第26話 宮廷魔術師

 月日はあっと言う間に流れて行き、もうすぐ学園を卒業する日が近付いて来た。


「宮廷魔術師ですか……?」

「王様直々のお話しよ。断ったりなんかしたら私、先生続けられなくなっちゃう……」

「それは脅されて?」

「貴族に目を付けられて居場所が無くなるのよ。王都にも住めなくなるかも……」

「めんどくさい世の中ですね……」

「ジュース君お願い! 宮廷魔術師の話、受けてちょうだい!」

「ビスト先生のお願いですし、分かりました。宮廷魔術師になります」

「ありがとー! 大好きチュッチュッ!」

「いくら夫婦だからと言って学園ではそういう行為は控えましょうね」

「あなたがそれを言いますか……はぁ……」


 卒業式は恙無く行われ、卒業生代表としてリンド君が答辞を述べた。

 リンド君の答辞で涙する卒業生や保護者の方たち。

 一方、俺はというと、学園で過ごした記憶がアマテとイチャラブしていたぐらいしか残っておらず、話の内容が右耳から左耳へと素通りして、退屈しのぎに魔法で惑星育成シミュレーションをプレイしている。

 隣にいたアマテがそれを見て食い付き、遊ばせてみると隕石ばかり落として惑星を滅茶苦茶に破壊するのが気に入ったらしく、どの大きさ、どの角度で隕石を落とせば惑星が綺麗に真っ二つになるのか試行錯誤しているうちに卒業式は終わりを迎えた。


「卒業おめでとうみんな! 全員無事に卒業出来て先生とっても嬉しいわ!」

「先生泣かないで!」

「うぅ……だって、みんなとはもう授業出来ないんだなって思ったら、ぐすっ……泣いちゃうよ……」

「先生! 今までありがとう! すごく楽しかったよ!」

「私も! 先生が担任で本当に良かった!」


 先生、先生、とクラスメイト達に囲まれ、花束を受け取り号泣するビスト先生だった。



「「「結婚おめでとうございます!」」」


 卒業式の後、学園長の粋な計らいでビスト先生と学園で結婚式を挙げ、クラスメイトや関係者達に盛大に祝われ、初夜を迎えた。


「先生、初めてだから、優しくしてね?」


 めっちゃ優しくしてあげた。

 ビスト先生は可愛い声をあげて満足してくれたようだ。



 そんなこんなで一週間後。


 俺は宮廷魔術師になるべく特使さんに連れられ王城にやって来た。

 王都に初めて来た時の特使さんと同じ人だったが、少しハゲていた。

 増毛魔法をこっそり使ってあげた。


「王様に謁見後、簡単な試験を受けてもらい、合格すれば宮廷魔術師としてジュース殿を雇うという流れだが、くれぐれも王様には失礼の無いようにお願いする」

「承知しましたでございまする」

「無理に敬語を使わんでも良い」

「今のはちょっとしたジョークでございます。緊張も解れた所なのでさっそく行きましょうか」

「本当に頼むぞ?」

「大丈夫ですよ。その辺はちゃんと弁えてますって」


 王城に初めて入ったが広いし、でかいし、さすがに王都の中心。王の住まう城塞なだけはある。


「王様、連れて参りました」

「うむ、下がって良い」

「はっ!」


 王様の居る謁見の間は煌びやかで、本当に綺麗な装飾を施されていた。

 あの額縁だけでいくらぐらいするのだろうか?


「面を上げよ、ジュース殿。貴殿の噂は予々聞き及んでおった。儂の要望に応えてくれた事、誠に感謝する」

「はっ! 有り難き幸せであります!」

「うむ。試験に合格出来るよう幸運を祈る。下がって良いぞ」

「ははっ!」


 謁見の間から退出し、待っていた特使さんに連れられ、試験会場へと向かった。


「では、私はここまで、ジュース殿の幸運を祈っております」

「ありがとうございました。同僚になれるのを俺も楽しみにしてますよ」

「ははは、それは勘弁願いたい。部署も違うしな」


 試験会場の扉を開け、入室した瞬間、何処かへと転移させられてしまった。


「よく来たな。お前にはこれからこのダンジョンを攻略してもらう。説明は以上だ。何か質問はあるか?」

「ダンジョンごとぶっ壊すのはありですか?」

「出来るものならな」


 よし、ぶっ壊そう。


「メテオ」


 超巨大隕石を落として地下に広がっているであろうダンジョンをこの地域ごと潰す事に決めた。


「お……おいおいおいおい!? こんなの聞いてないぞ!?」

「危ないから少し下がりましょうか」

「いやいやいや、待て待て待て、ストップストップ! 壊すの無し!」

「えー、出来るものならって言ったのに、メテオキャンセル」

「消えた……助かったのか?」


 地面にへたれこむ試験官さん。ちょっと股間部が濡れてる。


「壊すのがダメなら水攻めとか良いですかね?」

「いや、もういい、合格だ」

「やった!」

「ダンジョンに入らず合格したのはお前さんが初めてだよ……」


 こうして宮廷魔術師試験に合格して、それを家族達に伝え、盛大に祝ってもらい翌日からさっそく働く事となった。



「ジュース様、こちらへ」


 コスプレでは無く、本物のメイドさんに連れられて職場へと案内された。


「失礼します。今日から宮廷魔術師として働く事になったジュースです。よろしくお願いします」

「……そうですか、お帰りください」

「えっと……?」


 むむ、どういう事だ?

 メイドさんに案内された部屋はここのはずなのに……。


「いつまでそこに居る気ですか? 早く出て行ってください」


 違ったか……?

 部屋の場所、メイドさんが間違えたのかな?

 部屋を一旦出てメイドさんに部屋が違ったみたいだと言うと、首を横に振った。


「この部屋で合っております。ジュース様の初仕事はメリア第五王女様の護衛兼魔法の指南役と仰せつかっております」

「そうなんですか……ですけど、なぜ門前払いにされたのでしょうか?」

「わがままな方ですから、何の威厳も感じられないジュース様は舐められたのでしょうね」


 ヒドイ言われようだ……。

 確かに威厳なんてこれっぽっちも持ち合わせてなど無いけど、このメイドさん口が悪いな。

 ナチュラル毒舌にちょっとゾクゾクしたのは内緒。


「私はそろそろ別の仕事場へ行きますので後はジュース様ご自身で頑張ってくださいませ。それでは」


 有無を言わせずさっさと立ち去ってしまうメイドさんであった。

 しょうがない。この先は自分のやり方でやるしかなさそうだ。


「たのもー!」

「ぴっ!? な、何よ! 突然入って来ないで!」

「メリアちゃん、魔法の勉強のお時間でちゅよ?」

「……私を王女と分かった上で侮辱しているのなら今すぐその顔をやめなさい」

「えー? さっきは違うって言ったのに? メリアちゃん第五王女様では無いんだよね?」

「衛兵! このンー!? ンー! ンー!」


 叫ぼうとしたメリアの口を魔法で閉ざした。


「調子に乗るなよ? 俺は仕事をしに来たんだ。大人しく勉強してくれれば手荒い真似はしない。分かったか?」

「ンン!」


 メリアは首を横に振って抗議の眼差しで俺を睨む。


「防音、ドアロック。もう喋れるぞ」

「ん! あなた! 何をしたか分かっているの!? 衛兵! 衛兵! この痴れ者を捕らえなさい! 衛兵!早く来なさいよ!」

「いくら叫んでも無駄だぞ。防音魔法でこの部屋の音は漏れない」


 それを聞いたメリアはドアへと駆けて行き、ドアノブをガチャガチャ回すが開かず、ドンドンとドア叩いて開けて開けてと叫び続ける。


「無駄無駄、何をしようともこの部屋からは出られない。メリアちゃんが出来る事は魔法の勉強だけだよ?」

「……何よ、それ……。私を誰だと思っているの? 私はこの国の第五王女メリア・ランズバード・ノアークよ! 今すぐ私を解放しなさい! これは命令よ!」

「はっ、ならば俺を誰だと思っているんだ? 俺の名はジュース・デミ・アイシル。将来ハーレム王になる男ぞ?」

「知らないわよそんなの! それにデミって一代限りの貴族名じゃない!」


 デミってそう言う意味だったのか……知らんかった。

 ま、貴族とか興味無いし、どうでもよろしい。


「自己紹介も済んだし、魔法の勉強しましょうよ?」

「嫌よ、私、勉強嫌いだもの」

「子供か! って子供だったわ……メリアちゃんいくつでちゅか?」

「14よ! その顔をやめなさい!」


 14か、反抗期だなこりゃ。


「勉強の何が嫌なんだ?」

「めんどくさいのよ。どうせ地方の国に嫁がされるんだもの、勉強なんかしたって無駄よ無駄」

「んー、そっか。それじゃ勉強してもあまり意味は無いか……」

「そうよ。分かったのなら早く解放してちょうだい」

「しょうがない。ちょっと早いけど嫁いだ時に役立つ魔法を教えよう」

「だから嫌って言っているでしょ!」

「エッチな魔法でも?」

「え、っち……え?」


 意味を理解したのか顔を赤らめて下を向いてぷるぷるしている。可愛いとこもあるじゃない。


「エッチな魔法興味あるでしょ?」

「あ、な、い……わよ……」


 めっちゃ興味ありそうな反応だ。

 14歳がエッチに興味無い訳が無いんだよなぁ。


「催淫魔法とか惚れ魔法とか知りたいよね?」

「しりた、くないわよ……!」

「ほーん、そっか、ムッツリスケベなメリアちゃんは透視魔法とか透明化魔法の方が良かったかな? 男の着替え覗いたり、男湯に入ったり、こっそりするのが良いんだよね?」

「ちがっ、そんな、こと……」


 想像したのか息が荒くなって来てる。ぐへへ。


「素直になった方が楽しい事いっぱい出来るんだよ? エッチな魔法知りたいよね?」

「え、う……し、知りたい、です……」

「よろしい」


 その後、素直に勉強する気になってくれたメリアちゃんにたくさん魔法を教えてあげた。

 途中、濡れた汚れた物が出て来たのでクリーンも一緒に教えてあげた。


「せ、先生、もっと知りたいです……」

「なんでも教えてあげるよ」


 その日、一人の少女が大人への階段を一段登ったのだった。



 翌日。


「あ、先生……今日も、その、色々教えてください……」


 顔を赤らめて股の間で手をモジモジさせるメリア第五王女様。


「今日は普通に魔法の勉強ですよ。基礎的な魔法も覚えておいて損は無いですからね」


 それを聞いて心底ガッカリしたという表情になってしまった。

 俺にも原因はあるが、本当にエッチな子だな。


「勉強が終わったら基礎魔法を応用したエッチの仕方を教えてあげますよ」

「直ぐに覚えます!」


 ぱあっと明るい表情になり、やる気十分といった具合だ。

 上げて落とす匠技。我ながら上手く行ったな。



 人はエロい事になると記憶力が上がるみたいな話を聞いた事があったが事実のようだ。

 メリアは基礎魔法をものの数分で全て覚えてしまった。


「先生早く! もう待てません!」

「ふふ、では水魔法を応用したローションという魔法を教えましょう」


 こうして今日もメリアは大人への階段を一歩一歩登っていくのだった。


 メリアちゃんがトロトロのグチョグチョになってしまったのをクリーンで綺麗にしてあげて今日の授業は終了した。



 仕事を終え、王都の方の家に帰り、夕食を食べ、風呂に入り、アマテと子作りをしている最中に視線を感じ、魔法で索敵すると、どうやらメリアが望遠透視魔法を使って俺達夫婦の営みを覗き見ているようなので、気付かなかった振りをする事にしてあげた。

 教えた事を早速実践してくれるのは教師として嬉しく思うが、魔法に長けた者に見つかったら仕返しに何をされるか分からないので明日きっちりとその辺りの事を教えてあげようと思うのだった。


 そして翌日。


「今日は魔術師同士で行う魔法の攻防戦を教えていこうと思います」

「急に難しそうな事言われても、覚えられませんよ」

「覚えないと痛い目に会うのはメリアちゃんですよ」

「私、魔術師と戦ったりしませんし、それにジュース先生が居るから大丈夫ですよね」

「そうですね。ただ、先生がいつまでもメリアちゃんの味方とは限りませんよ?」

「ど、どうしてですか?」

「人には見られたく無いものや、知られたく無いものの一つや二つあるものなのですよ? 思い当たる節が無いとは言わせません」

「あ、う……ごめんなさい!」


 一瞬たじろぎ、何とか誤魔化そうとあたふたした後、観念したのか素直に謝ってくれた。


「では授業を始めます。まずは透視魔法から身を守るブラックカーテンから」

「はい先生!」


 今日は真面目に授業を行った。

 メリアはめきめきと魔法が上手くなって行っている。

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