第9話


 リセッタ王国王都へは早馬で3日かかった。

 転移魔法なり魔獣などを使って移動する事も可能らしいが、今回はシーズル国の動向を知るためのものだったので隠密な動きが必要であったらしい。よくわからないが、魔法を使うときに生じるエネルギーを感知される可能性があるとか。

 ちなみに、「箒に跨って空を飛ばないのか」と聞いたら「何言ってんだこいつ」と言う顔をされた。



「それでもオルガさまを連れて行くって話になった時はびっくりしたっすけどね」

「....ちょうど殿下に口煩くしていたもので」

「あー....」

「追い出されたって事っすか」



 道中三人は色々な話をしてくれた。

 オルガさんは次期宰相で、今は仕事の傍らリセッタ王国皇太子殿下であるノーマンという男に仕えているらしい。

 ガルダンとフォーマはノーマンの近衛騎士。そして王国騎士団団員として王城で働いている。

 今回のシーズル国への視察はノーマンの指示であったようだ。

 そして今波瑠達は王城に入城し、そのノーマン殿下と、ガルダン達の上司であるジハルという人の元へ向かって歩いている。




「ノーマンって人はどんな方なんですか?」

「とても優秀ですよ。第三皇子ではあるのですが次期国王と支持を集めています。まぁ本人はその気が無いようですが」

「ノーマン、オルガ、ジハルは三種の神器って言われています」

「三種の神器...」


 家電か!と心の中でツッコミをいれる。

 いや、そもそも三種の神器は神話に基づく神器だから家電のツッコミも大概だが。

 もにょもにょと1人で考えていると大きな扉の前に到着した。

 扉の両わきには刀を持ったまま微動だにしない男達がいる。

 フォーマ達のお仲間なのだろうか。

 チラリと見ていたらギロリと睨み返された。

 怖い。


 オルガがドアノブでドアを叩く。


「殿下。オルガ・フロスト、以下3名です。入室の許可を」

「入れ」


 室内から声がかかりドアが開く。

 まさかの自動ドアだ。これもきっと魔法だろう。

『謁見の間』と称されたその室内は厳かか雰囲気をまとった広々とした室内だった。

 波瑠の知る知識で当てはまるなら学校の校長室、または病院院長の院長室や社長室の中世版みたいな。

 まぁ、どれもテレビでみた事しかないからわからないけど。



「やぁやぁお帰りオルガ。」



 その謁見の間に置かれたテーブルの向こうで男がニコニコとこちらを見ていた。

見惚れるくらいの金髪。白銀色のメッシュ部分は三つ編みで編み込まれていた。

瞳はエメラルドグリーンで目が離せないくらい綺麗だ。

優雅な出で立ちで王座のような豪華な椅子に座っている。....座っているだけなのに気品と言うか、....なんか凄い(語彙力)。

この人がノーマン・リセッタ。

波瑠は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

そんな波瑠の様子にノーマンは優しく笑いかける。



「君がセトカワハルかな?」

「は、はい。はじめまして!」



失礼になるかわからないが、一応日本のマナーとして身体を曲げ、お辞儀をする。

そのことにノーマンはクスクスと笑った。



「元気だな」

「いや、実はそーでもねえっすよ。ノーマン殿下」

「道中何度も貧血を起こしたり気絶したりしています」

「ほーう」



ガルダンとフォーマが遠い目で上申する。

そうなのだ。三日間のうち何度も、ええ何度も倒れてしまった。

本当に申し訳ない。

だが、早馬で3日だ。それ以前に夜中森を彷徨っていた。

疲労困憊なのは致し方ないと許して頂きたい。



「オルガに言われた通り準備しておいたよ。....ジハル」

「はっ!」



ジハルと呼ばれた男がさっと一礼して1つの板をオルガに手渡した。

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