第112話 どうしたいんだろう

「お兄ちゃん、もう競技は終わってしまいましたよ。」



 俺が優奈の頭に手を置いて少し慰めていると美優と飯野くんがこっちへやって来た。



「………優奈、もう大丈夫か?」

「う、うん………ありがとう、陽一くん。ごめんね、話、変なところで区切っちゃって。」

「ううん、別にいいんだよ。また、今度聞かせてくれ。」

「うん、絶対に今度、伝えるね。」



 俺と優奈は、そこまで言うとお互い1歩離れた。

 その後、先生が競技の終了を知らせに来て俺たちは優奈たちと別れてお義母さんたちの元へ向かった。



「やったわねぇ〜!美優!陽一くん!1位よ!」

「お兄ちゃんのおかげです。途中で私はばてちゃっておぶって走ってもらってたんです。お兄ちゃん、あの時は本当にありがとうございました。1位が取れてすっごい嬉しいです。」

「お礼を言われるほどじゃないよ。俺だって1位を取りたかったっていう俺の願望でもあったんだからか。それに途中まで美優もものすごく頑張っていたから取れた1位だよ。」

「はいっ!」



 美優は、とびきりの笑顔で返事をした。



「本当に2人とも、よく頑張った。だから、お腹すいているだろ?さっそく昼食にしよう。」



 お義父さんがそう言うと園江さんが動き始め、テキパキと弁当を広げていった。



「今日は私と園江で一緒に弁当を作ったの。いっぱい作ったから陽一くん、遠慮せずに食べてね。」

「はい、ありがとうございます。」



 俺たちは、1度お手拭きで手を拭いて取り皿と箸を全員が持ってから合掌をして、弁当を食べ始めた。

 そして、1時間ほどの昼食休憩の後、再び、競技が始まった。それと同時にまた、再びお義母さんたちによる美優の撮影会が始まった。

 俺は、お義母さんたちを止めていたけど、途中で無駄だと思い俺もその中に混ざることにした。

 今日で俺のスマホの写真のフォルダに美優の姿がたくさん収められていた。

 俺は、別にロリコンではない。

 ないのだが、このフォルダに収められている美優の頑張っている写真を見ているとつい顔が綻んでしまった。

 そして、時間はあっという間に過ぎて美優の運動会は終了し、今は保護者も参加してテントなどを片付けている。

 30分ほどでそれが終わると美優たちと一緒に行きに来た車に乗った。

 園江さんは、別の車があるのでそっちで帰っていった。

 帰りは俺の家の前まで直接送ってくれた。



「送っていただき本当にありがとうございました。美優、今日は誘ってくれてありがとう。」

「いいんですよ。私が来て欲しいってお願いしたんですから。こちらこそ、本当にありがとうございました。」

「ははっ、どういたしまして。あんまり車を止めていたら邪魔になりますね。そろそろ俺は家に帰ります。」



 俺が一礼すると3人とも、別れの言葉を告げて帰っていった。俺は、その車が見えなくなるまで見送り、その後、家の中へと入っていった。

 家に帰り着いたのは6時くらいだった。

 テントとかの片付けもあって結構疲れていたので俺は、すぐに風呂に入り夜ご飯を食べてからベットに横になった。

 だが、俺の体を襲ったのは疲労からの眠気ではなく、優奈の言葉を思い出しなんとも言えない恥ずかしさだった。

 俺は、顔を枕にうずめ優奈の言葉を鮮明に思い出していた。



『わ……わた………私………は……陽一くん、あなたのことが……す……す……』



「〜っ!」



 俺は、あの言葉を思い出した瞬間、恥ずかしさからベットを左から右へと転がりまくった。

 俺って、絶対に告白されてたよね!?

 だって、飯野くんの言っていたこともあるし。

 え!?じゃあ、俺、今日もしかしてものすごいもったいないことした!?



「……………いや、でも、今さら告白されてもどうしろって言うんだ。」



 まだ確定したわけじゃないけど美優が一応婚約者としているからな。



「…………俺は、どうしたいんだろう。」



 俺は、今の俺の気持ちを自分でも分からなくなり混乱し、戸惑っていた。

 俺は、その答えを出すことが出来ずいつの間にか眠ってしまっていて起きたら朝だった。

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