第6話



「失礼しまーす!!」



 バタバタと足音が近づいてきたと思うと再びテントの扉が開き真っ赤な彼が入ってきた。今度はちゃんと声かけがあった。

 そしてもう1人見覚えのある男性が入室してきた。



「ご気分はいかがですか?」



 目の前の青年が椅子から立ち上がると今度はそこに銀髪の彼が座る。



(この人、あの森で金平糖を分けてくれたあの人だ。)



 見知った顔を見つけて、波瑠は少しだけ肩の力が抜けた。

 男が手に持っていたトレイを波瑠に差し出す。そこにはシチューのような野菜たっぷりのスープと丸パンがのっていた。


「朝食です。いかがですか?」

「....ありがとうございます」



 躊躇しつつ受け取ると銀髪の人は表情を変えずに頷いた。

「いただきます」と手を合わせて食前の挨拶をする。スプーンを手に取りシチューから。出来立てなのかちょっと熱かったがホクホクとした野菜達が空腹の胃袋を満たす。

 波瑠は思わず笑顔になった。



「美味しいです」

「それは良かったです」



「申し遅れました。わたしの名前はオルガ・フロストと言います。身長の高い方がフォーマ。そして赤いうるさいのがガルダンです」

「んで!?お前は誰なんだ!?」



 食事を一通り済ませた波瑠を見計らって、ガルダンが口を開く。

 オルガの隣に来るとベットに両手をついて上半身をこちらに近づけた。

 思わずびくりと体を揺らす。


「こらガルダン」

「だってオルガさま!シーズル国の国境くにざかいに女1人でいるなんてありえないでしょー!迷子か夜逃げか、それか魔女かって話っすよー」

「ガルダン」


 静かに制止の意を唱えるオルガはふたたび波瑠に視線を向けた。

 波瑠は慌てて背筋を伸ばす。



「こちらこそ挨拶が遅れてすみません!私、瀬戸川波瑠と言います。訳あって森へ捨てられまして、追ってから逃げていたんです」

「セトカワ?」

「捨てられた....」

「追ってから逃げた!?」



 波瑠の自己紹介に3人は各々反応を見せた。

 昨日森で話をしたためオルガは名前に反応をしている。

 後の2人はやはり物騒な単語に反応をしたようだ。



「お前何やらかしたんだよ」

「えっと。何をやらかしたというか....何もやらかさなかったと言うか」

「はぁー??」



 オルガが波瑠の言葉に意味がわからないと頭をかく。その一方でオルガとフォーマは何やら真剣な顔で考え事をしているようだった。

 思案の後オルガはゆっくりと波瑠に向き直る。




「ハル殿。もしかして貴女は異世界からきたのではないですか?」



 オルガの問いに今度は波瑠が驚く番だった。

驚いた事で何も答える事が出来ない波瑠だったがその様子から肯定と受け取ったようだった。





「やはりそうですか。」



 はぁとため息のような息を吐き出したオルガは波瑠が食べ終わったシチューのお皿を受け取った。



















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