第61話 探し物はどこですか?

 麗華と優奈との買い物をしてから約1週間が経過した。

 まだ今だに記憶は全く戻ってない。



「はぁ〜……もう退院してから約3週間くらいなんだけど全然戻らねぇな。」



 俺は、歩きながらポツリと独り言を呟く。

 もう一度、家にあるアルバムを見ようとしたんだが麗華に止められてしまった。また倒れるから止めて……と。

 あ〜、マジでなんだろうな〜。この頃ずっとモヤモヤとするし。

 記憶が改竄しているって事実を聞かされてからずっとモヤモヤとする。

 はぁ〜……たぶん昔出会ったあの女の子と関係があるのかもしれないけど……今、その子がどうしてるかも知らないし……



「そうだ!せっかく土曜で学校も休みだしちょっと記憶を取り戻すために夢で見ていた家へと行ってみるか。たぶんあれ、祭りのあとの話だと思うからそこまで遠くないと思うんだよな。」



 よし!そうしよう!

 まぁ、夢だからもしかしたらないっていう可能性ものあるのかもしれないが。

 でも、何も掴めないままこうしていても仕方ない。

 俺は、そう思いまずは、毎年祭りが行われてる場所へ向かった。

 ちょうど散歩をしていたのでその場所へはそこまで遠くなく5分くらいして着いた。



「さてと、ここから大変だな。」



 俺の夢だけを頼りにしてあの家を探さないといけないからな。でも、何故か分からないがあの女の子が出てくる夢だけはハッキリと覚えてる。

 あ〜、せめてあの家への帰り道も見せて欲しかったな。



「まぁ、ごちゃごちゃと考えても仕方ないしまずは適当に探してみるか。」



 俺は、そこから夢で見たあの家だけを頼りに探し回る。

 それから一時間が経過したがまだ見つかってない。それからまた1時間…さらに1時間……太陽が真上に昇った頃、俺は、一旦公園のベンチに座り休憩していた。

 家を探し始めてから3時間が経過した。

 あの場所から全方向調べたんだが全く見つからない。

 もう少し先の方を探した方がいいのだろうか?

 はぁ、無闇に探してもただ時間と体力だけが消費しそうだけど……それしか手段はないんだよな。

 よしっ!もう1回探してみるか!

 と、そんなことを思ってベンチから立ち上がった瞬間、ちょうど一週間前にも見た小さな女の子と目が合った。



「………あ」

「………あ」



 俺たちは、お互い目と目が合い、その場に硬直する。



「よ、よう、静香。」

「なんであんたがこんな所にいるのよ?」



 おっ、いつもなら色々と言って逃げるはずなのに今回は、あっちの方から質問してきた。



「まぁ、ちょっと思い出探しみたいなものだ。静香こそ、なんで1人でこんな所にいるんだ?」

「…………私もちょっと探したいものがあるのよ。」

「へぇ、そうなんだ。でも、1人でこんなところ歩いて大丈夫か?」

「ば、バカにしないで!もう10歳んだからこれくらい平気よ!」

「ははっ、悪い。」

「ったく………ねぇ、ちょっと私の探し物を見つけるの手伝ってくれない?」

「え?お、俺だって探し物があるんだけど……」

「別にいいじゃない。どうせあんたの事だしその探し物って今どうしても必要じゃないでしょ?」

「……ま、まぁ、そうだが………はぁ〜、分かったよ。俺が探しているついでに静香の探し物も探してやる。」

「最初からそう言えばいいのよ。」



 静香は、相変わらず上から目線だがまぁ、静香らしいと言えばそうなんだけどね。

 俺は、一旦自分の昔の家を探すことを止めて静香の探し物を一緒に探す。

 あの静香が俺に頼るくらいだ。相当大切なものなのだろう。



「それで静香の探し物ってどんなものなんだ?」

「物っていうか……家を探してるのよ。私の知り合いが昔住んでた家なの。」

「へぇ、そうなのか。」



 まさか静香も家を探していたなんてすごい偶然だな。



「たぶんここら辺にあるはずなんだけど……」

「どんな家なんだ?」

「えっと……なんか昔の家っぽい感じなの。屋根が瓦でここら辺の家にしては結構大きめの。」



 へぇ、なんか、俺が夢で見た家に似てるな……

 探し物が家と言い、その家が俺が探していた家と似てるなんてすごい偶然だな。



「あんたもここら辺で探し物をしていたんでしょ?そんな家、見てないの?」

「いや、見てないな。」



 だって、俺の探し物もそれっぽい家なんだからな。



「それじゃ、ここら辺じゃないのかしら?もう少し遠くへ行ってみましょ。」



 静香は、そう言って公園から出る。俺も置いて行かれないようにその後に続く。

 そして、少し遠くの方まで行き探しみるものの全くない。

 空は、もうオレンジ色に染まりそろそろ帰宅しないといけない時間になってきた。



「静香、今日のところはここで一旦止めよう。また、明日探してみようぜ。」

「……………はぁ、仕方ないわね。」



 静香は、少ししょんぼりとした顔をして諦めた。

 帰宅途中、静香が喉が渇いたと言って飲み物が欲しいと言うのでちょうど近くにあった自販機に寄った。

 その際、金を取り出そうとしたのだが手汗で滑ってしまい100円玉を落としてしまった。



「あ、やべっ!」

「全く、何してるのよ。」



 俺は、転がった方に行きその100円玉を拾う。

 すると今さっきまであったか分からないような家と家との間に細い道があった。

 俺は、それを見た瞬間、まだ頭痛に襲われた。



「っ!」



 俺は、思わず頭を片手を当て、もう片方の手を壁に当てて体をささえる。



「ど、どうしたの!?」



 静香がすごい不安そう表情で俺を見る。



「……い、いや……だ、大丈夫……だ……」



 俺は、頭痛が治まるのを待ち一旦深呼吸してもう一度目の前にある道を見る。



「…………この道……俺……知ってる?……」



 俺は、見たことのない道に既視感を覚えている。まるで昔、よく通っていたような……そんな気がする……



「……もしかしたら、この道に俺の探し物があるかも……」



 俺は、今すぐにでも行きたいという気持ちを抑え静香の方に向き直る。



「……悪い、ちょっと取り乱したな。ほら、もう帰ろうぜ。」



 俺は、そう言ってその道をチラッと見て帰ろうと歩き出す。

 すると俺の服の裾が引っ張られる。



「……あんたの探し物が見つかるかもしれないんでしょ?なら、行ってみましょう。」



 静香は、そう言って俺を引き止める。まさか、静香からそんなことを言われると思ってなかったから俺は、ほんの少し呆気に取られた。



「何、驚いた顔してるのよ。」

「……い、いや、まさか静香の方からそう言ってくれなんて思ってもなかったから……」

「ったく、失礼ね。今日は、ずっと私の探し物を探すのを手伝ってくれたんだからここでもし見つかるなら今回は私の方が手伝ってあげるわよ。」

「………あ、ありがとう。本当に助かる。」

「べ、別に、これくらいのことで感謝される覚えはないわ。」



 静香は、照れたようにフンと鼻息を鳴らしてそっぽを向く。全く、可愛いやつめ。

 それから俺と静香は、俺が見つけた道を通っていく。

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