第22話 夏休みをかけて必死です

「陽一君は、期末試験に向けてちゃんと勉強してる?」

「ふぅ〜ふぅ〜」

「じー」







 我々の通っている上ヶ原高校は、一学期に1度しか試験がない。なぜかと言うとそれは、一学期分の授業範囲を一気に試験する分、学生の勉強力を測ることがより正確になるからだ。勉強をしないものは点数が取れず赤点ばかり、中途半端な勉強をしても赤点スレスレの点数ばかりになってしまう。よってこの学校は、一学期は勉強をしないと楽しい夏休みを送ることは不可能なのだ!

 ………ということで








「優奈様!試験で出そうなところを教えてください!」









 俺は、試験期間に入ると何度もこうやって優奈に土下座をして試験の出そうなところを教えてもらう。

 去年の夏休みは、優奈のおかげなんとか無事に過ごすことが出来たが二学期からは、優奈から試験範囲を教えて貰っても俺の勉強しようという意欲が出ずからっきしダメだったのだ。








「はぁ〜、前、試験範囲教えても全く点数取れてなかったよね?」

「ま、前は、なんか勉強する気が起きなかったんだ。でも、今回は大丈夫!今回は、夏休みという大事なものがあるのだから!」

「………分かった、今回だけだからね。」

「あ、ありがとう!」

「はぁ〜、優奈、毎回それ言ってない?」

「静かに!せっかく優奈が見せてくれるのに!麻美、邪魔すんな!」

「なっ!?じゃ、邪魔ですって!?優奈!こんなやつほおっときましょ!こいつ、毎回優奈を頼りにし過ぎなのよ。そろそろ自分で勉強させることを教えてないとダメよ。」









 くそっ!麻美のやつめ。余計なこと言いやがって。

 優奈の方をチラッと見ると優奈は、困って右往左往していた。








「ゆ、優奈!頼む!見せてください!」

「わ、分かったって。」

「はぁ〜、優奈って本当に上ノ原には甘いんだから。」








 麻美は、やれやれと言った表情で離れて行った。








「それでいつから始める?」

「今日の放課後、どこかの図書館ではダメでしょうか?」

「うん、分かった。でも、私が教えるのは出そうなところだけでちゃんと勉強しないと点数は取れないんだからね。」

「分かってるって。この前の学年末もそれで赤点取っちまったからな。今回は、ちゃんと勉強するよ。」

「頑張ってね。」








 ということで今日から期末試験対策が始まった。

 期末試験まで残り10日。

 死ぬ気で勉強しないとちょっと危ないかもな。







「ここは、先生が必ず出すって言ってたところだよ。」

「分かった、マーク付けとく。」

「じゃ、次は、ここの応用を教えるね。」

「頼みます。」







 俺は、こう見えてやる時はやる男。絶対赤点回避してやる!

 それからは、昼休みと放課後を使って優奈に試験の出そうなところを教えて貰いそして、家では夜遅くまで勉強に励んでいった。

 優奈から習ったことの八割は、自主学習で使いこなせるようになった。









「陽一君、もうほとんど出来てるよ。これなら一回テスト形式で問題出してみよっか。」

「ああ、そうだな。なら、明日から頼む。」

「え?どうして?」

「どうしてってそんな急にテストが出来るわけないだろ?」

「ふふっ、私を誰だと思ってるの?陽一君とはもう何年も過ごしてるんだよ。このくらいのことはちゃんと今日までに出来るって分かってたよ。」








 優奈は、そう言いながら数枚ほどのプリントを出す。

 それらを見ると優奈が一から作ってくれたであろう試験に模してのテストだった。








「まさかこんなものまで作ってくれていたのか?」

「もちろん、私が手伝うって言ったんだから。」

「あ、ありがとう、本当にありがとう。」

「お礼は、試験でいい点数を取ってから言ってよ。」









 ということで俺は、優奈が作ってくれたテストを始めた。

 優奈のテストは、最初は簡単なところを出しておいおい応用などを使って難しくしている。

 本当の試験みたいだ。

 こんなものを作って優奈は、自分の勉強がちゃんと出来ているのだろうか。









「…………終わった。これでどうだ?」

「採点するから待ってて。」








 優奈は、今までやっていた自主学習を一旦やめて俺が終えたテストを採点してくれる。

 採点中は、俺もしっかりと自主学習をしなくちゃな。









「採点終わったよ。6割は出来てるよ。でも、やっぱり応用のところで変なミスが目立つよ。注意してね。」

「ああ、わかった。ありがとう。」

「ふふ、じゃあ、次間違えないように今、間違えたところを解説していこっか。」

「本当にありがとう。自分の勉強もあるのに。」

「ううん、別にいいよ。私が手伝うって言ったんだから。」








 本当に優奈は優しい。こんな俺にいつも優しく接してくれるのは本当に優奈くらいだ。

 俺は、優奈に深く感謝を心の中でしながらテストの解説を受けるのだった。

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