「強制猥褻罪」〜 最高裁の判例変更


「表現の自由」についての議論に派生して、平成29年(2017年)に最高裁の判例変更があった「強制猥褻罪」について書く。最高裁の判例変更が「表現の自由」に制約を与え、表現者に影響を与える可能性はあるだろうか。


強制猥褻罪についての刑法条文、罰則については以下参照。



 昭和45年(1970年)の最高裁判例では、強制猥褻罪の成立には「犯人の性欲を興奮させたり満足させる性的意図」が必要として、報復目的での猥褻な写真撮影で、同罪に問われたケースを「無罪」としていた。平成29年(2017年)、知人から借金する代わりに13歳未満の女児の体に触れる様子を写真撮影をした今回のケースでは、最高裁で同罪の成立を認め、約半世紀ぶりに判例変更された。


 犯人の性欲を興奮させたり、満足させたりする性的意図なしの写真撮影が罪に問われるということは、医療行為や家族撮影の着衣なし幼児の記念写真なども同罪の成立が可能になる懸念が指摘される。芸術表現としてのヌード、妊娠記念、セルフポートレートなどの写真の撮影の「猥褻性」、「表現の自由」に関連してくる。


 実際は欧米諸国ではすでに、幼児に対する家族間の記念撮影でも「着衣なしの写真」は社会通念上、好ましくないことと思われているので、気軽に撮影することはない。日本はこの点では甘く、児童ポルノ輸出国となっている。




 強制猥褻罪が「犯人の性欲に関連する性的意図なし」でも成立する影響は、操作や司法の現場では今のところは限定的ではあるが、拡大解釈されれば、「表現の自由」が上記最高裁判例の変更に伴い、安易に制約され、規制に拍車がかかり侵害される流れになりそうな大きな懸念がある。



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参考


最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)上告審判決 平成29年(2017年)11月29日

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