3人組と2人組に分かれる。
分かれると言っても電車の中での座席のチームということになり、俺と優奈の2人組となった。
大輔は、俺と優奈に入場券を渡すと先にみんなと行ってしまった。
「それじゃ、俺たちも行こっか。」
「そうだね。陽一くんは、何か見たいものとかあるの?」
「そうだな………あんまり動物には詳しくないからな。ここは、優奈に任せてもいいか?」
「あ、じゃあ、あそこにあるマップを見ながら行こうよ。私の意見としては全部の動物を見てみたい!」
「ははっ、そうだな。それじゃ、マップを取ってから行こっか。」
「うんっ!」
俺たちは、無料で配布されてる動物園のマップを1つ取り、動物園の中に入った。
「それじゃ、早速何を見ようか。」
俺は、マップを広げ優奈にも見えるようにする。
優奈は、それが見えるように俺にグイッと近づく。さすがに何も意識していないということは無く、肩が当たってるし、優奈の甘い匂いにも反応してしまう。
でも、ここで変な態度を取ってしまうとまた気まづくなってしまう可能性があるのでここはなんでもないように振る舞う。
優奈も何も気にしてないようだし。まぁ、優奈の場合、意識はほぼなんの動物を見るかということに集中しているので気にしていないのも当然か。
「あっ、陽一くん!ここからすぐの所にチンパンジーがいるみたいだよ!そこ見に行こ!」
「あ、ああ、そうだな。」
俺たちは、まず最初にチンパンジーがいる所に向かう。
2分ほど歩いたところにチンパンジーたちがいる所に着いた。俺たちが着いた時、ちょうど餌やりをする時らしく、飼育員の人が色々な果物が入った大きなカゴを持ってきた。それにチンパンジーたちが一斉に飛び付き少々喧嘩をしながら取っている。
そして、果物を取り終えたチンパンジーは、家族と思われる群れに向かい、他のチンパンジーたちに餌を配る。
「やっぱり動物にも家族ってあるんだねぇ〜。」
優奈は、そんなチンパンジーを見ながら楽しそうに騒いでいた。
チンパンジーの家族愛を見た後、俺たちは一旦そこから離れてまたマップを見る。
「次は何を見よっか?」
「そうだな……ここから1番近いのでいいんじゃないか?」
優奈の存在を意識しつつも俺は、それを気づかれないようにいつもの様に振る舞う。
「あっ、それじゃ、次はキリンだ!」
「よしっ!それじゃ、早速行くか。この動物園、結構広いから全部の動物を見るんならあんまり時間は無駄にしたくないな。」
「そうだね!早く行こっか。」
俺と優奈は、その後も色々な動物を見て楽しんだ。
そして、時間は12時半。
「そろそろご飯だけど……どうしよっか?」
「麻美ちゃんたちと集まる?」
「そう思って今、連絡を入れたんだけど………おっ、今来たみたい。」
俺たちが昼ご飯をどうしようかと悩んでいる時にちょうど、太輔からラインが来た。
『結構混雑してるから昼飯はそっちで食べてくれ』
「………だって。」
優奈も俺のスマホを覗いていたので俺は端的にそう言った。
「確かにこの時間帯だと昼ご飯に行く人は多そうだね。どうする?私たちも昼ご飯にする?」
「ん〜、どうせ今行っても人が多過ぎてすぐには食べれそうにないからな。今は動物の見て回って人の少なそうな時を見計らって行かないか?あ、優奈がお腹空いてるって言うんならすぐに行くけど。」
「ううん、私はまだそんなにお腹空いてないから大丈夫だよ。」
「本当か?無理してない?」
「もう〜、疑り深いんだから〜。大丈夫だよ!」
「そっか。それじゃ、何見る?」
「ん〜…………あっ!ねぇねぇ、陽一くん!この近くにうさぎと触れ合えるところがあるって!そこにしようよ!」
優奈は、目をキラキラとさせてそう言った。
あ〜、そう言えば優奈ってうさぎみたいなふわふわとした動物が好きなんだよな。
俺たちは、次の目的地をそこに決めてさっそく歩き出した。
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