第21話 幼なじみの手料理は最高です

「あっ、いたいた。太輔、康介、待たせて悪いな。」

「ったく、何してたんだよ。待ちくたびれたぞ?」

「早く行こうぜ。麻美が早く来いって連絡が来てる。」

「まじか、早く行こうぜ。」








 俺たちは、待ち合わせをしていた駅から小走りで優奈の家へ向かった。

 時刻は、11時半。思いっきり俺が遅刻してしまった。

 後で優奈と麻美にも謝らないとな。









「ここが優奈の家だ。」

「へぇ、結構広いんだな。」









 俺は、優奈の家のインターホンを鳴らしドアを開けてもらう。








「待ってたよ。もう料理は出来てるから冷めないうちに早く食べよ!」

「優奈、悪いな、遅れてしまって。」

「ううん、どうせ陽一君のことだから寝坊するんじゃないかって思ってたよ。だから、ちょっと料理も遅めに作ったんだ。」

「本当に悪い。」








 俺たちは、優奈に案内されて家の中に入った。

 そこには優奈とは違いすごい不機嫌そうな顔をした麻美がいた。









「わ、悪い。遅れちゃった。」

「ったく、何してたの?もう12時になるわよ。」

「本当にすまん!寝坊しちゃってな。このお詫びはいつか返す!」








 俺がそう言うとみんな待ってましたとばかりにニヤリと笑みを浮かべる。

 そして、1番最初に発言したのは太輔だった。








「じゃ、俺、アイス奢ってもらおー!」

「俺もアイスで。」

「私もアイスでいいよ。」

「はぁ〜、私はアイスじゃ済まないんだけど今回はアイスで許してあげるわ。」

「く、くぅ〜……今月、色々あって金を使ってもうほとんどないってのに……この鬼!悪魔!」

「寝坊したのはどこのどいつだ!?」










 と、言うことで今回俺が寝坊して遅れてしまった件は、今度俺がアイスを奢ってやるということで解決した。

 うぅ……お金欲しい。









「ということでみんな!いっぱい食べて!」

「おおっ!豪華!」

「ま、麻美も手伝ったのか!?」

「私は、皿を出したり盛りつけをしたりしただけよ?なんか文句あんの?」

「いや〜、良かった。これで安心して食べれるな。」

「あんた、そろそろキレるわよ?ってかもうキレてるわ!」

「まぁまぁ、そう怒るなって。せっかくの料理が冷めちゃうぞ。」









 2人は、本当に仲がいいな。

 まぁ、そんな喧嘩を止めてみんなで食事を始めた。









「そういえば優奈の手料理って久しぶりだな。弁当でちょこちょこ貰ったりするけどこうやってご飯からおかずまで作ってもらうのって本当に久しぶりだな。」

「うん、そうだね。この頃家に来ることも減ったもんね。」

「まぁ、この前はケーキを食べに来たけどな。」

「そういえば2人って幼なじみなんだっけ?昔ならよく遊んでたの?」

「あ……うん……よく遊んでたよ。」








 あれ?優奈の歯切れが少し悪くないか?もしかして、昔俺と遊んでいたことをバレたくなかったのかな?









「昔の話だよ。まだまだ俺たちがガキの頃の話だ。だから、そこまで面白い話じゃないぞ。」

「え?……あ、えっと……」









 俺がフォローをするため全然面白い話じゃないと伝えると優奈は、少ししょんぼりした顔でオドオドしていた。

 あれ?俺の選択肢間違えた?









「………優奈、もうちょっとアピールした方がいいんじゃない?上ノ原、全くあんたの気持ちに気づいてないと思うんだけど?」

「………やっぱりそう思うよね?で、でも、これ以上は無理だよ。」

「お前たち、何話してんだよ?」

「ちょっとした女子会よ。それで話は戻るけど2人っていつから一緒なの?」

「え〜と、幼稚園の始めからずっと同じクラスだよな?」

「うん、そうだね。こんな偶然ってあるんだね。」

「確かにすごい偶然だよなぁ。でも、なんか逆に優奈と違うクラスになると違和感があるって言うか寂しくなるな。」

「っ!………そ、そうだね。わ、私も陽一君が居ないと……寂しい……な。」








 やっぱり、ずっと一緒だっんだからこれからも一緒がいいな。でも、いつかは別れる時があるんだろうな。

 そう思うとやっぱり寂しい。







「………良かったわね優奈。上ノ原、あんたと一緒じゃないと寂しいってよ。」

「………ち、違うよ。たぶん、陽一君、そんなつもりで言ったんじゃないと思うよ。」

「………まぁ、そうでしょうね、あの態度を見る限り。周りのみんな、ニヤニヤしてるのに言った本人が普通に食事してるのよね。」

「………陽一君は、そういう人だからね。」








 どうやらまた女子会があってるようだ。

 あっ、この唐揚げ美味い。

 みんな、全然食事しないでなんかニヤニヤしてばっかだけど全部食べていいのかな?








「………ねぇ、優奈。いっそ、陽一君に直接聞いてみたら?私のことどう思ってるかって。」

「………な、な、何言ってるの!?べ、別に私は、陽一君にどう思われてようと…ゴニョゴニョ」

「はぁ〜………ねぇ、上ノ原、聞きたいことがあるんだけど聞いていい?」

「ん?なんだ?」

「正直に答えてね?あんた、優奈のことどう思ってるの?」

「あっ!ちょ、麻美ちゃん!?」

「ん〜?どう思ってるかって?そりゃ、良い奴だって思ってるけど?」

「う〜ん、そうじゃなくて一人の女として見てどう?」

「ん?女として?………可愛いし、料理も上手いしいい奥さんになるんじゃないか?」

「〜っ!………そ、そっか。………えへへ」

「ん?この質問になにか意味があるのか?」








 みんなを見ると優奈は、頬に手をおきくねくねと動いている。他のみんなは、少し顔を赤くして水を飲んだりご飯を1粒1粒食べている。

 なんなんだ、これ?







「それより、お前らご飯食わないのか?俺が全部食べるぞ?」

「あっ!ちょっと待て!お前今さっきから食いすぎだ!」

「だって、お前らが全然食わないからだろ?」

「食うよ!お前のせいで全然箸が進まなかっただけだ!」

「なんで俺のせいなんだよ!?」

「やっぱり天然であれだったかぁ〜。」








 最後の麻美の発言は、意味がわからないがようやくみんな、食事を再開した。

 それからは会話を交えつつ食事をしていって結構な量あった料理は、全て食べ終えてしまった。










「それじゃ、デザートのケーキ持ってくるね。」

「あ、優奈、私も手伝うわ。」

「ありがとう、麻美ちゃん。」

「それじゃ、男どもは食べた皿を全部下げといて。」

「「「へーい」」」







 俺たちは、麻美に言われた通り皿を全て下げた。

 そして戻る頃にはもうデザートのケーキが用意されていた。

 今回は、チョコレートケーキだった。

 そんなものまで作れるなんてやっぱり優奈は、料理が上手いんだなって改めて思えた。

 俺たちは、テーブルの前に座りケーキを食べ始めた。








「美味しい!優奈、やっぱり料理上手よねぇ〜!羨ましぃ〜」

「麻美もこれくらい上手くなってくれたらな。」

「うっさいわよ。」

「麻美ちゃん、ありがとう。」

「………本当に感想を聞きたい人は、まだ手をつけてないみたいよ。」

「………ま、麻美ちゃん!?」

「ふふっ……上ノ原?どうして食べないの?」

「ん?ああ、なんか嬉しくてな。」

「え?嬉しい?」

「別に俺が作ったわけじゃないけど……優奈が頑張って作った料理やケーキをみんなが美味しいって言って食べるのを見ると俺もなんかこう、嬉しくなるんだよな。」

「ふぅ〜ん……だって、優奈。……優奈も言ってあげなよ。美味しいって言ってるところを1番見たいのは陽一君だよ、って。」

「……な、何言ってるの!?べ、別にそんなことは………」








 ん?俺、なんか変な事言ったかな?

 まっ、いっか。じゃ、俺も食べるかな。









「…………うん!美味い!」

「ほ、本当?」

「ああ、いつも言ってるけど優奈の料理は最高だぞ?」

「〜っ!あ、ありがとう。」








 俺と優奈のその会話をみんながなぜかニヤニヤしながら見ていた。

 何故だろう?

 その後、ケーキを食べ終え、ゲームや話をして気がつけばもう空は暗くなり始めていた。









「俺、麗華が心配するからそろそろ帰らないと。」

「それじゃ、私たちも帰る?」

「ああ、そうだな。」








 俺の一言でみんな帰る支度を始めた。

 それが終わるとみんなで家を出た。









「じゃあね、みんな。また学校で。」

「ああ、優奈、今日はありがとな。ご飯とケーキ、本当に美味かったぞ。」

「う、うん、そっか。良かった、ありがとう。じゃあね。」








 俺たちは、みんなで手を振りながら帰って行った。

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