暗闇で音がする

ツヨシ

第1話

音がする。


隣の部屋から。


もともと格安のボロアパート。


壁が薄いなんてしごく当たり前のことだ。


だから音が聞こえてくること自体はある程度諦めもつく。


しかしそれが毎晩なのだ。


音が始まる時間は決まっていない。


早いときは午後七時ごろから。


遅いときは午後十一時ごろから。


音が続く時間も決まってはいない。


短いときは五分くらい。


長いときは三十分くらい。


しかも何の音なのか何度聞いてもまるでわからない。


人が歩いている音ではない。


何かを引気ずる音? 


いや違う。


家具などを動かしている音にも聞こえない。


それに毎晩家具を動かす人間なんて、少なくとも俺は聞いたことがない。


強いて言えば、重たくて硬くて転がすことが出来るものを転がしている音。


これが近いかもしれないのだが、微妙に違うような気もする。

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