第2話 許嫁とあったのだが

「で、母さん、今どこに向かってんだよ!?」




 俺は今、母さんに無理やり家から連れ出され車で移動中だ。




「説明は、後でするわ。でも陽一、これから少し驚くことがあるけど全て事実な事だからね。」

「何それ!?超怖いんですけど!?」




 母さんは、それからなんの説明もしてくれなかった。

 え!?俺、ほんとうにどうなるの!?




 家を出てから1時間後。




「結構遠くまで来たね。」

「もう着くわよ。」




 車で移動中、少し先にすごい大きな屋敷がある。




「うわぁ〜、豪華だなぁ〜。こんな屋敷に住んでる人ってどんな人なんだろ?」

「………」




 あ、あれ?母さん、いつもなら俺の話に乗っかるのに今日は乗っからないな。

 なにか様子がおかしいぞ。

 そして、間もなくしてすぐに母さんは、こう言った。

 |あの豪華な屋敷の前で(・・・・・・・・・・)




「陽一、着いたわ。」

「………は!?」




 俺の目の前には、この車を待っていたと言わんばかりの大勢の人が出迎えていた。




「か、母さん!?何これ!?ジョーク!?ドッキリ!?ねぇ!そうなんでしょ!?」

「陽一、落ち着いて。ほら、降りるわよ。」





 母さんは、そう言って車から降りた。

 俺も仕方なく恐る恐る車から降りた。

 そして、スーツを着た強面のオッサンが俺たちによってきた。




「お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」

「遅くなったわね。あ、これ、車のキーね。」

「お預かりします。」




 な、何がどうなっているのやら。

 俺は、何も状況を把握することなく母さんと強面のオッサンについて行っている。





「って!待てててててていーー!!!」





 俺は、この場に流されず母さんと強面のオッサンを止めた。





「何がどうなってんだよ!?母さん、そろそろ説明してくれよ!?」

「……そろそろいいかもね。陽一、落ち着いて聞いて。」





 な、なに。今さっきから母さんの言葉が怖いんですけど!?




「陽一、私たち上ノ原家は、ここ武本家本家と分家の関係なの。」

「え!?ど、どういうこと!?ちょっと待って!脳が処理しきれていない。」





 本家と分家?

 この屋敷と俺たちの家が!?

 ………よく分からん!




「うん、よく分かんないけどこの家と俺たちの家がなにか関わりがあるってことはわかったよ。それで?俺を呼んだ理由は?」

「………陽一、良かったわね、あなたもこれで将来安定よ。」

「………は?何訳分からない事言ってるの?」

「陽一、あなたに……」





「あなたに許嫁ができたわ。」




 ………………?

 いいなずけ?イイナズケ?許嫁!?




「え!?許嫁!?ちょっ!何言ってんの?」

「大丈夫よ、相手、とても可愛い子だから!」

「いやいや許嫁ってことは、俺に家を継げってことだろ!?やだよ!そんなの!」

「………陽一、頑張りなさい。」

「そんなの兄ちゃんにさせればいいじゃん!俺より何十倍も頼りになるし!」

「………それは出来ないの。」

「なんで!?」

「………」





 え!?ほ、本当にどういうこと!?

 こういうのは、絶対に兄ちゃんの役割じゃん!俺より成績いいし、強いし、人望もあるのに!

 でも、母さんの様子を見るからに何か訳があるんだろうな。

 ………はぁ。仕方ない。




「………ま、もう決まったんだろ?」

「ええ、そうね。」

「まぁ、それなら仕方ないな。1回その相手に会うよ。」

「本当!?」

「ああ。」





 俺がそう言うと今まで黙っていた強面のオッサンが俺たちに近づきこう言った。




「話が着いたようですね。それでは案内を続けます。」





 俺たちは、再びこの屋敷の中を歩いた。

 そして、ある1つの襖の前で止まった。




「着きました。」

「陽一、ここにあなたの許嫁がいるわ。」





 うわ!さすがに緊張するな。

 母さん、今さっきかわいい女の子って言ってたからちょっと楽しみ。

 そして襖が開かれその室内に大きなテーブルがあり、その真ん中に座っていたのは………





「小学生?」





 俺の目の前に居たのは、和服に身を纏ったとても可愛らしい小学生の女の子だった。





「ねぇ、母さん、俺の許嫁ってどこにいるの?」

「目の前にいるわよ。」

「ははは、ご冗談を。」





 さすがに小学生はないっしょ。

 あートイレにでも行ったのかな〜?

 俺は、母さんがテーブルの前に座ったので俺も同じように隣に座った。ちょうどその小学生の女の子と対面する形になってしまったが。





「陽一、現実を受け入れなさい。」




 母さんは、まだ俺におかしな冗談を言ってくる。




「………」

「陽一、現実は目の前にあるわ。」

「………おっかしいだろ!?何が現実なの!?もう高二にもなる男に小学生の女の子と結婚させようとしてんの!?俺!捕まっちゃうよ!?世間からロリコン認定されちゃうよ!?」





 俺がそこまで言うと目の前にいた幼女が立って俺を睨みこう言った。





「私は、もう立派な大人よ!」





 その幼女がそんなことを言うと周りが一瞬にして静かになった。

 だが俺は、あえて言わせてもらう。





「もう立派な大人だァ!?お前、何歳だよ!?」

「10歳よ!なにか文句ある!?」

「あるよ!大有だよ!10歳の幼女と結婚させられそうになった俺の気持ちを感じて欲しいものだよ!」

「なっ!また幼女とか言って!私こそこんな失礼な男と結婚なんてしたくないわよ!」

「ああ、そうか!それならお互いの意見が合致したんだしもう要件は済んだよな!」

「はっ!?陽一、あんた何言ってんの!?」

「あっちも俺の事嫌なんだし別にいいじゃん、結婚なんかしなくて!」

「陽一が失礼なこと言うからでしょ!?ほら、早く謝りなさい!」

「嫌だよ!」




 そこまで言うと俺たちが入ってきた襖と反対側にあった襖が開いた。

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