第31話 綺麗だね〜海が!
「いや〜、綺麗だねぇ〜、海が!」
「そうですね、とっても綺麗ですね、海が!」
俺と和博さんは、水着に着替え静香たちより一足早く砂浜へとやってきた。
そして、俺と和博さんは、二人揃ってここから見える景色を堪能していた。もちろん綺麗なのは海ですよ!海!間違っても水着姿の女性だとは勘違いしないでね!
「そうねぇ、海は綺麗よねぇ?ね、あなた?」
「「っ!?」」
突如後ろから冷たく背筋が凍ってしまうようなそんな声が聞こえた。その声の主は、もちろん忍さんだ。忍さんの水着、すごい大人っぽくて綺麗なのにどうしてだろう。直視できない。ああ、そうか。たぶん俺、忍さんの水着を見るのが恥ずかしいんだ!そうだよな!
でも、なぜだろう。おかしいよ、夏だと言うのにすごい寒い。
「あなたは、もちろん海が綺麗と思ったんですよね?まさか、水着姿の女性が綺麗とか……思ってませんよね?」
「はい!もちろんであります!」
「ふふ、そうですよね。」
良かった、矛先は和博さんだけだ。
和博さんは、何か助けを求めているような目をしているが……ごめんなさい、俺には無理です。
「あれ?そう言えば静香は、どこにいるんですか?」
「え?今さっきまで一緒に居たんだけど……あ、あそこにいるわよ!」
「ん?あ、あそこですか。」
少し遠くにジャケットを羽織った静香が立っていた。
なんであんな所にあるんだろう?
そんなことを考えていると忍さんが静香のところへ行き説得してこっちに来させようとしたが全くこっちに来る気がなかったので忍さんは、静香を引っ張って連れてきた。
「全く、何恥ずかしがってんのよ。」
「お、お母様、わ、私のことは気にしなくていいって言ったじゃないですか!」
「はぁ、自分の娘を気にせず遊ぶ親なんていると思う?もし、そんな人がいるとしたらそれはその親が腐っているのよ。私は、まだそこまで腐ってなんかないわよ。」
「あ、あぅ、そうですね……」
「ほら、分かったならそんなジャケットは、早く脱ぎなさい!」
「そ、そんな!?い、今、ですか?」
「今に決まってるでしょ?今脱がなかったらいつ脱ぐのよ?」
「そ、それは……」
「ほら、早く脱いだ脱いだ。」
静香は、忍さんに流されるままジャケットのチャックを下ろす。
静香の水着は、白のワンピースだった。
そして、俺は静香の水着を見て目を見開いた。
……………この水着って……あの夢の中の……女の子が着ていたような………
いや、まさかな。
夢だから記憶が曖昧なのだ。
だからこそ、どんな水着を着ていたなんて覚えてない。
「…………」
「あら、陽一君、満更じゃないって顔よ。ほら、ずっと黙ってるし。」
「お、お母様!な、何を言ってるんですか!?」
「静香、すごい似合ってるぞ。お父さんも静香の成長した姿が見れて嬉しいぞ。」
「お父様の意見は聞いていませんので。」
「酷い!」
「ほら、陽一君も何か言ってあげて。」
俺がボッーとしていると忍さんからそんなことを言われた。
何か言ってって言われても……
「可愛いと思うぞ。よく似合ってるよ。」
「〜っ!ば、馬鹿じゃないの!私に似合わない水着なんてあるわけないじゃない!」
「ふふ、なら、なんで最初は自信なさげにジャケットなんか羽織ってたのかしらね〜?それに更衣室でも私に何度も似合ってるか確認しに来たし。」
「お、お母様!わ、私がそんなことするはずがありませんよ!な、何を言ってるんですか!?」
おやおや、照れちゃって。可愛いな。
でも、あの水着……もしかして本当に俺の夢に出てきた水着だったら……あの女の子って静香になるのか?
でも、俺は静香にあったのは今年が初めて……だよな?
ま、まぁ、俺の気にしすぎかな。
第一俺が昔、海に行ったことがあるってのも嘘くさいしな。
うん!あの夢はただの幻だったんだ!夢は夢だ!
「さてと、それじゃ、早速泳ごうか!」
「そうですね、ほら、静香も行こうぜ!」
「わ、私は、いいわよ!……泳げないんだから。」
「分かってるって。だから、そのためにわざわざ浮き輪借りてきたぞ!ほら、これを使ってまずは泳ぐ練習しようぜ!」
「い、嫌よ、浮き輪とか!は、恥ずかしい!」
「恥ずかしがんなって。ちゃんとこうやって手を握っててやるから安心しろ。」
「〜っ!き、気安く私の手に触れないで!」
「そんな怒ることないだろ。ちょっと前におんぶだってしてあげたんだぞ。手を握るくらいそんなに気にすんなって。」
「あ、あの時は仕方なくよ!今は、お母様がいるんだからお母様に頼るわ!」
「ふ〜ん、でも、そのお母様はもう和博さんと一緒に海へ行ってしまったよ。」
「え!?あ、お、お母様!」
静香は、遠くで和博さんと一緒に泳いでいる忍さんに声をかけるが全く聞こえてはなかった。
「ほら、こうやって喧嘩ばかりじゃせっかくの海が台無しだ。大丈夫、絶対に泳げるようにしてやる!」
「〜っ!ど、どうしてそんな根拠もないことが言えるのよ。」
「さぁな。」
「へ?」
「そんなの分かんねぇよ。でも、頑張らないと何も出来ない。まず必要なのは才能じゃない。苦手な事をやってやるっていう努力が必要なんだ。」
「………わ、分かったわよ。そ、その代わり絶対に手は離さいでね!絶対よ!」
「分かってるって!」
そうして俺は、静香に浮き輪をかぶせ一緒に海へと向かった。
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