第10話
その板は、石盤のようでなんとも古めかしい。
ただ大きさが日本でいうタブレットで、美羽は少しだけ親近感を覚えた。
「....iPad」
「アイ...?...はい?」
「いえ、なんでもないです」
ボソリとした呟きを隣にいたオルガが聞き逃さなかった。
波瑠は慌てて首を横に振りはぐらかす。
オルガはトントンと背中を叩いた後石版を指差した。
「あれはステータスメーター。触れた物のステータスを見る事ができる魔法道具です。この国では5歳になるとステータスを一定部分開示する義務が生じるのですが、その時に使用します」
「それで私のステータスを見るって事ですね」
頷いたオルガは再びトントンと背中を叩く。
何故か褒められているようで波瑠は少しだけ嬉しくなった。
ステータスメーターを持ったまま目の前に来たのはノーマン。
目の前に来てわかったがこの人身長が高い。
180cmくらいある気がする。
ギリギリ160cmの波瑠にとってびっくりする。
そういえば、オルガやジハルも180cmくらいありそうだ。
1番身長が高いのはフォーマ。
1番自分に近いのはガルダンだが、170cmはあるだろう。
この国の人はみんな身長が高いのだろうか。
「さて、ここ波瑠に聞きたい。どこまで情報開示する?」
「え?」
一瞬自分の思考の中にいた波瑠はハッとして目の前のノーマンに視線を向けた。
ノーマンは波瑠の反応に言及せず話を続ける。
「本来、自分のステータスは自分だけのものだ。知られ過ぎる事は良いことばかりではない。ただ、君のその能力が使えない状態を垣間見るとどこに原因があるかわからない。出来るだけ開示して問題を追及するべきだと我は思う。」
「....そうですね」
波瑠はうーんと小さく唸って少しだけ考える。
そして意を決したように顔を上げてノーマンに笑顔を向けた。
「私のステータス見られるだけ全部見てくださって構いません」
「!!」
その反応にそこにいた全員が目を丸くする。
オルガが背を屈めて波瑠に視線を合わせた。
オルガの金色の瞳が揺れていて少し慌てたような印象だ。
「波瑠、それは」
「良いんですオルガさん。この世界のことよくわかっていない私に親切に教えてくれた皆さんなら悪いようにはしないと思いますし、ノーマン....殿下、に関してはこの国の偉い人じゃないですか。それに、今後自分の生き方が決まって来ますのでそのステータス内容の事も色々教えて貰いたいのですべて知っててくれる人がいるのはとても心強いです。」
「しかし....」
それでも腑に落ちないような表情を浮かべるオルガ。
波瑠はその判断を捻じ曲げないという意思を込めてにこりと微笑んだ。
「オルガさんにならステータスを全て見られても大丈夫です」
「ッ!!」
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