彼女との関係は秘密の秘密

璃央奈 瑠璃

1

 なんか暖かい。

 目が覚めて最初に思ったことだ。

  腕枕で安心しきって寝てるまゆの顔を見たらもっと暖かくなった。いや、事後じゃないからな。そこは厳しい判定だからな!

 まあなにも知らない人が見たら完全に事後だが。まゆは俺のぶかぶかのTシャツを着て、下着が見える寸前になっているし。

 俺がまゆと一緒に眠った理由を語らなければならないだろう。


 あのとき


 俺は迷わずまゆを追いかけた。なんだ、答えはもう出てんじゃん。美姫と重ねた時間の長さも、あれだけストレートに思いを告げてくれたみうより、俺はまゆが好きなんだって。心も身体も傷だらけのまゆが好きなんだって。


 だから伝えよう。まゆに俺の気持ちを。


「まゆ!」

後ろから声をかけた。びっくりしたのか身体がビクッとなった。なのに振り返ってくれない。

「まゆ!」

やっぱり振り返ってくれない。

こうなりゃ力ずく振り向かせてやるって思って肩に手を置いたとき。――まゆが泣いていた。

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」


 また、まゆは謝って泣いていた。


 まゆの前に立ってそのまま、まゆを思いっきり抱きしめる。それでもまゆは泣いている。

 それが悲しくて、でも言葉でも伝えなければいけない。


「まゆ。俺は世界で1番まゆが好きだ」

耳元でささやくように。まゆの心に染み込ませるように。

 

「そんなことありえないよ…………。貴方は同情して追いかけてきてくれただけじゃないの?」

珍しくまゆは強気だった。

「誰が同情で女を追いかけるもんか。

まゆ。

おれはおまえが好きなんだ。

美姫よりも、みうよりも。おまえが好きなんだ!」

 そのまままゆが俺に寄りかけてきた。そのまま抱きしめるのもありだけど。俺はまゆに怪我をさせないようにしながら道路で倒れ込んだ。むせび泣くまゆ。

 でも俺は。世界で1番の宝物をぎゅっと包み込んだ。


これがあれば絶対負けない。

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彼女との関係は秘密の秘密 璃央奈 瑠璃 @connect121417

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