第18話 事情を聞きたくて

「………あの……俺って静香になにかしたのでしょうか?」

「………今さっきも言った通り陽一君は、気にしなくていいよ。」

「……ですが……」

「………ありがとう……」

「え?」

「……そこまで静香のことを気にしてくれて。やっぱり君は昔から………」

「ん?昔から?」

「いや、なんでもない。忘れてくれ。」

「………そうですか……」

「さぁ!もう戻ろう!みんな心配してるよ!」

「は、はい、分かりました。」








 俺は、それ以上何も聞き出すことが出来ず車に乗った。

 車の中でもずっと沈黙が続いた。

 静香は、こっちを見る素振りすら見せなかった。それどころかずっと窓の外の景色を見ていた。

 だが、何故だろう……一つだけ気掛かりがあった。

 それは………静香の肩が震えていた。

 なぜ震えていたのかは分からない。

 だが、俺にはそれをどうすることも出来ない。









「ただいま〜」

「おかえり、お兄ちゃん。」

「麗華、こんな夜中まで起きていたのか?」

「ちょっと目が冴えちゃっただけだよ。お兄ちゃんも随分遅かったね。」

「まぁな。俺はもう風呂に入るから麗華は寝なさい。」

「わ、分かってるよ。」

「あ、そういえば母さんは?」

「ああ、お母さんならもう寝てるよ。」

「まぁ、こんな時間だしな。ほら、麗華も早く寝なさい。」

「は〜い。」








 麗華は、俺に背を向け自分の部屋に戻った。

 もう時間は、11時。

 正直だいぶ眠たい。

 だが、さすがに風呂には入りたいな。








「はぁ〜……俺と静香の間に何があったんだろうな。」









 俺は、そんな疑問を抱きつつ風呂に入ってその後に眠りにつくのだった。








 そして、翌朝。

 朝起きて時計を見ると時刻は、朝の5時前。

 いつもより何故か早く目が覚めてしまった。

 まだ誰も起きていないだろう。父さんもこのごろずっと帰ってきてないし。

 ただ、こうやって寝てるのも時間がもったいないな。せっかく早起きしたんだから。










「久しぶりに散歩でもしてみるかな。」








 俺は、そう思い服を着替えて誰も起こさないように静かに家を出て行った。









「ん〜ん!やっぱりこうやって歩くのも悪くないよな。」








 昔は、結構早朝に散歩とかランニングをしてたんだけどなんでか知らないけどやめちゃってたんだよな。まぁ、俺が堕落したせいだろうな。

 この時期は、朝も暖かくていいよなぁ。

 だからかな、結構人がいるな。

 俺は、すれ違う人に挨拶をしながら行くあてもなく歩き続けた。








「う〜ん、やっぱりまだ少し気になるよな、静香のこと。」








 あの様子、明らかにおかしかったもんな。

 俺が静香に嫌われているのは分かっていたけどそれでも何回か話したりしたから少しは打ち解けたと思ったんだけど……俺の思い過ごしだったのかな?

 俺だけが静香と仲良くなったと思ったのかな?

 なんか俺、すごい可哀想な奴だな。








「ぁ……」

「あ……」








 そんなことを考えているとランニング中の静香にあった。

 ランニングをしていたせいか、頬には汗が流れていて息を少し切らしていた。








「よ、よぉ………」

「…………」







 俺が軽く手を挙げ挨拶すると静香は、そっぽを向いて走ってしまった。








「ちょ、ちょっと待てって!」









 俺は、その後を追いかける。

 さすがに10歳の小学生に負ける足の遅さではない。

 俺が難なく追いつくと静香は、顔を少し強ばらせてさらに早く走る。

 俺は、それに合わせスピードを少しあげる。そうは言っても大して変わってない。

 だが、静香にはそれがキツかったのかだんだんスピードが落ちてきて終いには膝に手を付き息をつく。










「はぁはぁ……あ、あんた、何で追いかけてくるのよ……」

「なんでって話があるからに決まってるだろ?」

「わ、私はないわよ、そんなの。」

「だけど俺は、あるんだよ。少しでいいから聞いてくれないか?」

「嫌よ。」

「頼む!この通り!」








 俺は、公共の場で土下座を披露した。

 今さっきも言った通り朝でも少し人が多い。なので必然的に俺に視線が注がれるのは当然のこと。









「ちょ、やめてよ!こんな所でそんなことするの!分かったわよ!少しだけならいいわよ!」

「本当か!?ありがとう!」








 俺は、頭を地面に何度もぶつけてお礼を言った。少し頭が痛い。








「も、もうやめてって!」

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