第13話 弟子
あっと言う間に半年が経ち、俺は今、学園の期末テストを受けていた。
筆記はともかく実技は難無くクリアしたがな。
「やっぱりジュース君って凄いよね」
「ん、まあな! アマテの夫だしな!」
「もう、ジュース君ったら!」
周りの視線など気にせずイチャイチャラブラブ。
「ところでさ、俺ってこの学園に通ってる意味ってある?」
突拍子も無い事を突然言われてキョトンとするアマテ。
「うーん、勉学については意味が無いと思うよ。ジュース君以上に魔法に詳しい人なんて居ないし。でも、ジュース君がこの学園を辞めちゃったら私と学園デート出来なくなるよ?」
ほほう、その考えは盲点だったな。
「なるほど、じゃあ、卒業するまでアマテと一緒に通うよ」
「えへへ」
「君達、仲睦まじいのは良い事だが、もう少し周りの目を気にしたまえよ」
リンドが何か言ってるが気にしない。
「リンド君こそ、外ではカザさんとしょっちゅうイチャイチャしてるよね」
「ぐっ、それはだな……」
何も言い返せず席に戻って行ったリンド。哀れな。
「はーい、みんな席に戻って、今日はこれで終わりです。このクラスには居ないと思うけど、赤点だった子は後日補習授業を受けて貰うからね? それではみなさんまた明日!」
さて、帰ったら、何しようかな?
「今日も奴隷解放しに行くの?」
「流石に多過ぎると村長に泣かれちゃったからしばらくはしないつもり」
「じゃあ、今日は二人っきりで、デ」
「あの! ジュースさんですよね!?」
突然声を掛けられ振り返ってみるとアホ毛がチャームポイントのちんまりした少女がぷるぷると震えていた。
「はい、ジュースとは俺の事ですけど、どなた様で?」
「わたしの名前はルミと言います!」
「ルミさんね。こんな子クラスに居たっけ?」
「居ないよ? ルミさんってどこのクラス?」
「Cクラスです! あの! 突然ですみません! わたしをジュースさんの弟子にして頂けないでしょうか!?」
「良いよ?」
「やっぱり良いですよね……ごめんなさい。わたしみたいな落ちこぼれは……ってあれ? 良いんですか!?」
「良いですよ?」
「あ、あ、あ、ありがとうございます!!! 精一杯頑張りますので! よろしくお願いします!」
何か知らんが弟子が出来た。
「弟子は良いけど俺、人に教えたりとか、そういう経験全く無いよ? それでも大丈夫?」
「大丈夫です!」
「そうか」
何が大丈夫かまるで分からんが、やる気だけはありそうだな。気に入ったぜ。
「じゃあ、基礎から始めてみるかな。あ、アマテはどうする?」
「帰るよ。邪魔しちゃ悪いし……」
なんか怒ってる?
弟子に嫉妬でもしたのか?
「アマテ、こっち向いて」
「何?」
チュー。
「ん!?」
突然のキスで目を見開くアマテ。
嫉妬してるアマテも可愛くて愛おしい。好き。
「わあ!?」
「目の前に人が居るのにジュース君ったら……うへへ」
「アマテ、帰ったら続きしよう」
「うん!」
「うわあ! うわあ!」
弟子となったルミがあたふたしてるが気にしない。
転移でアマテを家に送ってイチャラブしてから弟子のルミの元へ戻って修行を開始した。
「魔法の基礎はイメージ力、まずは明るい光をイメージしてライトの魔法を唱えてみて!」
「分かりました師匠! ムムムム、ライト!」
うーん? 何も起きないぞ?
「ちゃんとイメージしてる? 明るい光だよ? 太陽を想像したりしてみて」
「はい、師匠! ムムムム、ライト!」
やっぱり何も起きない……。
別の魔法はどうだろう?
「えーっと、じゃあ、水のイメージをしてウォーターの魔法を唱えてみて」
「はい、師匠! ムムムム、ウォーター!」
ダメか……。水滴すら出て来ない。
その後も色々試したが、結論から言うと彼女に魔法の才能は無かった。
「君、才能無いね」
「うぅ……」
無いものはしょうがないので新しく作ってあげれば良かろうなのだ!
「ブレインジャック」
「ァ……ァ……」
凝り固まった脳内をクチュクチュっといじってイメージ力アップ。
「よし。もう一回、使いたい魔法をイメージして発動してみて」
「……ムムム、ライト!」
蛍の光みたいな小さな明かりが灯った。
「ででで出来ました!!! すごい! すごい!」
「俺の弟子になったのだ。当然だな」
ドヤァァァ。
「ありがとうございます! 師匠に弟子入りして本当に良かったです! 一生ついて行きます! 師匠!」
「おうよ! 安心してついて来な!」
「はい! 師匠!」
可愛い弟子だ。大事に育てよう。
後日、噂を聞きつけた人間が何人も俺に弟子入りしたいと殺到して来た。
ルミ以外に今のところ教える気は無かったのでルミを連れて実家にドロンッした。
「ここが師匠のご実家ですか!」
「あら、また新しい娘を連れて来たのかしら?」
ニーナは鬼の形相でニコニコしている。
「いや、弟子だから、その怖い笑顔やめて……」
事情を説明すればちゃんと分かってくれる良妻賢母唯我独尊のニーナだった。
ただ知っている四文字熟語並べただけだから実在の人物とは一切何の関係もございません。
「私はニーナ、そこにいる頭のネジが100本ぐらい外れた常識無しの姉兼妻よ。……ん? それだと私も常識無しに聞こえるわね……。まぁ、いいわ」
「お姉さん? 奥さん? え、師匠結婚してたんですか!? アマテさんとはお遊びだったんですか!?」
何か盛大に勘違いしているようだ。
「アマテとも結婚してるし、他にも二人、結婚してるぞ」
「はい? え、それって……ハーレム?」
「そうなのよ。この子、私というものがありながら次から次へと可愛い娘を連れて来て、本当に困っちゃうわ」
「ハーレム王に俺はなる!」
顔面グーパンチはやめて!
魔法の修行は裏庭でする事にした。
うちに裏庭なんて無かったので整地魔法でさっき作ったばかりだが。
「師匠は凄すぎです。わたしが弟子で良いのか不安になります」
「良いんです! 不出来な子ほどやり甲斐があるんです!」
「師匠……!」
感動に打ち震えている弟子だが、ここからはスパルタで教育して行こう。
「さて、では魔法の修行だが、今日からはビシバシ厳しく教育して行くのでその辺ヨロシク!」
「おっす! よろしくお願いしまっす!」
スコップに魔力を込めて岩盤を掘らせたり、魔力で空中に文字を書かせたり、目では追えない速さのネズミを追わせたり、魔法でしか防げない爆発するシャボン玉を出したりと、前世で大好きだった狩人漫画のネトゲ編の修行を参考にしました。
「師匠! わたしを殺す気ですか!?」
「死んでも生き返すから安心して死ね!」
「そんな~!」
三週間後。
「死にやがれ師匠!」
「ふん! まだまだ甘いぞ!」
魔法戦を繰り広げられるまでに成長した弟子がそこには居た。
口が悪くなっちゃったのはしょうがない。
「ふぅ、師匠。わたし結構強くなれましたよね」
「俺の弟子だからな」
「師匠に弟子入り出来て本当に良かったです! これからも一生師匠について行きます! おっす!」
可愛い弟子だ。これからも大事にして行こう。
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