第3話 実姉と結婚やら盗賊退治やら着せ替え人形などなど

 月日は流れ、俺が15歳、成人となった年。


「お父さん、お母さん、ジュースと結婚させてください!」


 18歳になったニーナ姉さんはド変態だと常日頃から思っていたが、どうやら俺にガチ恋していた事が今、発覚したのである。


「そう……ニーナなら安心ね!」

「そうか、幸せにしてあげろよ!」

「ありがとう! パパ! ママ!」


「俺の意思は無視ですかー……」


 この世界で親族との結婚は珍しくも何とも無く、友人達の何人かにも両親が実の兄妹という家庭を見て聞いて知っては居たけどいざ自分が、となると元の世界の常識とか倫理観が邪魔してちょっと引いてしまう……。

 いや、ニーナ姉さんがどこの馬の骨とも分からん野郎とくっ付くとか想像するだけでも吐き気がしてくるし、誰にも触れさせる気も無かったので、もう覚悟決めるしかないか。


「姉さん、俺、姉さんと結婚しても良いけどハーレムが作りたいんだ! ブヘッ!?」


 顔面グーパンチ効くぅ! チョー痛い。


 ふと、頭の中に浮かんでしまった「ハーレム」という言葉をついうっかり口に出してしまったのがいけなかったな。


「……良いわよ、ただし私の認めた人だけだから、良 い わ ね?」

「ひゃい……」


 絶対に反対されると思ったハーレムがあっさりと許可されてしまった。

 こっちの世界でも王族貴族以外のハーレムは珍しい事なので内心ビックリしている。

 「私の認めた人」って所で殆どダメなのだろうけど、ニーナ姉さんのお眼鏡に適う子が居ればハーレムも夢じゃない、のか? どうだろうか?


 こうして実姉と、村総出のド派手な結婚式を挙げ、その初夜。


「キスして……」

「う、うん」


 ニーナ姉さんに優しくキスをする。

 姉弟でキスは一方的にしょっちゅうされていたのだが男女関係のキスはこれが初めてである。

 この村の結婚式では誓いのキスやら指輪の交換などの文化は無かった。少し寂しい。

 この村に指輪を売ってくれる店も商人も居た試しが無いのでプレゼントのしようも無かったが。

 指輪を自作するには流石に敷居が高いしな。


 キスをし終わると姉さんは泣いていた。


「お姉ちゃんと結婚してくれて本当にありがとう。大好き……」

「うん。俺もニーナ姉さんの事、大好きだよ」


 その後はあまり言わないでおこう。

 とりあえず相性はバッチリだった。

 というか長年の想いが実って爆発したのか意識を失いかけるレベルで絞り尽くされた。


 そんな幸せな日々が半年程続いたが、ある日、王都から高等魔法学園に入学しないかと特使が来て、どこから噂を聞きつけのやら、王様直々の推薦らしく、更なる魔法を覚えるのも良いかと思って了承、もちろん新婚ホヤホヤなのでニーナも一緒に王都で暮らすという条件付けで。


 王都まで転移で行っても良いが村から出た事は無かったので王都まで観光旅行するのも良いかと特使の馬車に乗せてもらうことにした。


「それじゃ、行ってくるよ」

「ニーナもジュースも、気を付けて行ってらっしゃい! それと、お土産楽しみにしてるわね!」

「観光に行くわけじゃないけど、良い物があったら買っとくよ」


 両親と村の人達と、お別れを済ませて村にドーム状のシールドを張り、モンスターや盗賊に襲われないようにしてから王都へ向けて出発した。



「ウップッ……馬車ってこんなに揺れるのか……」


 思っていたよりも数十倍揺れが酷すぎたので馬車を少し浮かせて酔い止め魔法で吐き気を抑え、ニーナの膝に寝転がった。快適快適。

 特使さんが何か言いたげな様子だったが無視無視。


 隣村に着く頃には日が暮れていたので今日はここで一泊するみたいだ。

 村の様子は大して代わり映えのない田舎村で観光気分にはまだなれないな。


 ニーナと宿でイチャラブして次の日。

 馬車に乗り込もうとしたところ、一人の少年が近寄って来て、街まで連れて行って欲しいと土下座で頼まれてしまった。

 なんでも母親が病気を患って薬を買いに行きたいとの事。

 村では爺さん婆さんの腰痛やら、ヤンチャ坊主の擦り傷を治すぐらいにしか役に立たなかった回復魔法がやっと真価を発揮すると、ウッキウキでその少年の家へと案内させて母親の病状診断。

 熱と咳と鼻詰まり。ただの風邪だった。

 パパッと回復魔法のヒールで回復させると神を崇めるが如く感謝感激雨霰。

 ちょっと鬱陶しいのでさっさと馬車に乗り込み次の街へと向かった。


 その道中、盗賊に襲われそうになっている馬車を索敵魔法で見つけたので「ちょっと助けてくる」と特使さんらに簡単に説明してシュババッっと転移で移動。


「ヒャッハー! 命が惜しかったら有り金、全部置いてきな!」

「ヒュー! 女が居るぜ! 気持ち良くさせてやるから股を開きな!」

「逃げようなんて考えんじゃねーぞ? ぶっ殺すからな? ん? このガキどこから」


「フッ……」


 カッコよく意味有りげに小さく息を吐いて決めポーズを取ってから、この盗賊共をぶっ殺す。

 のは俺の精神的にアレなので麻痺魔法パラライズでぶっ転がす事にした。


「ギヒッ!?」

「ぐえっ!」

「ギャン!?」

「オゴゴ!?」

「ギエー!」


 俺のオリジナル魔法、魔力の糸で編んだ魔紐を発動し、魔力操作でチャチャッと縛り上げてミッションコンプリート!


「ありがとうございます! ありがとうございます! なんと御礼をして良いやら」

「ありがとうございます! 貴方は命の恩人です! どうか御礼をさせてください!」


 うむ、人に感謝されるのは凄く気分が良い。

 自分が偽善者なのは十分理解してるし、前世で誓った「来世があるなら好き勝手に生きよう」を叶えるために俺はこれからも好き勝手に人を助けたり、助けなかったりする。


「いえいえ、感謝だけで十分です。道中お気を付けて進んで下さいね! でわ!」


 捕まえた盗賊達と転移で最寄りの街に行き、衛兵に引き渡して賞金を貰い、特使の馬車へ戻るとニーナにポカポカと頭を叩かれてしまった。アウチッ!


「もう! 急に居なくなるから心配したじゃない!」

「ごめんごめん、でも無事に済んだし結果オーライだよね?」


 ニーナは呆れた様子でため息をついている。

 心配するだけ損だぞ。とかは言ったりしないのである。藪蛇はしない主義。殴られたくないしね。


 街に着いたのは夜になってからなのでイチャラブせずに宿ですぐに就寝。

 明日は一日、街の観光をする事にした。

 特使さん達も休憩しなよと説得したので問題無し。


 そして翌日。


「うわぁー綺麗! あの服屋さんに行ってみましょう!」


 女性の買物は無駄に長い事を前世の記憶で知っていたので金貨2枚をニーナに渡して自分は別の場所へ転移して姉の着せ替えごっこから逃げたのである。

 後で怒られるだろうけど、髪飾りとかお土産に買って行けば大丈夫だろ。たぶん。


 ちなみに金貨1枚が10万円ぐらいの価値だったと思う。100万円だった可能性もあるが多い分には困りはしないだろう。


 という事でまずは魔道具屋へ。


「……いらっしゃーい」


 ボサボサ頭の若い男性の店員さんが気の抜けた挨拶で出迎えてくれた。

 やる気無さそうだがこの店、大丈夫か?

 ま、ここは適当に冷やかして見るだけにしよう。

 どうせ王都の方が品揃えも良いだろうしね。


 天球儀、謎の腕、藁人形、ボードゲーム、箒、皿……リサイクルショップかよ。

 ただ見ててもよく分からないので範囲鑑定で掘り出し物を探す。


「お、見っけ!」


 錆びでボロボロの指輪、銅貨10枚。

 鑑定によると金運アップの指輪と出ているので掘り出し物である。


「これください」

「ん、銅貨10枚丁度、ありがとよ」


 ククク、こんな安値で売っちまって真実に気付いた時にはもう手遅れだぜ?

 後で返せと言われても絶対に返さないもんね。


 店から出てすぐに指輪を修理魔法リストアで修理して小指にはめてみる。


「ふむ、結構いい感じの指輪だったんだな」


 金色が主体で白色の枝模様が描かれた指輪である。

 金のなる木という事だろうか?


 金運アップ効果がどの程度なのか調べる為に武器屋へレッツラゴー!


「っしゃーせー!」


 武器屋へ入ると元気の良い若ハゲの男性店員さんが出迎えてくれた。

 他には何も言うまい。


「おぉ……」


 ファンタジーゲームに出て来そうな武器の数々が商品棚に飾られている。

 王都の方がもっと良い品揃えだと思うがここも中々いい感じだ。

 ざっと流し見して、カッコいい剣や槍などを手に持ったり、素振りしてみたりしてから範囲鑑定で掘り出し物探し。


「ドワーフナイフ……」


 範囲鑑定で引っかかったのはどう見ても果物ナイフで、銀貨1枚の安売り品である。

 特殊な効果とか何も無いが切れ味は凄く良いみたいなのでとりあえず買っとくか。


「ありゃりゃっしたー!」


 買ったドワーフナイフをインベントリに入れて次はどこへ行こうか考えていると路地裏から女性の嫌がるような声が聞こえて来たのでそちらに向かった。


「イヤッ! 離して!」

「このアマ! 大人しくしやがれ!」

「テメーがアニキの財布を盗んだのはオイラがちゃーんとこの目で見てたんだ! さっさと返しやがれってんだ!」

「知らない! 私、盗んでなんか無い!」


 ふむ、あの女性はスリか何かなのか?

 それともゴロツキにイチャモンを付けられているだけ?

 所持品検査魔法で調べてみると、確かにこの女性には不釣り合いなゴツゴツした財布を所持している事が分かった。


「あいや、待たれい! そこのお嬢さん! 悪い事は言わねえ。さっさと財布を返してやんな!」


 歌舞伎っぽく割って入ってみた。

 両手を広げて頭をぐるんぐるんと回す。


「あん、誰だ坊主」

「アニキ、多分助太刀って奴ですよ」

「わ、私、本当に盗んでなんか、ひゃっ!?」


 魔力操作で魔紐を操り、女性を縛り上げて、ズボンのポケットから財布を抜き取る。


「お嬢さん、これはあなたの財布かな?」


 抜き取ったサイフを女性の顔にぺちぺちと当てて確かめさせる。

 ぜってー違うもんな。


「あ、いや、あははは……ごめなさい! 許してください! 何でもします! 許してください!」


 落ちるの早かったな。

 縛り上げられた状態じゃ、しょうがないか。

 魔力で編んでいる紐なので物理的に切る事も出来ないし、完全に詰みだ。


「このアマ! やっぱり盗人じゃねーか!」

「だから言ったでやんしょー! オイラの目は誤魔化せねーでやんす!」


 財布をチンピラさんに返すと酒を奢ると言われ感謝された。

 良い気分だ。


 スリ女を衛兵に引き渡すと言って酒の誘いは断り転移で詰所に移動。

 目を白黒させて驚いているスリ女を引き渡すと賞金が手に入った。

 もう金運アップ効果が出てきているみたいだが常時装備しておくと、こういうイベントが度々起こりそうなので指輪はインベントリにしまっておく事にした。

 カジノとかに行った時にでも装備してみるかな。


 そろそろニーナの買物も終わった頃だろうとアクセサリーショップでニーナに似合いそうな髪飾りを買って転移。


「あ、ジュースやっと戻ってきた! じゃ、次はこの子の服を見繕って頂戴」

「はい! 喜んで!」


 ぐああ、まだ終わってなかったかー!

 そのまま女性店員に強引に引きずられ、着せ替え人形が如く、次はこれ、次はこれ、と差し出される服を着ては脱ぎ、来ては脱ぎ、を延々と繰り返させられて心が死んだ。

 ニーナの買物は終わっていたので、その分は時間が掛からずに済んだようで、それだけが不幸中の幸いか。

 結局、全部いいねとニーナが言うので着た服、全部買わされちまったぜ。はははっ……。

 はぁ……。


 宿へ戻る途中ニーナに髪飾りをプレゼントすると凄く喜ばれた。

 腕を組まれ、おっぱいをぐいぐいと押し付けられて、そのままイチャイチャしながら宿へと戻り、激しい夜を共に過ごしましたとさ。

 めでたし、めでたし。


 お金、またどこかで稼がないとな……。

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