第14話 モテ期

 三年生になった。


 卒業するまであと一年。

 卒業試験に合格出来ないと留年か退学を選ばされる。

 俺は問題無く卒業出来るだろうけど。

 ちなみに弟子のルミは同じクラスに編入された。

 平民でAクラスは俺以外ではルミが初めてなんだとか。


 あれ、そう言えば俺って貴族になったんだっけか?

 ま、細かい事はいいか。


「皆さん今日から三年生です! 後輩達の規範になる様、気を抜かずに頑張りましょう!」

「「「はーい」」」


 上の圧力が無くなって完璧に調子に乗っているクラスメイト達。


「ねぇ、ジュース君は卒業したらどうするのかな?」

「アマテ達とイチャイチャする」

「そうじゃなくって、将来の夢とかどんな仕事に就きたいとかそういうのだよ」

「ハーレム王」

「え」

「ハーレム王に俺はなる!」


 高らかにそう宣言すると馬鹿を見るような目でクラスメイト達に見られた。


「ジュース君、私語は慎むように」

「先生! 俺、卒業したらハーレム王になるんだ!」

「そうですか。先生もジュース君のハーレムに入れてもらえると将来安心なのですが……って違う! 今のは聞かなかったことにしてください! 授業を始めます! って今日は授業無いじゃない! もう! 私帰ります! みなさんまた明日!」


 逃げるように帰って行ったビスト先生。

 これは脈アリか……?


「なぁ、アマテ、ビスト先生の事どう思う?」

「良い先生だよね。……って、もしかしてハーレムに入れる気?」

「それも良いかも?」

「ダメ! もう四人もお嫁さん居るんだよ? これ以上増えたらジュース君とイチャイチャする時間が無くなっちゃうよ……」

「うーん、分かった。アマテが嫌ならやめる」

「嫌って訳じゃ無いんだけど……あーん、もう! ニーナさんみたいにはなれないよ!」


 アマテがウンウン唸って考え込んでいるので後ろから抱きしめて良し良しと頭を撫でてあげる。


「アマテ、好きだ。愛してる」

「あぅ……私もジュース君好き……んちゅ、あむ」


 アマテに求められてしまったのでブラインドの魔法で俺達の周りを球状に囲い、神聖な学び舎で致す事に決めた。

 周りにも見せつけてやりたい欲が湧き出てしまったのでちょっとだけ薄くブラインドを透けさせる。


 アマテとイチャラブし始めてしばらくすると周りからクチュクチュと音がし始めた。


 リンドは最初こそ怒っていたが、俺達のイチャラブは止められそうに無いと諦めて、さっさと帰って行ったので教室に残っているのはモノ好きなスケベ貴族達と弟子のルミである。

 というかリンド以外のクラスメイト全員が残っているようだ。

 それと噂を聞きつけた他所のクラスからも何人か覗き見ているな。


「マジか、本当にやってるぞ」

「うわぁ、すげぇ……」

「俺、もう無理。ここでするわ」

「あ、じゃあ、俺も」

「うっ……最高だ……」

「お前、流石に早過ぎだろ……」


「アマテさんあんなにエッチでしたのね……」

「あんなに激しく……ん」

「私も……もう……」

「はぁ……はぁ……こんな、ダメですのに……あぁ、あんなことをして……」


「師匠……! 師匠……! あ、う、師匠……!」


 教室中から聞こえる声と音が俺とアマテを更なる高みへと上り詰めて行くのだった。


 それから気が済むまで何度も求め合い、事が終わると教室中が獣臭くなっていたので清掃魔法クリーンと消臭魔法デオドライズで綺麗にしてから転移でアマテと帰った。


 あの後、カップルがたくさん生まれたらしい。



「ジュース君、アマテさん、ちょっと来なさい」


 ビスト先生に呼び出された。

 あの件なのは言うまでも無いだろう。


「先生ね、するなとは言わないわ。でもね、時と場所は選んで欲しいの。一応この学園は貴族の出会いの場でもあるのだけどね。カップルがたくさん出来て国としてはこの先、安泰よ? でもね。先生悲しいな……」

「ごめんなさい。次からは気を付けてします」

「学園内ではしないで欲しいな……ぐすん……」


 反省文をアマテと一緒に書いている途中でムラムラしてしまったので先生の目の前でしてやった。

 反省はしない、当て付けだから。


「ずるい! 私も混ぜなさい! 開けて! 開けてよ! 私もジュース君とさせてよ! お願い! お願いします!」


 年齢イコール彼氏無しなビスト先生は長年の男ひでりで、俺達の情事を見せ付けられてタガが外れてしまったのか、恥やプライドをかなぐり捨てて、邪魔されないように俺が張ったシールドをガンガン叩いて懇願し始めてしまった。


「アマテ」

「ん……いいよ。先生も一緒に……」


 こうしてビスト先生も俺のハーレムに加わったのであった。


 ニーナにボコボコにされた。

 エスとリリーにも。

 すげぇ痛かった。


「ビストと言います! この度はジュース君との婚姻を認めてくださり誠にありがとうございます!」

「ごめんなさいね。バカな息子で」

「先生もこれから苦労するわね……」

「ジュース、俺はお前が羨ま痛でででで、ジェシーやめてくれ! 俺が悪かった!」


 ジミーパパのうっかり発言に怒ってジェシーママが思いっきりほっぺたを抓りあげた。

 俺のうっかり発言はジミーパパの遺伝かもしれない。


「私とも結婚してくれれば良いのに……」


 箱入りお姫様の義妹、アリアがぶつくさ言っているが一般常識を覚えるまではこちらから何かするつもりは無い。

 俺が常識を語るのもどうかと思うが俺の場合はあえて破ってるところがあるからね。


「皆様これから長い付き合いになると思いますが、どうぞよろしくお願い致します!」


 結婚式は学園を卒業した後にする予定になった。


 ビスト先生のご両親にも挨拶しに行き、最初は驚いていたもののすぐに受け入れて喜んでくれた。

 なんでも、ビスト先生は俺の話ばかりしていたようで、俺がどういう人間かある程度知っていたのだとか。

 そんな話を聞かされ、めちゃくちゃ嬉しくなってしまい、リビドーが抑えきれなくなり、ご両親の目の前でビスト先生に抱きついてしまった。


 ほっぺをバチーンッ! と思い切り叩かれちゃったよ。

 失敗、失敗。



「師匠! わたしが勝ったら結婚してください!」


 ビスト先生と婚約した事を弟子のルミに話したら、突然プロポーズされてしまった。

 モテ期か? モテ期到来なのか?

 でも、俺に勝ったらとか無理ゲーじゃね?

 こちとらチート魔法使いぞ?


「来世でも無理な話しだな」

「そんな……」

「俺の膝に土を付けられたら考えてやる」

「うぅぅ……ニーナ姉さーん! 師匠がいじめるー!」

「なっ!?」


 恐ろしく速い蹴りが俺の尻を襲った。


「グボォハッ!」


 弧を描くように蹴り上げられ、地面に倒れ伏して悶絶。

 俺でなきゃ尻が割れてたね。


「ルミちゃん大丈夫?」

「大丈夫です! ニーナ姉さんのおかげで助かりました!」

「そう、なら良かったわ。こいつが何かしたらすぐに呼んでね!」

「はい!」


 ニーナに手を振って元の場所へ戻って行くのを確認してから弟子は邪悪な笑みを浮かべた。


「くふふ、師匠、膝に土が付きましたよ?」

「……弟子よ、お前の実力で勝負するのだ」

「何言ってるんですか、他人の手を借りられる事も実力の内だと師匠が言ってた事じゃないですか?」


 そんな事言ったっけ?

 だがしかし、これではニーナが強いのであって弟子の力とは言えんのではないか?


「ノーカンと言う事で仕切り直しを」

「師匠が屈するまで何度でもニーナ姉さんを呼びますよ?」

「ぐぬぬぬ」


 恐ろしい弟子に育ってしまった。

 どこで育て方を間違えた……?



 結局俺の根負けでルミとも結婚する事になった。

 可愛い弟子の望みだし、俺も内心嬉しく思ってる。


 ルミのご両親とは弟子を預かる者として、すでに面識があったのでそれほど驚かれたりはしなかった。

 それどころか早く孫の顔がみたいとせがまれる始末でこっちがタジタジだったわ。


「師匠、だーい好き!」

「あはは……」


 だがルミには誤算があった。

 俺と結婚すると言う事はニーナの妹になると言う事である。


「ニーナ姉さん? 冗談、ですよね?」

「あら、知らなかったの? 私の兄弟姉妹愛は無限大よ?」

「あ、ああ……! 助けて、師匠! ししょー!!!」


 因果応報である。

 まだまだ弟子の修行は果てしなく続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る