第12話 いよいよ終盤です

 俺たちのデートスポット巡りは次で最後になっていた。

 もう日もだいぶ傾いている。

 さすがに夜中に幼女と二人っきりで街中を歩いていると勘違いされかねない。

 なので早く終わらせることにしよう。






「次はどこなの?」

「え〜っと、あの山頂の所にある休憩所みたいだな。」

「今度は山登り〜」

「これが最後だ。頑張ってくれ。」






 静香は、もう疲れたと言わんばかりの顔をしていた。

 まぁ、確かに俺も疲れてないといえば嘘になるがこれが最後だからな。まだ頑張れるってもんよ。

 俺たちは、それから山頂目指して山を登った。







「はぁはぁ」

「大丈夫か?」

「はぁはぁ……大丈夫よ。」






 静香は、もう息が切れていた。

 まぁ、今日は結構歩いたしこの時間帯の山登りは小学生にとってはキツイよな。

 だが、山頂まであと少し。

 ここで休んでも時間の無駄だからもう少しだけ頑張ってもらおう。







「静香、あともう少しだ。頑張ってくれ。」

「わかっ…てるわよ!」

「………おぶってやろうか?」

「はぁ!?何考えてるのよ!この変態!」

「へ、変態!?おまっ!せっかく心配してあげてんだからもう少し言葉を選べ!」

「うるさいわよ!早く行くわよ!」







 静香は、怒りをあらわにしながら山頂を目指す。

 俺もため息をつきながらその後について行く。

 それから数分後、ようやく俺たちは山頂へと到着したのだった。

 もう日も暮れていて結構暗かった。もう人も俺たち以外に一人もいなかった。








「はぁはぁ……ようやく着いたわね。」

「お疲れ。まずは休憩しようぜ。そこのベンチで座ってな。」

「え、ええ、そうさせてもらうわ。」








 静香は、本当にきつかったのか俺の言う通りベンチに座った。

 俺は、山頂にあった自販機で飲み物を二人分買う。







「ほら、飲み物だ。」

「え?あ、ああ、ありがとう。いくら?」

「金はいらねーよ!奢りだよ、奢り。」

「そう、ありがとう。」







 静香は、俺が買った飲み物のキャップを開けそれを飲む。

 俺も自分で買っておいた飲み物を飲む。

 それから少し時間を置いて






「もう落ち着いたか?」

「ええ、ありがとう。それじゃ、さっさと写真を撮りましょ。」

「ああ、そうだな。」







 俺と静香は、輝いている街を背景にして写真を撮る。

 よし、この写真を母さんと静香に送ってっと。






「はぁ〜、終わった終わった。」

「疲れた〜。」







 俺たちは、これで全てのデートスポットを巡った。

 ようやく終わったのだ。

 俺は、伸びをする。








「よし、帰るか。」

「ええ、そうね。」







 俺たちは、来た道をから帰る。

 帰りは暗く数メートルおきに置かれてる電灯だけが俺たちに帰り道を教えてくれる頼りだ。







「足元、気をつけろよ。結構大きめの石が転がってるからな。」

「大丈夫よ、それくら……っい!」

「って、おい!言ったそばから。」








 静香は、喋っている途中足元に転がっている石につまづき転んでしまった。

 俺は、転んでしまった静香に手を伸ばし無事かどうか確認する。






「大丈夫か?立てるか?」

「え、ええ……っ!」







 静香は、俺の差し出した手を無視して自分で立とうとしたが捻挫でもしたのか立つことが出来なかった。








「ったく、無理すんなって。」

「む、無理なんてしてないわよ……」








 涙目になりながら静香はそう言う。

 この調子ならたぶんどんなに痛くても自分の力で立って歩こうとするだろう。

 さすがに俺は、そんな子を見て見ぬ振りができるほどの畜生じゃない。

 俺は、静香に背を向けしゃがみこう言った。







「ほら、おぶってやる。」

「い、いいわよ。これくらい……っ!」

「バカか!これ以上無理してなんになるんだよ。いいから乗れって。」

「っ!だ、だから別に痛くなんて………」

「はぁ、そんな見え透いた嘘でをつくなって。いいから乗れ。乗らないなら無理やり俺が抱っこしてやる。」

「っ!………わ、分かったわよ。」










 静香は、渋々俺の背中に手を置き立ち上がりそして、俺の首元に手を回した。

 俺は、静香がちゃんと乗ったことを確認して立ち上がる。

 これでも一応毎日筋トレとかしているので力には自信がある方だったので静香を背負っても軽々立ち上がることが出来た。








「よし、しっかりと掴まっていろよ。」

「………ええ………」







 静香の消えそうなほど小さな声が俺の耳に入る。

 それからはずっと沈黙だった。

 俺は、ずっと足元に転がっている石に注意していたので話しかける余裕はなかった。静香からも話そうとはしなかった。

 そして、数十分かけてようやく山道を抜けた。









「ふぅ、なんとか無事に山道を抜けれたな。確か、静香の家ってここから近かったよな?」

「え、ええ、そうだけど、まさかこのままいくつもり!?」

「ああ、もちろん!けが人を歩かせるわけにはいかないしな。それにこんなに小さな女の子を1人で夜道を歩かせることも出来ないし。」

「………べ、別にいいのに………」

「またそんな強がり言って。お前が自分が幼いことを認めないことはわかってるが俺よりは年下なんだ。だからもう少し俺を頼ってくれ。年下の静香を守るのは年上である俺の役目なんだから。」

「………ありがとう………」

「どういたしまして。」






 俺は、それから静香を送るべく静香の家へ向かった。

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