第7話
それから波瑠は3人にこの1ヶ月の事を話した。
自分は地球という星の日本という場所から来たという事。
勝手に異世界に召喚された事。
ククル皇太子殿下にお会いした事。
魔法が使えなかった事。
そのせいで森へ捨てられた事。
さらに殺されかけた事。
話をすればするほど壮絶だ。
そしてそのことは聞いている3人も同じ気持ちのようで、どんどん眉間のシワが深くなる。
波瑠が話し終えると、深いため息をついたオルガが口を開く。
「どうやら諜報員の話は間違いでは無かったようですね」
「諜報員?」
聞きなれない単語に波瑠は首を傾げた。
少しだけ胸を張り自慢げな《どや》顔でガルダンが言う。
「国とか偉い人の命令で秘密裏に動いて他国や敵の情報を探るって事だな!」
「スパイって事ですね」
「スパイス?」
チグハグな会話にオルガとフォーマは呆れ顔だ。
その空気を払拭するようにオルガが話を再開する。
「詳細は省きますが、シーズル国で不審な動きがあると、それもどうやら国際禁止法で禁止されている異世界人の召喚を行なって成功したらしいという情報を掴みまして。今回私達はその確認と周辺地域の調査に来たのです。」
「まさか召喚が事実で、その召喚された本人に遭遇するとは夢にも思わなかったがな」
確かにそうだ。
シーズル国の(厳重な監視下で)いるだろうと思っていた異世界人が、あんな森に一人でいるなんて誰も思わない。
それよりも波瑠は気になることがあった。
「異世界人の召喚って禁止されてるんですか?」
波瑠の質問に3人は頷き肯定の意を返す。
「時々あるんだよなー!異世界から飛ばされてくる人間!!」
「そしてその人間はこの世界にない知識を持ち大きな能力に秀でている。その希少価値や見目の違いもあり、利用し酷い扱いをする国もある」
「あなたが召喚されたシーズル国はその1つです。彼らは異世界人の力を利用して他国を制圧する算段を常に考えています」
3人はそれぞれ丁寧に話してくれた。
そこで自分の身の上を自覚して身震いする。
自分にシーズル国が望むような魔力があったとしたら、使われ方によっては戦争を起こす事になりかねなかったのだと。
「魔力が無くて良かったかも」
「いえ。それはありえません」
「え?」
否定したのはオルガだ。
オルガは波瑠の手をぎゅっと握る。
突然の事で波瑠の体は硬くなった。
それに気づいていないのか、オルガは瞳を瞑る。
ゆっくり一呼吸。
それくらいの時手を握られたのち再び解放される。
「しっかり鑑定してみないとわかりませんが、あなたの中には確かに魔力があります。私と同等....いえ、それ以上と思ってもいいでしょう」
「は!?」
オルガの言葉に驚きの声をあげたのはガルダンだ。
その隣のフォーマも口を少し開けて戸惑っている気がする。
「それに貴方と会話ができることを考慮しても、"言語翻訳"のスキルは確実にあるでしょう。それも上位の。」
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