第105話 美優の友達

 その後、美優から頬にキスされた以外は特に問題もなく運動会が回っていった。

 いや?あの応援は問題なくって言えるのかな?

 4年生のダンス披露の時なんかがピークだった。あれを止めるなんて俺には出来ないよ。園江さんは黙々と写真を撮り続けてるし。



「保護者参加の競技っていつでしたっけ?」

「昼ごはんの前だからもうすぐだと思うわ。」



『次は午前最後の競技、保護者参加による「息を合わせろ親子の絆」です。参加される保護者の皆さまは入場門前に生徒と一緒に並んでください。』



 丁度良くアナウンスが次の種目を教えてくれた。



「それじゃ行ってきますね。」

「むぅ〜、いいな〜。私も美優と合わせたいな〜、親子の絆。」

「あはは……」



 そう言われても俺が頼んだわけじゃないからな。

 俺は、乾いた笑みを浮かべながら立ち上がった。



「まぁ、陽一くんだからいいんだけどね。陽一、頑張ってきてね。」

「私たちの分まで頼むよ。」

「はい、なるべく1位を取れるように努力します。」



 俺は、そう言ってその場から去り、入場門へとやって来た。



「ん〜……美優はどこにいるかな〜……」

「お兄ちゃ〜〜〜ん!!!」



 俺が周りをキョロキョロと見回しながら美優を探していると美優が大声で俺の名を叫び小走りでこっちに駆け寄ってきた。



「待ってましたよ、お兄ちゃん!」

「悪いな、ちょっとお義母さんたちと話してると出るのが遅くなっちゃった。」

「むぅ〜、また、お義母さんたちですか。」

「まぁまぁ、美優が頑張ってるところ見て喜んでるからさ。それよりもすごい人数だな。」

「毎年これくらいは集まりますよ。正直に言うとこの運動会で1番盛り上がるのがこの競技なんですよ。」

「えっ!?この保護者が出てるやつが!?」

「街全体を駆け回ったりしますからね。」

「ん?街全体?」

「あれ?言ってませんでしたか?これは街全体を一周してこの学校に1番早く戻ってこれた人が優勝なんですよ。」

「き、聞いてねぇ。」



 街全体って何キロあるんだ?

 それに何かしら要所要所のイベントがあるはずだ。



「説明は後で校長先生が行うのでそれを聞いてくださいね。お兄ちゃん、早く並びましょう。ほかの皆さんはもう並んでいますよ。」

「あ、ああ、そうだな。」



 俺は、美優に促されて保護者と生徒が並んでいる列に並ぶ。



「………ん?うわっ!?」

「「ん?」」



 俺たちが並ぶと隣の方から驚いたような声が上がった。

 俺と美優は、首を傾げてその声がした方を見る。



「あ、天野じゃん。天野もこれに参加するのかよ。」

「あ、飯野くん。飯野くんこそ、これに参加するんだね。」

「ま、まぁな!」



 どうやらこのカッコイイ系の少年は美優の友達らしい。



「お、お前、この保護者参加型の種目、毎回嫌がっていたじゃないか。去年は出なかったし。でも、なんか今日はやる気だな。」

「もちろん!今日はお兄ちゃんが一緒だからね!」

「お兄ちゃん?」



 美優が俺のことを言うとその少年は、美優の横にいる俺の方を見た。



「上ヶ原陽一です。美優がいつもお世話になってます。」



 俺は、保護者として丁寧に挨拶をする。



「あ、どうも。俺は、天野の同じクラスメイトの|飯野光(いいのひかる)って言います。…………ん?陽一?どこかで聞いたことのあるような?」

「どうかしたの?

「あ、いや、なんでもないです。よろしくお願いします。」

「よろしくね。」

「光くん?今さっきから誰と話してる………の………っ!」



 飯野くんの自己紹介が終わると飯野くんの保護者らしき人が飯野くんに誰と話しているのか尋ねていた。

 ん?待てよ。今の声、どこかで聞いたことのあるような………



「っ!?優奈!?」

「陽一くん!?」



 俺が保護者の方に目を向けるとそこに居たのは優奈だった。



「2人とも、知り合い…………って、あ、そっか。陽一ってどこかで聞いたことのあるような名前だなって思ってたんだけど優奈姉ちゃんの好きな人か!」

「っ!?」

「光くん!?!?!?」

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