第17話 出てきた食事はとても豪華でした
「さぁ、遠慮せずに食べてくれ!」
今、俺の目の前には想像していた光景とは全く違うものが映っていた。
「どうしたんだい?本当に遠慮しないでいいよ。ここは全て私の奢りだからね。」
「は、はぁ……あ、ありがとうございます。」
食べていいと言われても……どう手をつけていいのか分からない。
だって、俺の目の前には……今までに見た事のない料理がテーブルにぎっしりに並んでいた。
俺以外のみんなは、慣れているのか素早くお皿におかずをとって食べている。
そんな中、俺はオロオロしていた。
「あ、もしかして嫌いなものがあった?」
「い、いえ、そんなことは無いんですが………どうやって食べていいのか分からなくて……」
「ん?どうやってって……普通に皿に移して食べてくれたらいいんだよ。」
う〜ん……考えてもしかたない。適当に取ってみるか。
俺は、肉料理であろう料理を皿に移して一口食べる。
「どう?美味しい?」
「っ!……お、美味しい……」
「ははっ、良かった。遠慮せずにいっぱい食べてくれ。」
「は、はい、ありがとうございます。」
料理は、本当に美味しかった。
だが……これ!絶対に高いだろ!たぶんあれ、写真でしか見た事ないがフカヒレなんじゃないか?それにあっちはキャビア………
俺にこんな高級な料理の味が分かるんだろうか……
そんなことを考えつつ料理を食べていく。
どの料理も美味しいのは美味しいのだが……どう表現すればいいのか分からない。なので全て美味しいで感想を片付けている。
「あっ、静香、頬にソースがついてるぞ。」
「え?どこ?」
静香は、自分の頬を触って確かめるが全く取れる気がしない。
「取ってやるからじっとしてろ。」
俺は、静香の頬についたソースを紙で拭き取った。
「………ありがとう………」
静香は、小さな声でお礼を言った。
うん、だいぶこいつも素直になったものだな。
「………二人とも、結構仲良くなったね。この前のデートが良かったのかな?」
「ぶっ!」
和博さんのその言葉に静香は、むせてしまった。
その後、静香は落ち着くために何度か咳をして水を飲んだ。
「お、お父様!そ、そ、そんなわけないでしょ!?こいつとはいつも通り仲悪いわよ!今日だってそんなに話さなかったでしょ!?」
「うん、確かにそうだね。でも、出会った頃に比べると比にならないくらいに仲良くなったよ。」
「うっ!…………た、確かに前よりは……ね………」
静香は、少し頬を赤らめて小さな声でそう言った。
へぇ、静香ってこういう可愛らしい一面もあるんだな。この頃、結構こいつの新しい一面を見れてるような気がする。
まぁ、前は話す時にすらそっぽを向かれていたしな。
「いや〜、上手くいっているようで嬉しいよ。この調子で簡単に結婚までいってほしいものだね。」
「さ、さすがにそれはーーー」
「無理よ!」
「「………」」
和博さんと俺は、静香のその無理という言葉に一瞬驚いた。
でも、分かっていたはずだ。こいつは俺の事なんか好きなんかじゃない。ただ、ほんの少し仲良くなっただけだ。
だが、無理と即答されるのは結構くるものだな。
「………静香、まだ気にしてるのか?」
「……………別に………」
「え?……あの、何か、静香は気にしてることがあるんですか?」
「………まぁ、少しはね。でも、別に気にしなくてもいいよ。」
「………そうですか………」
そこからは、なんというかすごい気まずい空気になってしまいせっかくの美味しい料理も味がわからなくなってしまった。
その後、何も変わることなくそのまま食事が続いた。いや、一つだけ変わった。誰も、何も喋らなくなったことだ。
そんな調子で料理を全て食べ尽くした。
「本当にありがとうございました。こんなに美味しい料理をご馳走してくださって。」
「いやいや、気にしないでくれ。こっちが誘ったんだから。」
俺は、会計を済ませた和博さんにお礼を言った。
ちなみに静香たちは、もう車に乗っている。
あれからというもの、静香は俺の顔を見なくなった。
車からこっちの声が聞こえることは無い。思い切って聞いてみるか。
「………あの……俺って静香になにかしたのでしょうか?」
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