第29話 明日は海に行くそうです
「………ん?……あ〜……」
「ようやく起きたのね。全く、起きるの遅すぎ。」
「………静香?」
ぼんやりとした景色の中に静香の顔が見える。
俺は、すごいだるい体を無理やり起こした。
「あんた、大丈夫なの?」
「ん〜、まぁ、ちょっとだるいけど。」
「なら、まだ横になってなさいよ。あんた、風呂に入り過ぎてのぼせたんだから。」
「あー、俺、のぼせちゃったのか。」
どおりで体がだるいわけだ。
「はい、これ水。ちゃんと水分とっておきなさい。」
「ははっ、なんか、静香、俺の母さんみたいだな。ありがとう。」
「っ!?か、勘違いするんじゃないわよ!今、お母様とお父様が少し出ているから私が代わりに看病してるわけ!ったく、風呂から待ったな状態で運ばれた時には何事かと思ったわよ。自分の体調くらい自分で把握しなさいよね。」
「ご、ごめん。ちょっと風呂場で考え事をしててな。それで時間が経つのも忘れちゃって気がついたらこの部屋で寝ていたんだ。」
「ほんと、バカね。それで考え事って何?」
「いや、別にそこまでの事じゃないから気にしないでくれ。」
「そう?まぁ、あんたの事情なんだから私は、あんまり介入しないけど。まだ水いる?」
「いや、もういいよ。ありがとう。」
俺は、お礼を言って静香に水が入っていたコップを渡した。
何だか、静香がものすごい優しいように思えるのだが……気のせいか?
そんなことを思っていると部屋のドアが開き和博さんと忍さんが部屋に入ってきた。
「あ、陽一君、起きた?具合はどうだい?」
「ちゃんと水分も取りましたから大丈夫です。すいません、変な心配させてしまって。」
「いや、気にしないでいいよ。たぶん陽一君がのぼせたのって僕のせいだと思うからね。」
「いやいや、そんなことありませんよ!俺が自分の体調を管理できてなかったからこうなってしまったんです。」
「ねぇ、あなたのせいってどういうこと?」
俺と和博さんが話していると忍さんと静香が不思議そうな顔をしていた。
「僕が一緒に陽一君とお風呂に入ってる時に少しなぞなぞを言ったんだ。それでたぶん陽一君は、そのことをずっと考えこんじゃったんだと思う。」
「なぞなぞ?もう、あなたが変なことを言うから陽一君が倒れちゃったじゃない。そういうことは部屋に帰ってからやってよね。」
「はい、反省しております。」
和博さんは、全てを明かすことなく忍さんと静香に伝えた。
でも、和博さん、何だか、忍さんの尻に敷かれているような……
「あんた、考え事ってこんなバカげたことだったの?なぞなぞとか小学生くらいよ、そんなことするの。」
静香は、少し呆れたような口調でそんなことを言ってきた。
小学生がそんなことを言うなよ。
「まっ、陽一君も結構元気そうだしそろそろ寝よう!明日は、朝から海へ向かうよ!」
「海ですか!?」
「ん?もしかして陽一君泳げない?」
「いえ、そんなことないです!海とかあまり行ったことがないので楽しみです!」
「そうかそうか。なら、よかった。あ、でも、静香は泳げないんだったよな?」
「なっ!う、うるさいわね!」
「こらこら、親にそんなことを言うんじゃない。なんなら俺が押してえあげるよ。」
「い、いいわよ!別に泳げなくたって。」
「はっ!?せっかく来たのに海にも入らず砂浜で砂遊びでもして帰るつもりか!?海に来たら泳がないと!それに苦手なことを苦手なままにしておくのは一番悪いことだぞ!苦手なことから逃げていくとその人の人生も逃げっぱなしになる!そんな人生でもいいのか!?」
「あ、あんた、泳ぎ一つで熱弁しすぎ。わ、分かったわよ。ちゃんと練習するわよ。」
「うんうん、分かってるならよし。」
「あ、でも、あんたに教わる気はないから。お母様、お願いできる?」
「え、ええ、いいわよ。……ごめんね、陽一君。」
「い、いえ、別に大丈夫です。」
ま、まぁ、俺も海とか初めてだから勝手がよく分からないから人に教えてる時間とかないし、別に断られたからってへこんでなんかないし!
「そういえば静香、水着すごい悩んで選んでたわよね。いつもはどれでもいいって言っているのに。今回は、誰かに見せたいのかしら?」
「お、お母様!?な、何を言ってるんですか!?み、水着を誰かに見せたいなんて思ったことありませんよ!」
「あらら〜?本当かしら?」
「ほ、本当です!」
「…………陽一君、褒めてくれるといいわね。」
「っ!べ、別に褒めて欲しいとかそんな………」
「あらあら、顔を真っ赤にしちゃって。我が娘ながら可愛いわね〜。」
「っ!お、お母様!」
何だか、あっちはあっちで盛り上がってるな。
俺と和博さんは、寝るために布団を引いている。
今さっきまでぐっすりと眠っていたら眠れるか心配だな。
「陽一君は、海が初めてとか言ったけど家族で旅行とかあまりしなかったのかい?」
「あ、はい、あまりありません。あったとしても父さんの仕事の関係上のことなのであまり遊んだりはしませんでしたね。」
「へぇ、そうなんだ。なら、明日は、思う存分楽しんでね。」
「はい、ありがとうございます。」
「それじゃ、明日に備えてそろそろ寝ようか。二人ももう寝るよ。」
「あ、うん、分かったわ。」
明日は、海か。
海………ん?なんか、結構前に誰かと海に来たことがあるような………まぁ、俺の勘違いだよな。
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