第11話 変な目で見ないで!

 俺たちは、三つ目のデートスポットであるファミレスに着いて店員さんに案内された席に座った。






「で、このファミレスで何を頼むの?まさかこのファミレス自体がデートスポットなわけないわよね。」

「えーっと………な、なんだ、これ?」

「どうしたのよ?」

「いやメモに書いてあった注文がえげつないんだよ。」

「どんな注文だったの?」

「それは………『恋人のラブラブ甘々デート用セット』ってやつだ。」

「ぶっ!?ま、まさかそれ本当にやるの!?う、嘘でしょ!?」

「たぶんやらないと………」

「う、嘘でしょ〜。」





 俺は、仕方なく店員さんを呼んだ。





「す、すいません。こ、この……『恋人のラブラブ甘々デート用セット』をお願いします(((ボソ」

「はい?すいません、お客様、もう一度よろしいでしょうか?」

「〜っ!こ、この『恋人のラブラブ甘々デート用セット』をお願いします!」

「………はい?すいません、お客様、もう一度よろしいでしょうか?」

「だから、この、『恋人のラブラブ甘々デート用セット』をお願いしますって!」

「………………はい………」






 店員さんがどんどん引いている。





「……そ……それでは……少々お待ちを………」

「……は……はい……」






 店員さんは、去り際に俺をもう一度蔑みの目で見て去った。

 そして、数分後先程の店員さんがまずは飲み物を持ってきた。






「な、なによ、これ!?」






 俺たちの目の前に出されたのは大きなコップにオレンジジュースが注がれハート型の飲み口が二つあるストローが刺されたものだった。

 ま、まさか、これを飲ませるつもり?

 あっ、やべぇ。周りの客から変な目で見られてる。いや、もうこのファミレスにいる人全員に変な目で見られてるよ。

 母さん、俺の気持ち考えて!本当に!






「くっ!ほ、ほら、ストロー咥えろ。すぐに終わらせるから。」







 俺は、そう言ってストローを咥えいつでも写真が撮れるようにする。






「う、うぅ〜、早くしてよね。」







 静香も顔を真っ赤にしながらストローを咥えた。

 俺は、それを確認し、写真を撮った。








「ぷはぁ!お、終わったぞ。」

「はぁはぁ、もうなんで私がこんな目に………」

「まっ、とにかく終わったんだから、ほら、このジュース飲めよ。」

「あんたはいいの?喉乾いてないの?」

「心配してくれるんだ。」

「そ、そういうのじゃないわよ!」

「ははっ、まぁ俺はいいよ。水を飲むからな。」

「ふ、ふ〜ん、そう。」








 静香は、それで納得したのか再びストローを咥えオレンジジュースを飲む。

 俺は、その間に母さんに今の写真を送る。

 そしてその後、またとんでもないものが出てきた。







「今度もまたすげぇな。」

「え、ええ、本当ね。」







 出てきたものは、山盛りのフルーツパフェだった。








「こんなの、どう考えても2人で食いきれる量じゃないと思うんだが………」

「そう?女の子なら食べれると思うけど。」

「マジか。」

「でも、これは普通に食べれそうね。ってあれ?スプーンが一つしかないんだけど。」

「置き忘れたのか?」







 俺は、店員さんを呼び一つスプーンが足りないことを伝える。







「あの、スプーンが一つ足りないんですが?」

「それはひとつのスプーンでお互い食べ合うものと……なって…おりますので……」







 ああ、まただ。店員さんがどんどん引いている。店員さん、お願いだからそんな目で見ないで……

 店員さんは、俺たちにそう告げると一礼して帰って行った。







「………それじゃ、や……」

「らないわよ!」

「まぁ、そうだよな。んっ?なんか通知が来た。………はぁ〜。」

「どうしたのよ?」

「母さんがパフェの写真催促してきやがった。」

「ほ、本当にやるの!?」

「仕方ねぇだろ。」








 俺は、スプーンを取り生クリームのところをすくい、静香の口元へ寄せる。







「ほら、口開けて。」

「う、うぅ〜」

「は、早くしろよ!周りの人からの目がどんどんやばくなってる。ってか今どこからか通報って言葉が聞こえたんだが!?」

「し、仕方ないわねぇ。あ、あ〜ん。」






 静香は、俺がすくったパフェをパクッと一口食べた。

 俺は、その瞬間を撮った。








「よし、撮り終わった。」








 俺は、今撮った写真を母さんに送る。






「はぁ、あとは静香が食べていいぞ。」

「あんた本当にいらないの?」

「ああ、まぁな。俺、あまり甘いの好きじゃないからな。」

「ふ〜ん、なら、いただくわ。」







 俺は、静香にスプーンを渡した。

 静香は、スプーンを受け取ると山盛りのフルーツパフェを食べていった。

 そして、数分後。







「ごちそうさまでした。」

「や、やべぇ。あの山盛りのフルーツパフェをまじで全て食べやがった。しかも、こんなに早く。腹、大丈夫か?」

「全然大丈夫よ。」

「………ぷ、ははっ」

「むっ!何がおかしいのよ!?」

「いや、悪い。静香って甘いのが好きなんだなって思ってさ。」

「だ、だから何よ!?わ、悪い!?」

「いや、全然。でも、なんか可愛いなって思って。」

「っ!う、うるさい!」







 その後は、お勘定を済ませファミレスを出た。

 あのセット、2000円もしやがった。まぁ、母さんの金だけど。ってか、結局俺、何も食べれてないじゃん!

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