第2話

その奇妙な音が、俺がこの部屋に越してきてから一ヶ月ほどの間、毎晩聞こえてくるのだ。


大家に相談しようかとも思ったが、とりあえずはやめておいた。


完全に無視できるほどの音量ではない。


しかし騒ぎ立てるほどの大きな音でもないのだ。


――なんなんだろうねえ、いったい……。


そんなある日、俺は気付かなくてもいいことに気付いてしまった。


普段の生活において、仕事から帰って夕食などの買い物をすませると、それから外出することなどない俺だが、その日は喉の渇きを覚えて何か冷たいものでもと冷蔵庫を探ってみたが、そこには飲料できるものなど何もなかった。


――アパートのすぐ傍に自動販売機があったな。


部屋を出ようとしたとき、隣からあの聞き飽きた音が聞こえてきた。


俺は舌打ちをし、そのまま部屋を出た。


そしてペットボトルを買い、部屋に戻ろうとしたときに、ふとアパートの三階を見上げた。


出入り口とは反対側の、唯一窓があるところだ。


俺の部屋には当然のことながら灯りが点いている。


今は午後九時だ。


しかし音の発生源である隣の部屋には、灯りが点いていなかったのだ。


――えっ?


カーテンは閉まっていた。

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