第65話 目覚めるとそこは
「………て………きて……………起きて!」
俺は、誰かが呼んでいるのに気づき重たい瞼をゆっくりと上げました。
するとそこに映ったのはもう今にも泣きだしそうな静香だった。
俺は、そんな静香を見て何が起こったのか思い出してきました。
そして、完全に思い出すとハッとなり起き上がる。
「と、父さんは!?」
「きゃっ……も、もう、急に起き上がらないでよ!」
俺が急に起き上がると静香は、可愛らしい声で驚いた。そして、急に起き上がった俺を注意するがその表情は少し嬉しそうにしていた。
だが、俺は、それどころではなく父さんがどこにいるのか周りをキョロキョロと見て探した。
だけど、そこに父さんの姿はない。それどころかここは、いまさっきまでいた俺の昔の家の中じゃないことにも気づく。
「ここ……どこ?」
「ここは、私の家。あんたが気絶してから私が家の人に連絡して一緒に連れて帰ってもらったの。」
「そうなのか。……ありがとな、静香。わざわざ看病してくれて。」
「べ、別に、あんたのためというわけじゃないわよ………お、お父様とお母様が見てやりなさいって言うから……仕方なく……」
静香は、顔を真っ赤にしながらそうボソボソと言う。
「まっ、仕方なくでも見ててくれたんだろ。それだったらお礼を言うのは普通のことだ。ありがとう、静香。」
「…………うん……」
静香は、少し恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに頷いた。
「ところで父さんは?」
「秀一さんなら私たちが車に乗った後、一人で帰って行ったわ。」
「そうなんだ………それで父さんは、なんか言ってた?」
「…………ううん……特にはなにも。」
静香は、少し戸惑った表情をしたがすぐに笑って何もないと言った。
俺は、それに少し違和感を覚えたがまぁ、いいかと思いそのまま流した。
「悪いな、ずっと寝ちゃって。すぐ帰るよ。」
俺は、そう言ってベットから立ち上がる。
するとその瞬間、激しい激痛に襲われてまたベットに座り込んだ。
「無茶よ。あんた、すごいボロボロだったのよ。もうちょっと自分の体を心配しなさい。それにもう時間も遅いから今日は泊まっていきなさい。この部屋、使っていいから。」
静香は、呆れがちにそう言うとはぁ、とため息を吐いた。
「は、ははっ、悪いな。面倒かけてしまって。」
俺は、苦笑してそう言った。
「別にいいわよ。だって………守ってくれたんだから………」
最後の方は下を向いて何を言っているのかよく聞こえなかったがまた聞くと怒らせてしまいそうだったので止めておいた。
「それじゃ、私、これで戻るけど……何か必要なものでもある?」
「いや、別に大丈夫だ。ありがとう。」
「ふん、別にいいわよ。」
静香は、そっぽを向いてそう言った。
全く、照れちゃって。
俺は、微笑しながら手を振って静香が部屋から出るのを見送った。
静香side
「はぁ〜、またあんな態度取っちゃった。何でこうなるのよ、私って。」
私は、今さっきのあのバカに対しての態度を悔いながら部屋に戻っている。
はぁ、いつか正直になれる時があるのかな。
秀一さんから言われたことだってあのバカには言えなかったし……まぁ、言えるわけないわよね。
「私とあのバカにはなんの繋がりもないただの赤の他人だったなんて………」
正直、今さっきもいつも通りの自分を演じていたけど………バレてないわよね?
陽一side
「ふぁ〜……」
俺は、朝、目を覚ますと体が痛くならない範囲で軽く伸びをする。
こんなに柔らかいベットで眠ったことが今までの人生であっただろうか。それほどこのベットの寝心地は最高だった。
そのせいでいつもよりだいぶ長く眠ってしまった。現在の時刻は、午前九時だ。
まぁ、今日も日曜で学校が休みなのでいいのだが……人の家でこんなに眠ってしまったら少し失礼だろうな。
俺は、そう思い激痛が走る体を無理やり動かし部屋を出て行こうと扉を開けた瞬間、俺の目の前に静香の姿が飛び込んだ。
「………あ………」
「………え………」
俺と静香は、一瞬固まってしまったがそれでもすぐに動いたのは俺の方だった。
「何だ、お見舞いに来てくれたのか?」
「なっ!べ、別に違うわよ!」
「なら、なんでここにいるんだよ?」
「うっ……」
俺が質問をすると静香は、答えられずにまた固まった。
「ははっ、答えられないってことは肯定と見ていいんだよな?」
「ち、ちが………ほ、ほら!朝ご飯を持ってきたのよ!」
静香は、そう言って俺に朝ご飯が乗せてあるお盆を差し出す。
「あ〜、そうなのか………ありがとう。もう戻るのか?」
「え………えっと………あ、朝ご飯の食器とか返してもらうのにまたここに来るのは面倒だし、食べ終わるまでここにいるわ!」
静香は、頬を真っ赤にしながらそう言った。
「はいはい……なら、なるべくゆっくりと食べようかな。」
「ふんっ!好きにすれば。」
俺は、静香の返事を聞いて少し笑みをこぼして朝食をゆっくりと食べていった。
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