第2話 目覚めると、そこは異世界でした

「オギャアッ! オギャアッ! オギャアッ!」


 うるさっ!? って自分の声か。

 それに視界がボヤけてよく見えないぞ? どうなってんだ?


「はぁ……はぁ……こんにちは、私の赤ちゃん」

「ジェシー、よく頑張ったな! ジミーパパでちゅよー!」

「ニーナも! ニーナも! ニーナお姉ちゃんでちゅよー! バブバブ〜!」

「ジェシーママ、でちゅよー、ふぅ……ちょっと、休むわね……」

「ママ大丈夫?」

「ええ、ちょっとだけ、寝たらすぐ良くなるから、ね」

「ジェシー、すまん……」

「良いのよ。私達が望んだ事なんだから……」

「ママ……」

「ニーナ、ジュースのことお願いね?」

「うん!」

「あなた、ニーナとジュースの事、守ってあげてね……」

「あぁ、あぁ! 立派に……立派に育ててみせるとも!」

「ふふふ、お願い、ね……」


 どうやら俺は赤ん坊に転生……生まれ変わったようだな。

 あの性別不明の子供はガチの神様だったってことか?

 と、言うことは、ここは異世界なのか?


「ママ? 寝ちゃったの?」

「……ジェシー……」


 あ、あれ? お母さんひょっとして死んじゃうんじゃ?

 せっかく転生したのに生まれたばかりで母親に死なれるとか困るよ!

 前世で出来なかった親孝行とか出来なくなるじゃないか!

 生きろ! ママ生きて! 全力で生きて!


「……スゥ……スゥ……」

「ママ寝てるね!」

「あ、あぁ! 寝てる! ママは寝てるぞ! おお! 神よ! 感謝致します!」

「パパうるさい!」

「ゴメンゴメン」


 なんだ、やっぱり疲れて眠っただけか……思わせぶりな。


「だうだう!」


 やっぱり喋れないか……しばらくはしゃーなしやな。



 赤ちゃん時代はベッドで寝てるか、ママの背中で寝てるか、とにかく眠くてしょうがなかった。

 排泄も我慢する事が出来ずに催したらすぐに垂れ流し、お尻が痒くなるのが辛かった。

 自力で何かするって事が出来ないので、日がな一日寝続けるだけの生活だったわ。


 2歳になって自力で歩き回れるようになり、これで自由に動き回れるぞと外に飛び出したらパパに捕獲され、部屋に柵を付けられてしまった。

 外に出る時は常に両親のどちらかと一緒でなくてはならず、うちの畑と家を往復するだけの生活だった。


 ジェシーママは金髪ロングな美人なお姉さんという見た目で、乳離れ出来るまでおっぱいを吸うのが毎回恥ずかしかった。

 ムスコもちょっと反応してたかもしれない……恥ずかしい。

 どうやら今世の俺はおっぱい魔人のようだな。


 地味パパは地味である。以上。終わり。


 ニーナお姉ちゃんはママに似てとっても美少女である。

 そしてエッチでもある。

 両親が居ない時を見計らって、事あるごとに俺の身体中、特に俺の朕を揉んでくるので困ったものだ。

 六歳児の性欲ってこんなに高いものなのか? ここが異世界だからか?


 と、そんな感じで家族紹介終わり。


 3歳になった。

 とりあえず今は魔法の勉強中である。

 家族が居る前で練習していると「天才だわ!」とか「将来は宮廷魔術師になるのか!?」とか「お姉ちゃんにも本を貸しなさい!」とか鬱陶しいので一人でひっそりとやっている。


 スライムでも分かる魔法の本という子供向けの教本をパパに頼んで買ってもらい、読みながら魔法の詠唱。

 無詠唱でも出来るみたいだが、詠唱した方がカッコいいので詠唱する。


「クリーン」


 魔力があれば誰にでも使える基本の生活魔法、清掃魔法で物置の掃除をしてみると、さすがに魔法だけの事はある。埃や汚れが一発で綺麗に無くなり物置はピカピカになった。


「うむ、めっちゃ便利だ」


 次は薄暗い物置を明るくし、本が読みやすい環境にしようと思う。


「ライト」


 うぉ、まぶし!?


 これも魔力があれば誰にでも使える基礎中の基礎、自分を中心とした周辺を照らす光魔法だが、ちょっと明るすぎだ。

 威力を弱めて物置を照らす。


「次は、っと……」


 ペラペラとページを捲りながら安全そうな魔法を片っ端から詠唱して出来るもの、出来ないものを検証していく。

 今のところ出来ない魔法は無さそうだが。


「やっぱり攻撃魔法とか回復魔法とか使いたいよなぁ……」


 転移とかインベントリとか生活に役立ちそうな魔法は大体前世のアニメやゲームの知識を利用して覚えたので、次はモンスターなんかと実戦してみたかったが家族に心配を掛けたくないので成人する15歳までは我慢するつもりである。

 幼い時に(今も幼いが)動き回りすぎて、両親に心配を掛けてしまったせいか、ちょっと過保護気味なんだよなぁ。


「みーつけたー!」


 常時発動している索敵魔法でお姉ちゃんが来るのは分かってはいたが、転移で逃げると後でうるさいのでそのまま捕まってあげた。


「今、勉強中なんだけどっ! って!? もうっ! すぐに股間を触るのやめてってば!」

「ジュースはわたしの弟なんだから良いの!」


 意味が分からん。

 大人になったら今まで魔法で撮っておいたセクハラ映像の数々を見せて悶え苦しめさせてやるからな!

 覚悟しとけよ、姉ちゃん!


「今日は親子ごっこをしまーす! はい! ママのおっぱいでちゅよー。いっぱい飲んで大きくなりまちょうねぇー」


 上着を捲り上げて、ちっぱいを吸わせようと迫ってくるバカ姉。


「えー、お姉ちゃん、おっぱいなんか無いじゃん、痛っ!」


 頭を叩かれ、自分の胸を吸わせようと無理やり俺の顔に押し付け、両腕でヘッドロックを決められた。


「おっぱいでちゅよー! さっさと飲みまちょうね?」

「ば、ばぶー……」


 本当、覚えてろよ……!



 そんなこんなで月日は流れ流れて、俺は10歳になった。

 平和でのどかな田舎村である。

 特に何かある訳でもないが最近姉の様子がちょっとおかしい。

 俺の事をジーっとただ無言で見つめてくるのである。

 気味が悪いので読心術魔法を使ってみた。


(エッチしたいエッチしたいエッチしたいジュースとエッチしたい!)


 読心術なんて使わなけりゃ良かったぜ。ちくしょう……。


 そんなド変態な姉の心情を無視して、なるべく一人っきりにならないように近所の友達の家で寝泊まりしながら逃げ隠れする日々の中、事件が起こった。いや、起きる前に潰したけど。


「敵襲! 敵襲! ゴブリンの群れだ!」


 索敵魔法は姉専属になりかけていたので察知するのが遅れて見張りが騒ぐまでゴブリンが来る事に気付けなかった。

 平和ボケとはこの事か。


 村の周りを取り囲むようにゴブリンの集団が迫って来ている。


 村の人達は大慌ての中、俺は冷静に索敵魔法の応用、視覚的にも分かりやすくした索敵マップを目の前の空中に展開し、マップ上に浮かぶ大量の赤い点目掛けてホーミングレーザーを撃ち放ち一瞬にして殲滅させてやった。


 ドロップ品をいちいち拾いに行くのは面倒くさいので自動的に回収してくれる転移魔法とインベントリ魔法の応用「勝手に回収君」を発動し、大量に雪崩れ込んで来るアイテム一覧を見て一人ほくそ笑むのであった。


「グヘヘへッ!」


 まぁ、そんな事をすれば誰がやったかなんて一目瞭然、魔法の天才と村ではすっかり評判になっていた俺がやったのだと速攻でバレてドロップ品は没収、村の共有財産として家や畑などの修繕費に充てられるようだ。

 もちろんゴブリンに壊された物など何一つ無いので経年劣化や新規に作る家や畑などに使われる。


 未成年に大金を持たすなという親の方針なのでしょうがない……しょうがないったらしょうがない……つらたにえん……。


 ちなみに大量のゴブリンの死体は分解魔法「肥料にな~れ」で畑の肥料にした。

 その年の畑は豊作となり、でっぷりと実った野菜や果物が食卓に並んだ。

 これ、ゴブリンの死体で育てられた野菜や果物と考えると、ちょっと食欲が無くなるが味は良かった。

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